イタリア高級ワインのバローロ(Barolo)は「ワインの王様」

イタリア高級ワインのバローロ(Barolo)は「ワインの王様」

イタリアワインと言えば、ピエモンテ州とトスカーナ州。

そのピエモンテ州で造られる、イタリアワインの格付け最高位D.O.C.G.に認定されているのがバローロです。

長期熟成型の赤ワイン、バローロ。

長い時間をかけて熟成し、葉巻やチョコレートのようなずっしりとした香り、ラズベリーやクランベリーなどベリー系の優しい香りを放ち、重めで力強くスパイシーな味わいです。

イタリアワインを楽しむのなら避けては通れない銘柄の1つです。


【目次】

バローロワイン(Barolo Wine)とはどんなワイン?

バローロワインに使われるブドウ品種と味わいとは?

バローロワインの歴史とバローロ・ボーイズ

バローロワインの5大産地とは?

バローロワインの選び方



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では、上記の目次に沿ってバローロワインについて説明します。

バローロワイン(Barolo Wine)とはどんなワイン?

バローロワイン(Barolo Wine)とはどんなワイン?

バローロワインとは、イタリア北西部にあるピエモンテ州のバローロ村周辺の地域で造られる高級な赤ワインのことです。

ピエモンテ州はイタリアの二大銘醸地として数えられ、トスカーナ州と共に注目を集める生産地となっています。

そんなピエモンテ州で造られるバローロワインは、ワイン業界では「ワインの王様」あるいは「王様のワイン」と呼ばれています。

イタリアにはワインを格付けして4段階に分けていますが、そのうちの最高位D.O.C.G.に認定されている銘柄です(ワインの格付け、D.O.C.G.について詳しくは「イタリアワインの格付けD.O.D.G.とは」をご参照ください)。

【全76銘柄を徹底紹介!】イタリアワインの格付けD.O.C.G.とは?

1966年に4段階中上から2番目に位置するD.O.C.の認定を受け、1981年にはD.O.C.G.に昇格しました。

イタリアの原産地呼称ワイン(D.O.C.G.あるいはD.O.C.の認定ワイン)では、樽や瓶で行われる熟成の最低期間がワイン法で決められています。

その最低期間を超え、一定の期間熟成させたワインには、ワインラベルに「リゼルヴァ(Riserva)」という表示を加えることができます。

バローロワインを造る際の最低熟成期間は38ヶ月で、リゼルヴァ表記を入れるには62ヶ月の熟成が必要です。

また、アルコール度数は13%以上になるように造られます。

バローロワインに使われるブドウ品種と味わいとは?

ネッビオーロ(Nebbiolo)

ネッビオーロ(Nebbiolo)

バローロに使われるのは、ネッビオーロ(Nebbiolo)と呼ばれるブドウ品種。

ほとんどのバローロは他の品種を混ぜることなく、ネッビオーロを100%使って造られています。

Nebbiaとはイタリア語で「」を表し、ネッビオーロは霧の多い時季に収穫されることなどから、それにちなんでその名前がついたと考えられています(諸説あります)。

早くに発芽するブドウ品種でありながら他のブドウよりも収穫時期が遅く、霧が発生する11月頃の収穫になってしまいます。

そのため、厳しい寒さでブドウがダメになってしまうこともありますし、熟成するまでに時間がかかります。

こうした扱いの難しい品種ではありますが、ネッビオーロにはタンニンが十分に含まれており、長期熟成に耐えうる骨格の強く濃厚な赤ワインを生む出すことのできるブドウ品種です。

ネッビオーロから造られるバローロワインは、葉巻やチョコレート、なめし革のようなずっしりとした香りラズベリーやクランベリーなどベリー系の優しい香りを放ち、タンニンが多くずっしりと重め力強くスパイシーな味わいです。

ただし、バローロと一口に言っても、多種多様なことには注意しなくてはなりません。

バローロが造られる村については後ほど触れますが、西側のラ・モッラ村やバローロ村のほうは土が、青い泥灰土の「トルトニアーノ」と砂が混ざっており、マグネシウムやマンガン、石灰質が豊富な土壌となっています。

そこで栽培されるネッビオーロを使って造られるワインは華やかでエレガントな香りとなりやすいです。

一方、東側のセッラルンガ・ダルバ村近くは、泥灰土の「エレヴィツィアーノ」で、赤茶色く鉄分が多い土壌となっています。

東側で造られるバローロワインは重厚で長期熟成に向き、スパイシーな味わいになりやすい傾向があります。

また、小規模な生産者を含めると1,000以上ものワイナリーがあります。

それぞれに信念・想いがあり、伝統的な手法を使って醸造するワイナリーもあれば、モダンスタイルといって伝統的なものと比較して短期熟成のワインを造る手法を使うワイナリーもあります。


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バローロワインの歴史とバローロ・ボーイズ

バローロワインは、19世紀半ばまでは甘口のワインでした。

というのも晩熟のネッビオーロをアルコール発酵するのは11月。

この頃はすでに気温が下がってしまっており、発酵が途中で停止してしまっていたからです。

フランスの技術者を呼んでワイン造りに当たらせた結果、1960年頃には辛口ワインの生産が可能となります。

その手法は、長期マセレーション長期の樽熟成

30~60日間にも渡る長いマセレーションを行って抽出したワインをスラヴォニアン・オークの大樽で4~8年間も熟成させ、タンニンを柔らかくしてから瓶詰めするというものです。
これが現在で言う伝統的なバローロの醸造方法です。

長期のマセレーションと樽熟成で酸化が進むことでフレッシュな果実味は失われ、腐葉土やキノコ、なめし革といった熟成に由来する複雑な風味が中心になります。

ただ、この醸造方法が完璧というわけではありません。

1960年代前半にレナート・ラッティアルド・コンテルノといった当時の進歩的生産者たちはフランスを視察して、ブルゴーニュ地方やボルドー地方のワイン造りと比べて自分たちが遥かに劣っていることを知ります。

帰国した後ラッティやコンテルノはフランスの技術を参考にしながら酸化臭や揮発酸といった不快な風味を改善するために、マセレーション期間や樽熟成期間を以前よりも短くするなど工夫を凝らしていきます。

もう1つ、この時期に起きたバローロにおける大きな変化としては生産者元詰めワインの増加が挙げられます。

1960年代までは、一部の大手ネゴシアンや協同組合がバローロワインの生産を支配している状況でした。

この地域における栽培家1人当たりの畑の平均所有面積はわずか1ヘクタール強で、ほとんどの農家は自前で醸造や瓶詰めができなかったのです。

そのため、ネゴシアンや協同組合が栽培農家からブドウやワインを買い上げ、ブレンドして販売していました。

しかし、1960年代以降は小規模生産者が自らワインを瓶詰めして販売するようになり、単一の畑名をラベルに表示されるようになってきました。

1980年代に入り、アメリカを主要な市場とする輸出商のマルク・デ・グラツィアがバローロをドラスティックに変革していきます。

彼は今あるワイナリーに取引を申し込むのではなく、質の高いブドウを栽培する農家に対してワインを造ってみないかと声をかけていくという手法を取りました。

デ・グラツィアに口説き落とされた栽培家が、生産者元詰めのワイン、単一畑名を冠したワインを造るようになり、次第に小規模の農家が独立していくようになりました。

デ・グラツィアが扱う生産者に共通するのは、従来のバローロと比べると大幅に短いマセレーション(3~15日間)と、フランスで用いられているのと同じ小樽で1.5~2年程度という短期間の熟成です。

また、第二次世界大戦後には質よりも量といった感じで増え続けてきたブドウの収穫量を減らし、化学系農薬を極力使わないようにすることでブドウの品質を向上させます。

そうしたブドウで造ったワインは凝縮して濃厚な味わいを持ち、色も濃いモダンなバローロが生まれるようになりました。

ただし、この新生バローロには賞賛の声もあれば、非難する声も上がりました。

伝統派の方にとってはバローロとして認めにくく、この地域の方には猛烈な批判にさらされることになります。

しかし、熟成期間の短くなったワインはアメリカ市場では熱狂的に受け入れられます。

こうしたモダンなバローロワインを造るデ・グラツィア・グループの第一世代の生産者たち(エリオ・アルターレパオロ・スカヴィーノルチアーノ・サンドローネドメニコ・クレリコ)が「バローロ・ボーイズ」と呼ばれるようになります。

このバローロ・ボーイズたちの造るモダンなバローロを支持する層と、伝統的なバローロを支持する層の間でせめぎ合いは長く続いていたものの、最近になって和解の方向性に向かい、今ではほとんどの生産者が中間的な醸造方法を取っています。

マセレーション期間は長すぎず短すぎずの2~3週間、熟成樽も最初の1年を小樽、次の1年間を大樽で熟成させています。

小樽のみを使う生産者でも新樽の比率は以前より減っていますし、小樽より大きい500リットル程度の樽を使うところも増えてきました。

結果として生まれたのは、若いうちから魅力的でありながら、ネッビオーロの品種個性を表し、長期熟成もするという理想的なワインです。

今ではこの理想的なワインが気軽に楽しめるようになっています。

バローロワインの5大産地とは?

バローロワインの5大産地

バローロの5大産地としては、「ラ・モッラ村」、「バローロ村」、「カスティリオーネ・ファッレット村」、「モンフォルテ・ダルバ村」、「セッラルンガ・ダルバ村」の5つの村があります。

ラ・モッラ村(La Morra)

ラ・モッラ村は5つの村の北西部に位置しており、他の4つの村よりも大きく広大な農地と数多くの生産者を有しています。

標高が高く、海から500mを超えるような場所もあり、急な斜面もあります。

このエリアの土地はマンガン・マグネシウム・石灰質といったミネラル分の豊富な土壌で、他のバローロワインと比べてフレッシュな味わいを楽しめる若飲みワインが生み出されています。

バローロ村(Barolo)

バローロ村はラ・モッラ村の南、モンフォルテ・ダルバ村の西に位置しています。

標高の高いラ・モッラ村から斜面を下って南に進むとバローロ村となります。

このバローロ村の土地はラ・モッラ村同様にトルトニアーノ土壌というミネラル分が多い土壌です。
この土壌のおかげで、東部で造られるものと比べると、香り高いワインとるのです。

バローロ村には西部のトルトニアーノ土壌東部のエルヴェツィアーノ土壌がぶつかるカンヌビ(Cannubi)があり、バランスの良いバローロワインが造られています。

カスティリオーネ・ファッレット村(Castiglione Falletto)

カスティリオーネ・ファッレット村は北東部、ラ・モッラ村の南東に位置しています。

モンフォルテ・ダルバ村の北、セッラルンガ・ダルバ村の西にあります。

この村は5つの中で最も土地が狭く、それに伴って生産量も少ないため、非常に貴重なワインです。

カスティリオーネ・ファッレット村で造られるバローロは香り高いエレガントなワインです。

モンフォルテ・ダルバ村(Monforte d’Alba)

モンフォルテ・ダルバ村は南部にあり、西はバローロ村、北はカスティリオーネ・ファッレット村、東はセッラルンガ・ダルバ村に囲まれたエリアです。

この村は鉄分の多く含まれるエルヴェツィアーノ土壌となっており、ずっしりと重たいバローロワインが造られています。

鉄分による独特な力強さも魅力の1つです。

セッラルンガ・ダルバ村(Serralunga d’Alba)

セッラルンガ・ダルバ村は5つの村の中で最も東に位置しており、モンフォルテ・ダルバ村と同じく、鉄分の多いエルヴェツィアーノ土壌です。

長期熟成向きで極めて重厚なバローロワインが造られており、なめし皮やスパイスのような香りと味わいが楽しめます。

伝統的な味わいを楽しみたいのであれば、セッラルンガ・ダルバ村のバローロワインでしょう。

バローロワインの選び方

バローロワイン

これまで読んできてお分かりのように、バローロワインは村によって味わいが異なりますし、小規模な生産者がそれぞれの信念やこだわりを持って造っていますので、正直なところ、手に取るワインによって味わいは異なってきます

これはバローロワインに限らずイタリアワイン全体にも言えることで、この数多くのワインが販売され、手に取るワインによって味わいが異なることがイタリアワインの醍醐味と言えるでしょう。

ただし、先ほどお伝えしたように産地によって傾向があります。

東部の土壌はエレヴィツィアーノといって鉄分が多く、伝統的なバローロワインに近いずっしりとした味わいのワインとなります。

その一方で西部の土壌はミネラル成分の多く含まれるトルトニアーノという土壌で、比較的フレッシュでモダンな味わいを楽しむことができる傾向にあります。

あくまで目安ではありますが、重いワインを求めるのなら東部のものを、比較的短い熟成で楽しめるワインを求めるのなら西部のものを選ぶと良いでしょう。


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まとめ

イタリアワインの名前を挙げれば、片手のうちに入ってくるバローロ。

熱心な生産者、バローロ・ボーイズたちのひたむきで情熱的な研究の末、今のような最高峰の味わいを生み出しています。

ワイン好きなら一度は試してみたいワインの1つです。

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