あの人のワイン人生vol.24 〜 藤岡清高さん「スタートアップ支援のプロが語る、ワインと経営の深い繋がり」

「スタートアップ経営とワインの共通点は多いんですよ」とは、起業家支援の第一線で活躍される、株式会社スタートアップクラス代表取締役CEOの藤岡清高さん。多忙な経営者でありながら、2021年にアカデミー・デュ・ヴァンに通いはじめ、翌年JSA認定ワインエキスパート資格を取得されました。
ビジネスの最前線で活躍する藤岡さんがいかにしてワインに魅了され、学びを通じて人生を豊かにしていったのか。スタートアップ経営とワインに共通する哲学まで、たっぷりと語っていただきました。

本記事は、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。


【目次】
1. ナパ・バレーで出会った「最初の一本」
2. 成功者ほどコミュニケーションを大事にする
3. アカデミー・デュ・ヴァンでの出会い
4. 仲間とともにエキスパート資格へ挑戦
5. スタートアップ経営とワインの共通点
6. シャトー・ラトゥールから感じた経営者の迫力
7. 会話が弾む「語れるワイン」の魔法
8. 勝負ワインと、心の拠り所
9. 人と人を繋ぐ「スタートアップワイン会」をメジャーに


1. ナパ・バレーで出会った「最初の一本」

私がワインに本格的に魅了されたきっかけはいくつあります。2011年に独立して、スタートアップ支援の会社を立ち上げてから、2014年6月にサンフランシスコ・ベイエリアの南部にあるシリコンバレーへ出張した際のこと。せっかくだからと、少し足を伸ばしてナパ・バレーのワイナリーツアーに参加し、その風景にすっかり魅了されたのです。美しいワイナリーを眺めながら、現地で飲んだ「オーパス・ワン」が、当時ワインのことを全く知らなかった私にも、感動的においしく感じました。そのとき「いつかまたここに来て飲む!」と固く決意したのです。今でも、私の記憶に残る最初の一本は、間違いなくこの時に現地で飲んだオーパス・ワンです。(ちなみに現在、弊社では上場したら社員旅行で「シリコンバレーとナパ・バレーのツアーに行く」と宣言しています )。

シリコンバレーFacebookの本社前にて

シリコンバレーFacebookの本社前にて

2. 成功者ほどコミュニケーションを大事にする

その後、興味がさらに深まる出来事がありました。某金融機関のプライベートバンカーの方と仲良くなり、「お客さんである富裕層の成功者はどんな趣味を持っているんですか?」と尋ねてみたのです。すると「ワインとゴルフ」という答えが返ってきたのです。

理由を聞くと、「成功者ほど人との繋がりやコミュニケーションを大事にする。ワインやゴルフを通じて人との繋がりを拡げ、コミュニケーションを大事にするから成功しているんだよ。金持ちだからワインやゴルフを趣味にしているわけではないんだ。」と教えてくれました。この話を聞いて、すでにゴルフをしていた私は、ワインの世界にも惹かれていくようになったのです。

3. アカデミー・デュ・ヴァンでの出会い

実際にワインを飲み始めるようになったのは2021年です。コロナ禍で外食制限があり、レストランで飲みづらくなったお客様や、知り合いのスタートアップ経営者の方々に弊社のスペースを提供して食事会をするようになりました。すると、上場企業の経営者の方など、ワインに詳しい方々がおいしいワインを持ってきてくださるようになったのです。成功している人ほど教養としてワイン知識を持ち合わせているということもこの時知りました。「藤岡さんもワインを勉強したらいいよ」とアドバイスをいただき、ワインへの興味が高まっていきました。

最初は「ワインスクールと言うとハイソサエティの人たちだけが集っているんじゃないか」「自分はついていけるかな」と心配でした。しかし、申し込んだアカデミー・デュ・ヴァンのStep-Ⅰという講座では、講師の話が面白いだけでなく、普段なら出会うことのないような多様な業界の人たちと交流できて刺激的でした。一番印象に残っているのは、広尾の有名イタリアンのシェフがクラスメイトにいたことです。クラスメイト8人でその店におしゃれをして出かけ、ワイン談義をしながら食事をしたのが良い思い出になりました。クラスメイトだからと色々とサービスもしていただき、「あぁ、自分はワインスクールに来たんだな」という雰囲気を楽しみました。もうこの頃には、すっかりワインの魅力にはまっていました。

Step-Ⅰのクラスメイトのイタリアレストランへ

Step-Ⅰのクラスメイトのイタリアンレストランへ

Step-1のクラス会

Step-1のクラス会

4. 仲間とともにエキスパート資格へ挑戦

クラスで知り合った人たちはワインエキスパートやソムリエを目指す方が多く、「一緒に受けようよ」と誘われたことがきっかけで資格試験を意識し始めました。SStep-Ⅰを受講した当初は、ワインエキスパートなんて自分には縁のない遠い世界だと思っていたのです。しかし、楽しい授業を受け、ワイン仲間が増えていくにつれ、資格の取得が人生を豊かにする良い機会になるのでは、と考えるようになりました。

受験クラスでは、勉強のペースがゆっくりのクラスメイトがいて、一緒に勉強したことが思い出に残っています。授業の前に、そのクラスメイトと近くのカフェに行って一緒に問題を解きました。どこでつまずいているのか、上手くいかないときにどうしたらいいのか、ゆっくり、そして細かく、ときには学習計画も一緒に考えて勉強法をサポートしました。周囲からは「クラスメイトのお手伝いまでしてすごいですね」と言われますが、九州ルーツの人情派というDNAゆえの「人が好き、世話好き」な性格からか、普段でも困っている人がいると助けたくなってしまうのです(笑)。

カフェで勉強したクラスメイトと

カフェで勉強したクラスメイトと

5. スタートアップ経営とワインの共通点

良いワインをつくることと、素晴らしい企業を育てることには共通点があると思います。一つ目は「トップが人を巻き込めるビジョンを持っているか」ということです。ワインの場合、「どんなワインをつくりたいか」という思いやこだわり(世界観)が仲間を集め、納得できるワインを追求し続けるチームを生み出します。そして消費者は、味だけでなく、その背景にあるストーリーにも惹きつけられて集まってくるのです。

例えば、山梨を訪れてメルシャンの醸造家である安蔵さんからお話を伺ったときのことです。“日本を世界の銘醸地に”というビジョンを持ち、高温多雨という厳しい環境を言い訳にせず、適合する品種探しや栽培の工夫に熱心に取り組む姿、そしてそれに周囲が共感して協力者を呼び込み、素晴らしいワインが出来上がっていく過程を目の当たりにし、スタートアップとの強い共通項を感じました。スタートアップも全く同じで、置かれている環境を言い訳にせず「どんな会社にしたいのか」という明確なビジョンに仲間が集まり、成功するまでやり続けられるチームになるのです。

シャトー・メルシャン 安蔵さん

シャトー・メルシャン 安蔵さん

Step-Ⅱのクラスメイトと山梨へのワイナリー見学。大善寺も訪問

Step-Ⅱのクラスメイトと山梨へのワイナリー見学。大善寺も訪問

二つ目は「成熟」です。ワインは時間とともに熟成していきますが、スタートアップの世界でも「時間をかけずに簡単に出来たサービスは簡単になくなってしまう。一方で時間をかけて作り上げたサービスは簡単にはなくならない」と言われています。マサチューセッツ工科大学がアメリカのスタートアップを分析した有名な研究でも、50歳の起業家が成功を収める確率は30歳に比べて1.8倍も高くなることがわかっています。一番成功確率が高いのは45歳での起業と言われています。成熟して根っこがしっかりした経営者は、困難にぶつかっても簡単に負けずに成長し続けます。一方で根っこが十分に育っていない若い経営者は一時的に成功しても困難にぶつかり挫折してしまうことが少なくありません。ワインも同じで、「時間」がホンモノを創っていくし、ホンモノだけが「時間」の洗礼を乗り越えて生き残るのです 。

6. シャトー・ラトゥールから感じた経営者の迫力

私のキャリアの中で、ワインから最もインスピレーションを受けたのは、メドック5大シャトーの一つ「シャトー・ラトゥール」を飲む機会があったときです。グラスから立ち上がる香りや深い味わいには、気候や天候の苦労を乗り越えてこそ醸し出される偉大さがありました。それはまさに、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた百戦錬磨の経営者が放つ「ホンモノ感」そのものだったのです。

成功した起業家がまとう特有の迫力。物静かで謙虚でありながらも自信に満ち、周囲を優しく包み込むようなそのオーラを、私はラトゥールからも同じように感じました。

7. 会話が弾む「語れるワイン」の魔法

起業家や投資家の方々との会食において、ワインは非常に重要な役割を果たしてくれます。少しとっつきにくい印象の方でも、ワインがあることでスッと心がオープンになり、相互理解が深まって良い関係を築くことができるのです。そのため、私はワイン会などに参加する際、数万円もするような有名な高級ワインではなく、あえて「ストーリーを語れるワイン」を持参するようにしています。

例えば、ニュージーランドのワイナリー「アタ・ランギ」のピノ・ノワール。フランスからの帰国客がこっそり持ち込んだブルゴーニュの「ロマネ・コンティ」の挿し木(枝を切ったもの)を、税関職員のマルコム・エイベルが没収して、その後、アタ・ランギの創設者であるクライヴ・ペイトンがその枝を譲り受けてワインをつくった、というエピソードをお話しすると、「まるでロマネ・コンティを飲んでいるみたいだ!」と同席した方々がとても喜んでくださったのです。

決して飛び抜けて高いワインでなくても、その背景を知っているだけでコミュニケーションは大きく弾みます。「藤岡と一緒に飲むと楽しいな」と思っていただけることが、私にとって何よりの喜びです。私にとってワインは、単なる飲み物ではなく、人と人とを深くつないでくれるかけがえのない魔法のツールだと実感しています。

8. 勝負ワインと、心の拠り所

私には勝負の切り札にしているワインがあります。イタリアで「ワインの王にして、王のワイン」と言われる「バローロ」です 。大事な商談や社員採用の会食でサーブすると、相手の方が感動して話がうまく進むことが多く、切り札になっています。初めて飲む方はネッビオーロのパンチが効いた味わいに驚き、目を丸くします。威厳がありどっしりとした風格のワインを味わうと、気持ちが高ぶるせいか、場が盛り上がるのです。今のところ「バローロ」を飲んでもらった商談はほぼ100%成功です。

一方で、私の心の支えや最高の癒やしとなっているのは、山梨の甲州ワインです 。私は中学から山梨に引っ越し、高校は甲府で過ごしました 。もちろん当時はワインを飲むことはありませんでしたが、ブドウ畑を見て過ごしてきたこともあり、山梨というだけで共感します。特に山梨のあの寒暖差があるテロワールを体で知っているので、その地域から生まれるワインには強い思い入れがあり、国内ワインであればまず甲州ワインをセレクトします 。特に乾杯では「甲州スパークリング(マンズワイン 酵母の泡)」をよく持ち込みます 。淡い黄金色できめ細かい泡、すっきりクリーミーな口当たりで、お寿司や天ぷらなど日本食によく合う素晴らしいワインです 。

9. 人と人を繋ぐ「スタートアップワイン会」をメジャーに

今後挑戦していきたいのは、「スタートアップワイン会」といって、スタートアップで働く人や、それにかかわる人のワイン会をよりメジャーにしていくことです。

多様な価値観の人がいるスタートアップ界隈だからこそ、お互いが交じり合い、相互理解を深めていくためにワインをもっと知ってほしいと思っています。コロナ禍以降、特に若い人は飲み会に行く機会が減り、コミュニケーションもメールやSNSが増えたように思います。しかし、人とのディープな関係構築こそが人生を豊かにしていくと私は信じています。だからこそ、ワインなのです。もちろん、そのときのワインは1本数万円する高すぎるワインでなくて、「アタ・ランギ」や「バローロ」のようにストーリーが語れるワインです。

スタートアップ界隈でのワイン会をメジャーにしていくことが、私のこれからの使命かもしれません 。


藤岡さんにとってワインとは、単なる飲み物ではなく、人と人を繋ぐかけがえのないツールであることが伺えます。経営とワインを重ね合わせる独自の哲学は、多くのビジネスパーソンにとって大きなヒントになるはずです。「スタートアップワイン会」という新たな挑戦が、今後どんな出会いを生み出していくのか注目です。

プロフィール

藤岡清高(ふじおかきよたか)
スタクラHP

  • 星座:さそり座
  • 血液型:A型
  • ワイン以外の趣味:写真、FC東京(プロサッカーチーム)サポーター、子供向けサッカーコーチしています。
  • 好きな食べ物:寿司(まぐろ)、ほうとう(甲府)、鳥刺し(宮崎)、イカ刺し(佐賀県呼子)、なごや飯全般(特に味噌煮込みうどん)
  • もし生まれ変わったら何になりたい?:坂本龍馬(日本を今一度、せんたくいたし申候、と言える男になりたい)
  • 酔っぱらったらどうなる?:夢を語りだす。

人生を変えたワイン:2014年にナパ・バレーで飲んだオーパス・ワン。

豊かな人生を、ワインとともに

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世界的に高名なワイン評論家スティーヴン・スパリュアはパリで1972年にワインスクールを立ち上げました。そのスタイルを受け継ぎ、1987年、日本初のワインスクールとしてアカデミー・デュ・ヴァンが開校しました。

シーズンごとに開講されるワインの講座数は150以上。初心者からプロフェッショナルまで、ワインや酒、食文化の好奇心を満たす多彩な講座をご用意しています。

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