一杯のワインが人生を変えることがある。
そして、その学びを親子で分かち合えたなら――人生はもっと豊かになる。
アカデミー・デュ・ヴァンの教室には、さまざまなバックグラウンドを持った方々が集まります。ワインをもっと知りたい、味わいを深く感じたい、仕事に活かしたい――その動機は人それぞれ。しかし、共通しているのは「ワインを学ぶことで人生をより豊かにしたい」という思いです。その中でもひときわ目を引くのが、親子で一緒に学ぶ姿です。
お話を伺ったのは、都内でカリフォルニアワイン専門店を営む村山達郎さんと息子の絢大さん。学びのきっかけやお店のこと、そして親子で共に過ごす時間の意味についてお伺いしました。
【目次】
Q. まず、ワインの世界に入られたきっかけを教えてください。
Q. 数あるスクールのなかでもアカデミー・デュ・ヴァンを選んだのは?
Q. 試験勉強の思い出もお聞かせください。
Q. ショップを始めようと思ったのは、どんなきっかけからだったのですか?
Q. かつては、お二人の間にはワインに対するギャップがあったようですが、絢大さんがアカデミー・デュ・ヴァンに通い始めた経緯は?
Q. お二人でお店をされていると聞きましたが、どう役割分担されていますか?
Q. 接客やお客様との関係性について教えてください。
Q. 親子でワインを学んでいてよかったことがあれば教えてください。
Q. これからの展望をお聞かせください。
Q. まず、ワインの世界に入られたきっかけを教えてください。
達郎さん:息子の絢大には双子の妹がいまして、二人が7歳のときに妻を病気で亡くしました。それからは仕事に加え、掃除、洗濯、買い物、料理と、いわば人生フルコースの家事をすべて自分一人で担うことになったんです。子どもがまだ小さいので外で飲みに出ることは控えていましたが、それでも人が好き、ワインが好きという気持ちは変わらず、友人を自宅に招いては料理を作り、ワインを合わせて楽しんでいました。気づけば我が家は、ちょっとした“ホームレストラン”のようになっていたんです(笑)。
そんな日々のなかで、「もっと広く、もっと深くワインを知りたい」と思うようになったのが最初のきっかけでした。何より、妻を亡くしてしばらくは家で沈んでいましたから、前を向いて自分の好きなことに挑戦してみよう、と心を決めたんです。そこでアカデミー・デュ・ヴァンのソムリエ/ワインエキスパート試験対策講座に思い切って申し込みました。人生の再出発が、まさかワインから始まるとは、当時の自分も想像していませんでした。
Q. 数あるスクールのなかでもアカデミー・デュ・ヴァンを選んだのは?
達郎さん:やっぱり“一番有名”だったからです。自分なりに「多少はワインの土台があるから大丈夫だろう」と思い、いきなり受験クラスに申し込んだのですが…、学科の暗記量にあっさり玉砕しました(笑)。もうひとつ強く印象に残っているのは、テイスティングの授業ですね。最初は「本当にわかるようになるのかな」と半信半疑でしたが、講師の指導のもとでクラス全体の力がぐんぐん伸びていくのを実感しました。そのおかげで合格した頃には大きな自信になり、今ではワインの仕入れにも役立っています。
Q. 試験勉強の思い出もお聞かせください。
達郎さん:家事や育児に追われる毎日でしたが、クラスでは級長を任されて、それが逆に楽しかったですね。毎週授業が終わると、仲間と近くのレストランでランチをしたり、試飲の練習をしたりして、少しずつ全員で力をつけていったのが良い思い出です。その仲間たちとは今でも付き合いが続いていて、ワインがつないでくれたご縁に感謝しています。
絢大さん:父がワインエキスパートの受験勉強をしていた頃、僕はまだ小学生で、「なんか夜な夜な机に向かってるな」くらいにしか思っていませんでした。秋になって、父が友人を招いて「合格おめでとう!」とワインを開けているのを見て、そこで初めて試験に受かったことを知ったんです。子どもながらに「ワインの試験があるんだ」と思ったのを覚えています。

達郎さん。ワインエキスパート受験クラスの紫貴先生・クラスメイトと
Q. ショップを始めようと思ったのは、どんなきっかけからだったのですか?
達郎さん:その後、とあるカリフォルニアワイン専門のインポーターさんを手伝い始めたのがきっかけです。そこで飲んだワインを友人に紹介するととても喜ばれたのですが、当時はカリフォルニアワインを買えるお店が少なかった。それなら自分で始めよう、とお店を開く決心をしました。
絢大さん:実は、父がワインショップを始めたことを、しばらくの間知らなかったんです。久々に父の会社に連れて行ってもらったとき、ワインがずらっと並んでいて、「え、いつの間に?」と内心驚いていました。
達郎さん:子供のとき絢大にとってワインってどんな存在だった?
絢大さん:ワインはどこか謎めいた存在でした。“ブドウジュースのようなもの“と思ってはじめて香りを嗅いだ時、そこにブドウの気配は全くなく、アルコールの刺激が鼻を突き抜けた記憶があります。正直「え~」と思いました。
Q. かつては、お二人の間にはワインに対するギャップがあったようですが、絢大さんがアカデミー・デュ・ヴァンに通い始めた経緯は?
達郎さん:私からすすめました。親子で同じスクールに通うなんて珍しいかもしれませんが、わが家にとってはごく自然な流れでしたね。
絢大さん:アカデミー・デュ・ヴァンに入校する前は、オンラインサイトを使って独学で勉強していて、自分もソムリエ資格に挑戦しようと準備していました。そんなとき、父から「いきなり受験するより、Step-Ⅰという入門コースで基礎を作ったほうがいい」と勧められたんです。実際に受講してみると、ワインが少しずつわかるようになっていく過程がはっきり見えて、ますます好きになりました。
なによりも、仲の良いクラスメイトができたことが一番の収穫です。最近は、そのクラスメイトがわざわざ遠方からショップにワインを買いに来てくれて、本当にうれしかったですね。学びの場が、そのまま人とのつながりに広がっていくのを実感しています。

絢大さん。ワイン入門コース「Step-Ⅰ」の紫貴先生・クラスメイトと
Q. お二人でお店をされていると聞きましたが、どう役割分担されていますか?
達郎さん:私は主に接客を担当し、息子にはECを中心に任せています。正直に言うと、ECサイトの運営なんて私にはとてもついていけません(笑)。今どきのオンラインショップはAIまで駆使していて、私がやろうと思ったらゼロから勉強を始めなければならない。でも絢大はその分野が得意なので、本当に助かっています。
絢大さん:僕はLINEでの情報発信やGoogleレビューなどを活用して、集客につなげる工夫をしています。お店のPOPも、お客様が思わず手に取りたくなるようなデザインに少しずつ変えてきました。父の代からのお店を、今の時代に合うかたちにアップデートしていくのが僕の役割だと思っています。
Q. 接客やお客様との関係性について教えてください。
達郎さん:私は「どんな場面でも楽しめるワイン」を提案することを大切にしています。たとえば「上司の誕生日祝いに」「家族でのすき焼きに」といった具体的なシチュエーションに合わせておすすめするんです。そこに、学んだ知識を生かして土壌や気候の違いを織り交ぜると、お客様が「へえ、そうなんだ」と目を輝かせてくださる。選択肢が広がった瞬間の笑顔を見るのが、何より嬉しいですね。
絢大さん:父のお客様への向き合い方は、本当に勉強になります。私はまだ経験が浅いですが、父の接客を横で見ながら、少しずつ学んでいるところです。親身でフレンドリーなのに、提案は的確。そういう姿勢を、早く自分のものにしていきたいと思っています。
Q. 親子でワインを学んでいてよかったことがあれば教えてください。
達郎さん:やっぱり会話が増えたことですね。中学・高校の頃なんて、ほとんど口をきかない時期もありましたが、「このワイン、飲んでみたら」「どう感じた?」なんて自然に話せるようになったのは嬉しい変化です。今後は一緒に試飲会に出かけて、親子そろって真剣にワインを語り合うのも楽しみですね。
絢大さん:僕にとっては、わからないことをすぐ父に聞けるのが一番のメリットです。それに、ワインを学び始めてから父の接客する姿を見て、「なるほど、こうやってお客様に伝えるのか」と勉強になることが増えました。親子で同じ世界を共有できるのは、思った以上に心強いですね。

Q. これからの展望をお聞かせください。
達郎さん:お店を大きくしたいとか、派手に広げたいという気持ちはあまりありません。今いらしてくださっているお客様を大切にしながら、二人で楽しく仕事を続けていきたいですね。毎年7月4日にアメリカ大使館公邸で開かれるイベントも、少しずつ絢大に引き継いでいけたらと思っています。彼は現役で学んでいますから、ECサイトにも力を入れながら、若い世代の感覚を生かして、より多くの方にカリフォルニアワインの魅力を届けてほしいですね。
絢大さん:ワインの勉強を始める前は、正直、接客には苦手意識がありました。でも今では、自分の言葉で自信をもって語れるようになりました。同世代では、ワインは「敷居が高い」と思っている人が多いようなので、これからはInstagramやYouTubeを活用して、そういった人たちにもっとワインの魅力を広めていきたいです。
来年はソムリエ試験に本格的に挑戦しますが、その前に外国からのお客様ともスムーズに話せるよう、英語の勉強にも力を入れていこうと思っています。
親子で一緒に学び、一緒に働き、一緒にワインを分かち合う村山さん親子の姿は、学びが家族の絆を深め、人生を豊かにすることを教えてくれます。ワインの学びは、一人でも素晴らしい体験になります。しかし誰かと分かち合えば、その価値は何倍にも広がるのです。

ワイン・カリフォルニア都内唯一の実店舗のカリフォルニアワイン専門店。自信をもって品揃えしている
プロフィール
村山達郎(むらやまたつろう)
- 星座:うお座
- 血液型:A
- ワイン以外の趣味:ゴルフ、料理、楽器演奏
- 好きな食べ物:アップルパイ、寿司、焼き鳥
- もし生まれ変わったら何になりたい?: レーシングドライバー
- 酔っぱらったらどうなる?:変わらない
- 人生を変えたワイン:Miner Family ORACLE
村山絢大(むらやまけんた)
- 星座:やぎ座
- 血液型:A
- ワイン以外の趣味:筋トレ
- 好きな食べ物:豚角煮
- もし生まれ変わったら何になりたい?:人間
- 酔っぱらったらどうなる?:変わらない
- 人生を変えたワイン:Big & Smooth Zinfandel