伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.112

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~Vin avec コロナ~

伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.112

伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.112

葡萄収穫のニュースが次々と報じられています。

マスクをして、消毒用アルコールをいたるところにおいて。

10時のおやつはなし。

個別に包装した食事を配布、食堂などもオゾン滅菌している、と語るのは、「シャンパーニュの哲学者」の異名を持つマルコ・オーギュスタン。

例年は収穫のために50人ほど、雇っていたが、今年は1ヘクタール当たりの収穫量が、8000kgに抑えられた(昨年は10 200kg)ので、雇う人数も少なくて済んだ。

しかも地元のシャンパーニュやアンジュなどからやって来たフランス人しかいない!と。

思うに、外国人労働者、アルジェリアやモロッコなど北アフリカからの労働者は稼ぐこともできず、ますます貧富の差が。

金持ちは、なぜか高騰する株を操作して儲けるばかり。

政治も社会も暴力的で不寛容。

こういう状況が進行したら1930~40年代みたいで、気持ちよくないですね。

 

ただ、こうした有名ドメーヌはまだしも、弱小ドメーヌはかなりの打撃なようです。

サロンが開催されないことも、けっこうな影響になっています。

ペルナン・ベルジュレスの、3.5haの葡萄畑を持つ、あるドメーヌは、いくつかのサロン(ワイン展示会)に参加することで、新しい客層を開拓していましたが、サロンの閉鎖により40 000ユーロは減額、とくにパリで開催されるサロン・デ・ヴィニュロン・アンダパンダンの中止が痛かった。

デュッセルドルフやニューヨークのサロンの延期も。

ブルゴーニュは、ご存知のようにフランス革命以降、畑が細分化されて売却された経緯もあり、現在でも弱小ドメーヌが多くあります。

ボルドーでは1ドメーヌの持ち畑は平均17ha、フランス全体では12.3haに対し、ブルゴーニュでは7haが平均です。

借金をしながらの苦しい生活が続いているようです。

 

 葡萄畑の存続を脅かすのは、これだけではありません。

ミュスカデは、ロワール河下流ナント近辺が産地です。ナントは、フランスで「住んでみたい街」の上位に挙がるくらいで、年々居住者が増えています。

そのため都市化の影響が、葡萄畑に迫っています。

ちょうど十九世紀にパリの都市化が、「フランスのワイン」を壊滅させたように。野菜が葡萄を食い潰しています。

都市化の需要に合わせて、野菜、とくにキュウリ栽培地が拡張していき、ミュスカデ畑が浸食されています。

 

ところで、キュウリはフランス語でコンコンブル(concombre)と言います。また「海のキュウリ concombre de mer」という言葉もあります。

さて、それは何でしょうか。

文字通り、海にいる生物です。海底にいる生物です。

英語でもsea cucumbrと同じ言い回しです。形状が似ていると言えば似ています。

日本料理でも食べますが、とくに中華料理で貴重な食材です。とくに干したものが。

答えは・・・「なまこ」です。

 

それはともかく、一時は7000haあったAOPミュスカデですが、日本風に言うと近郊野菜産地として、野菜畑が葡萄畑を圧迫し、ブドウ栽培者は団結してなんとかしようとは、思っていても売り出された葡萄畑は誰も買うことが出来ない。

そためミュスカデで最も古い栽培地も消え去っていく、と地元のルノー・パパン(domaine Luneau-Papin)。

葡萄畑のなかに、小島のようにポツポツと5メートルの高さの温室が点在し、キュウリの栽培で地面は見えなくなって、すっかり景観が変わってしまった。

 

実際、葡萄畑は30年前から存続の危機にあった、しかもナントの野菜栽培は、キュウリやマーシュ(葉物野菜の一種です)、それにスズラン栽培(!)でもヨーロッパの栽培家のリーダーとなっています。

伝統的には野菜はロワール沿いに栽培されていたものが、1haに10 000ユーロを払って、土地を買収し続け、それにはブドウ栽培者は太刀打ちできない。

ブルドーザーが入り、テロワールなど、微塵のかけらもない。

それでいて、ブドウ栽培者は温室なしで、このところ続く雹や霜の災害に対処しなければならない。

農務省も利益のために、野菜栽培に交付金・・とミュスカデは、ひょっとしたら貴重品になるかもしれません。

 

最後に、少し実践的な話で、鬱々とした気分を晴らしましょう。

 

皆さんは、数あるチーズとどういうワインを合わせますか。

各人、それなりのフィロソフィーがあると思います。

フランス料理のコースを食べると、メインの後にチーズとなります。

たいていは、メイン・ディッシュが赤身の肉料理、赤ワインソースの料理なので、赤ワインを注文し、まだそれが残っている。

したがってチーズも赤ワインで、ということになります。

私の場合は、メインの間に赤ワインもすっかりなくなり、チーズには別にワインを注文することになりますが・・RVF誌のおすすめをご紹介します。

まずは、オーソドックスにカマンベール。

なんとシードルを合わせています。La Folletiere 2015 (Domaine Lesuffleur)。

ミレジメのシードルなんて日本では手に入れるのはほとんど無理ですが、いくつかシードルと合わせでみるのは、やってもいいですかね。

シャンパーニュ、Leclerc BriantのBlanc de Meunier 1er cru de Chameryもおすすめ。

同じくシャンパーニュで、かなりお高いJaquesson, Grand cru Champ Cain 2008と合わせるチーズは・・パルメザン!

パルメザンとシャンパーニュの組み合わせはなかなかいいかも。と、いっても私はのべつまくなしシャンパーニュなので。

 

アルザスのマンステールMunster。

一般にはゲヴュルツトラミネールを合わせますが、なんとビール!

アルコールが8度くらいの、たとえばMeteor Imperiale Pilsner。

普通にAlbert Mannのピノ・グリ2017でも。

 

コンテ。

18ヶ月から24ヶ月熟成のコンテには、サバニャン種のワインを合わせますが、ここではジュラのシャルドネ。

同じシャルドネでもジュラは独特です。

MontbourgeauのCuvee Montangis 2015 。あるいは、10年以上熟成のミュルソー。J

ean-Marc RoulotのTesson 2009が合う。

コンテの「ひねた」ものはヴァン・ジョーヌですかね。

 

ルブロションは、サヴォワかローヌ。サヴォワは、ChevillardのMatthieu Goury。

ローは、マルサンヌ種が合うということで、Bernard GripaのLes Pins 2016。

 

ロックフォールやフルムダンベールなどは、ソーテルヌやポートなど、オーソドックスなものを合わせていますが、南仏の白ワインMas JulienのIGPワイン2014を、あまりなじみがないですが、「中央山地」地方でつくられている羊の乳製の「ペライユ」(Perail)に合わせています。

夏バテのエネルギー回復にどうぞ。

2020.09.18


伊東道生 Michio Ito

東京農工大学工学研究院言語文化科学部門教授。名古屋生まれ。
高校時代から上方落語をはじめとする関西文化にあこがれ、大学時代は大阪で学び、後に『大阪の表現力』(パルコ出版)を出版。哲学を専門としながらも、大学では、教養科目としてドイツ語のほかフランス語の授業を行うことも。
ワインの知識を活かして『ワイナート』誌に「味は美を語れるか」を連載。美学の視点からワイン批評に切り込んでいる。

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