ソムリエ・ワインエキスパート試験に合格された皆さん、おめでとうございます。今回は、ソムリエ・ワインエキスパート資格を取得した後に、ぜひやってほしい5つのことをご紹介します。
長い受験勉強を終え、「しばらくテキストは開きたくない!」と思っている方もいるかもしれません。振り返れば、暗記の連続だったのではないでしょうか。
気候、地形、法律、歴史、ブドウ品種。地図を何度も眺め、聞き慣れない地名を覚え、二次試験が近づけばグラスの中のワインと真剣勝負。「この香りは何?」「この品種は何?」と、正解を探しながら試飲を続けていたことでしょう。
「合格」というパスポートを手に入れた今、むしろ、ここからが面白いところです。試験勉強で身につけた基礎知識があるからこそ、以前なら何となく飲んでいた一杯から、さまざまなことが見えるようになっています。試験が終わった今からは、もう少し自由にワインと付き合ってみませんか。
【目次】
1. 試験を忘れて、純粋にワインを楽しんでみる
2. 教本で覚えた産地を実際に訪ねてみる
3. 覚えた知識を「人に伝えて」みる
4. 「自分の好き」を一つ、深掘りしてみる
5. ワインを一緒に楽しむ仲間をつくる
1. 試験を忘れて、純粋にワインを楽しんでみる
まずやってほしいのは、意外にも「勉強しないこと」です。受験中は、ワインを飲むことそのものが勉強になっていたはずです。ワインを飲むたびに「酸は?」「樽はある?ない?」。二次試験直前ともなれば、ワインを飲んでいても、つい頭の中で解答を作ってしまいます。もちろん、それも大切なトレーニングです。
でも、試験が終わったら、一度「正解を探す飲み方」から離れてみませんか。「このワイン、好きだな」。初心に戻って、そんなシンプルな感覚でいいのだと思います。香りが好きなのか、果実味が好きなのか。それとも、一緒に食べた料理との相性が良かったのか。試験では、ワインを客観的に分析することをたくさん練習してきました。合格後は其処に、自分自身の「好き」という主観を加えてみてください。それが、自分なりのワインの世界をつくる第一歩になります。
2. 教本で覚えた産地を実際に訪ねてみる
試験勉強中、何度も地図を眺めたことでしょう。ブルゴーニュの畑、ボルドーを流れる川。その中から一つでもいいので、機会があれば実際に訪ねてみてください。現地へ行くと、教本の中にあった知識が突然、立体的になります。「本当に急斜面に畑があるんだ」「思っていたより海が近い」など。文字で覚えていたことと、目の前の風景がつながる瞬間があります。そして一度訪れた産地は、忘れにくくなります。
もちろん、海外でなくても、日本でも山梨や長野をはじめ、魅力的なワイン産地がたくさんあります。ワイナリーを訪ねたり、生産者セミナーに参加したりするだけでも、得られるものは少なくありません。試験中に「覚えなければならない地名」だった場所を、少しずつ「自分が知っている場所」に変えてみてください。
3. 覚えた知識を「人に伝えて」みる
ワインをあまり知らない人に説明してみることも、新しい発見があります。たとえば知り合いから、こんなことを聞かれたらどう答えるでしょうか。「シャブリってブドウの名前?」「シャンパンとスパークリングワインの違いは何?」 選択式の試験問題ならすぐに答えられる。でも、いざ人に説明しようとすると、意外と言葉が出てこないことがあります。実は、「知っていること」と「人に分かりやすく伝えられること」は別物です。
専門用語を使えば説明できることを、ワインを知らない人にも伝わる言葉に置き換えてみる。これは、とても良いトレーニングになります。そして、人に説明しようとすると、自分自身の理解が曖昧だったところにも気づきます。
たとえば、J.S.A.ワインエキスパートを取得した方なら、日本ソムリエ協会が主催する「J.S.A.ワイン検定」の認定講師を目指すという道もあります。ワイン検定は、ワインに興味を持ち始めた方が、楽しみながら基礎知識を身につけるための検定です。認定講師になれば、今度は自分がワインの楽しさを誰かに伝える立場になります。
ここで大切なのは、難しい知識を披露することではありません。「なるほど、そういうことだったんだ」「ワインって面白い!」初めてワインを学ぶ人に、そう思ってもらえるように伝えることです。自分が受験勉強で苦労して身につけた知識を、今度は誰かがワインを好きになるために使う。これも、資格の生かし方だと思います。
そして、人に教えるためには、自分自身も勉強し直すことになります。「知っているつもりだったけれど、ここはうまく説明できない」そんなことに気づき、もう一度調べてみる。その積み重ねによって、試験のために覚えた知識が、少しずつ「自分の言葉で語れる知識」へと変わっていきます。
4. 「自分の好き」を一つ、深掘りしてみる
ソムリエ・ワインエキスパート試験の勉強は、とにかく守備範囲が広いのが特徴です。
フランス、イタリアはもちろん、ウルグアイ、スロバキアなど日本への輸入が少ない国まで。加えて、ワインだけではなく、日本酒や焼酎、チーズなどまで学びます。試験に合格するためには、興味の有無にかかわらず幅広く勉強しなければなりませんでした。でも、合格後は違います。好きなことに「偏って」いいのです。
シャンパーニュが好きなら、シャンパーニュばかり飲んでみる。日本ワインが気になるなら、ワイナリーを巡ってみる。あるいは産地ではなく、「料理とのペアリングを知りたい」「テイスティングをもっと極めたい」という方向でもいいでしょう。
興味が深まれば、専門書を読む、生産者のセミナーに参加する、スクールで特化した講座を受けるのも良いでしょう。実際、アカデミー・デュ・ヴァンでは、「研究科」という特定の国や分野を深堀りするコースがたくさん用意されています。試験のためではなく、好奇心から始まる勉強には、これまでとは違った楽しさがあるはずです。
5. ワインを一緒に楽しむ仲間をつくる
最後は、知識でも資格でもありません。「仲間」です。受験講座で一緒に勉強した仲間がいるなら、試験が終わった後もぜひつながっていてください。
例えば、テーマを決めてワイン会をするのも楽しいでしょう。「それぞれ好きなピノ・ノワールを一本持ってこよう」「イタリアワインだけを飲む会を開こう」…資格取得後はワインの選び方の幅も広がりそうです。
さらに、仲間がいることで、生産者イベントへ出かけたり、ワイナリーを訪ねたり、新しいワインを開けたりするきっかけも増えていきます。受験勉強を通して得られるものは、「合格」というパスポートだけではありません。同じ目標に向かって勉強した仲間もまた、大切な財産です。アカデミー・デュ・ヴァンでは定期的にパーティーや遠足が催されています。仲間と声を掛け合って参加すると楽しいでしょう。
資格取得は「ゴール」ではなく、自由にワインを楽しむための入口
ソムリエ・ワインエキスパート試験に合格したからといって、すぐに次の資格を目指す必要はありません。少しくらいテキストから離れても大丈夫です。上記の5つのことを楽しんでいるうちに、試験のために覚えた知識が、少しずつ自分自身の経験と結びついていきます。
受験期間中は、「正解」を求めてワインと向き合う時間が多かったかもしれません。でも、これからは違います。どんなワインが好きなのか。どんなふうに楽しみたいのか。そして、次は何を知りたいのか。答えは自分で決めていいのです。認定証とブドウのバッヂを手にした瞬間に、受験勉強は終わります。でも、そこから始まるワインの世界は、試験勉強よりも自由で広いはずです。次は「試験に出るワイン」ではなく、「自分が飲みたいワイン」を選んでみませんか。
執筆者:アカデミー・デュ・ヴァン編集部
1972年にパリで誕生したアカデミー・デュ・ヴァンは、日本で最も歴史あるワインスクールです。ワイン・日本酒・チーズなど、お酒と食の学びを通じて、ワイン初心者の方だけでなく第一線で活躍するプロフェッショナルの方々からも支持されています。スクール運営をはじめ、テイスティングバーやワインショップ、イベントなど、学びと体験をつなぐ多彩なサービスを展開しています。
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