間違いのないワインショップ案内 Vol.1 BIRRA e VINO  MASUYO(ビッラ エ ヴィーノ マスヨウ)【東京/阿佐ヶ谷】

センスがよくて頼れるワインショップを知っていれば、家飲みの楽しみは広がり、ワインライフがグンと豊かになる。コロナ禍ながら都内近郊に新たなスタイルのワインショップが続々オープンし、ワイン愛好家たちにとって選べるワインの選択肢が増えたことは朗報だ。そんなニューオープンの中から、個性が光るワインスポットに注目。今回は、お酒のプロ中のプロの姉弟が開いた、ビールとワインのセレクトショップを紹介。

文・写真/谷 宏美


【目次】

1.商店街の老舗酒店がビール&ワインの専門店としてリスタート
2.ワインジャーナリストがセレクトする本当においしい個性派ワイン
3.伝統生産国からトレンド産地まで、さまざまなスタイルのビールにワクワク
4.ふれあいの場として、学びの場としての角打ちスペース
5.ショップDATA


1.商店街の老舗酒店がビール&ワインの専門店としてリスタート

阿佐ヶ谷駅北口方面、松山通りに面したBIRRA e VINO  MASUYO

「BIRRA e VINOビッラ エ ヴィーノ=イタリア語でビールとワイン)」という名の通り、ビールとワインに特化したセレクトショップ。大手ビール会社に勤務していた塚本涼太さんと、ベテランワインジャーナリストとして知られる塚本悦子さんという、ワインとビールのプロの姉弟がオープンしたことで、酒販業界でも大変話題になっている店だ。

阿佐ヶ谷駅北口を出て歩くこと7分ほど。豆腐や精肉、煎餅などの専門店、本屋やクリー二ング店、寿司店や焼鳥店などが点在する商店街。「ビッラ エ ヴィーノ マスヨウ」はここに軒を連ねていた「升要酒店」を全面改装した店舗。塚本さんたちの祖父母が始め、ご両親が引き継いで100年近く続けた老舗酒店を、5年ぶりに再スタートした。

通りから見えるのはワインセラーとビールのショーケース。中に入ると右手にワインのウォークインセラー、左手にビールの小瓶がびっしり並ぶケースがあり、奥へ進むと角打ちのカウンターと、ベンチシートのシッティングスペース。ウッドを基調にしたガラス張りの明るい店内、そして何やら見たこのないようなユニークなエチケットのワインやビールが並んでいるさまは、通りがかりでもぶらっと入りたくなるフレンドリーなムード。

大手ビール会社に勤務していた店主の塚本涼太さん。姉の塚本悦子さんはワイン専門誌「ワイナート」をはじめワイン関連のさまざまメディアや書籍で執筆、セミナー講師やワインのコーディネートも手がける。

店主の涼太さんはビール担当として、伝統的な生産者からニューウェーブのクラフトビールまで、国内外のさまざまなアイテムをセレクト。取材や執筆を通して世界中の産地を訪れ、数多くのワインに触れてきた悦子さんは、これまで訪ねた生産者のワインを中心に、ご自身が本当に紹介したいアイテムを厳選してセラーに並べる。いずれも百貨店やスーパーなどの従来の小売店では出会えない個性的な品揃えが特徴。

 

2.ワインジャーナリストがセレクトする本当においしい個性派ワイン

入りやすいウォークインセラー。すべてのワインはセラー内で温度管理されている。

「ビッラ エ ヴィーノ」ではあるが、アカデミー・デュ・ヴァンのサイトなのでここはワインのラインナップから紹介しよう。

ウォークインセラーにはボトルの横にこんなプレートが。
「あわ/しゅわしゅわ微発泡、素朴なおいしさ。カジュアルシーンに」
「あわ/本格派、ムース状の泡。日本・フランス・イタリア・こだわりの造り手」
「ロゼワイン/キュート、 チャーミング。品種も多彩で味わいも‼︎ 幅広い食事にぴったり」

白ワインなら、「エネルギッシュで重厚な余韻にうっとり」「体に染み入るうまみ系のかもした白(オレンジワイン)」「フレッシュでピュアで気どらぬおいしさ」「奥行き深い味わいでフィネスあり」

赤ワインも、「フレンドリーでチャーミング」「深みのある、偉大な」「エレガントでスムース」「パワフルで果実味たっぷり」

といった調子で、産地別や品種別でなくワインのタイプやスタイル、飲みたいオケージョンごと、さらに価格順に並んでいるので、造り手や原産地呼称などの知識がなくてもワインを探すことができる。ボトルネックには生産国の国旗とともに「ローヌ ¥2,200」「エミリア・ロマーニャ ¥3,190」などと生産地域とプライス、品種が書かれたわかりやすいタグがぶら下がる。

けれどここはやはり、塚本悦子さんに相談してワインを選びたい。「本当に紹介したい優良な造り手を厳選し、自分が飲みたいものを選んでいるので、自信をもっておすすめできるワインしか置いていません」。フランスやイタリア、ポルトガル、南アフリカやニューヨーク州、日本もちらほら。「エチケットで選んだわけではない」とのことだが、インパクトのあるアーティスティックなボトルがずらりと並び、それらの多くはナチュラルワインや新進の生産者。悦子さんはイタリアの土着品種に造詣が深いことで知られ、イタリア各州の聞いたことがないような品種のワインもある。

「ワイナート」の取材で訪れた奥出雲ワイナリーのシャルドネとソーヴィニヨン・ブラン。

世界各地の生産者を訪れて畑やセラーなどを綿密に取材し、現場を知るトップジャーナリストが、造り手の思いを伝えるべくセレクトしたワイン。こんなに確かな品揃えがほかにあるだろうか。

こちらは取材時のおすすめワイン。

写真左から、塚本さん流カテゴリー分けとともに紹介。

  • レ・モーレ 2020 / クアルティチェッロ(イタリア/エミリア・ロマーニャ)→体に染み入るうまみ系白(オレンジ)
  • ブリュ 077 2014 / マルク・ソワイヤール(フランス/ブルゴーニュ)→本格的なムース状泡
  • コート・デュ・ジュラ ピノ・ノワール 2008 / シャトー・ダルレイ(フランス/ジュラ)→偉大で深みのある熟成赤
  • ヴォワユール 2018 / ニーポート(ポルトガル/ドゥロ)→超レアな白&赤のブレンド
  • レブーラ 2016 / クリネッツ(スロヴェニア)→エネルギッシュで重厚な白
  • リボッラ 2009 / グラヴネル(イタリア/フリウリ)→エネルギッシュで重厚な白

※以上は取材時にあったもの、在庫は問い合わせを

 

3. 伝統生産国からトレンド産地まで、さまざまなスタイルのビールにワクワク

端から端まで7枚扉があるショーケースの中身はすべてビール。味わいのタイプはもちろん、瓶の形やラベルの形状、缶の色も実にさまざまで、なかには「これがビール⁉︎」と思うような斬新なボトルも。

店主の涼太さんが世界各地、そして日本国内から集めたビールは200アイテムを超える。アイテムによって消費期限も異なり、管理も複雑なため、これだけのビールが一様に揃うのは圧巻としかいいようがない。

こちらは長野と山梨のビール。国産とは思えないビビッドなラベルが際立つ。

生産国だけで見てもドイツやベルギー、フランス、アイルランド、英国産はイングランド、スコットランドなど各地から。米国産はクラフトビールブームの先駆けとなったポートランドのものを中心に、オレゴンやカリフォルニアなど、クラフトマンシップあふれ、遊び心にも富んだラインナップ。日本ビールも北から南まで、さまざまなスタイルのものが揃う。

迷ったら「季節のおすすめビール」のコーナーから選ぶもよし。

「ヨーロッパのクラシックなビールは安定して人気があります。クラフトビールではホップの苦味と柑橘系の香りが特徴のアメリカンIPAに続き、濁った外観とジューシーな味わいが特徴のヘイジースタイルもポピュラーになりました。また当店では、シトラスやピーチ、トロピカルフルーツなどの果実味を加えたフルーティなビールや、サワー感覚のライトなものなども好まれています」と涼太さん。ほかにも、コクのある黒ビールや酸味・塩味系などのビールにハーブやフルーツを加えて複雑味を出したビールなど、ポートフォリオは多種多様。季節の素材を入れた限定品も人気だそう。

人気のアイテムの中から、おすすめいただいたのがこちら↓

写真左から

  • フェスヴァイセ TAP-4 / シュナイダーヴァイセ〔ドイツ〕〜オクトーバーフェストでおなじみの秋限定ビール
  • バルティック ゴーゼ/ インゼル醸造所〔ドイツ〕〜塩とコリアンダーを使って乳酸菌で発酵させるゴーゼの代表格
  • シュレンケルラ ラオホ ヴァイツェン/ ヘラー=トゥルム醸造所〔ドイツ〕〜燻製麦芽を使用したラオホ
  • ヒューガルテン グランクリュ / ヒューガルテン〔ベルギー〕〜酸味・甘味のバランスがよく複雑な味わいと長い余韻を楽しめる
  • コロンバ / ピエトラ〔フランス〕〜南仏のハーブや花香るホワイトエール
  • ヴィル・プレミアム / ヴィル〔エストニア〕〜エストニアの古都の尖塔を模したボトルのピルスナー
  • パンプキンエール / ベアレン〔日本・岩手〕〜かぼちゃを使った日本のエール
  • パッション・プール / ミッケラー サンディエゴ〔アメリカ〕〜パッションフルーツをブレンドした新感覚のゴーゼ
  • ハブ・ピッグ・ウォー・ヘイジー / ホップワークス・アーバン・ブルワリー〔アメリカ〕〜フルーティでモルト感の豊かなヘイジーIPA
  • レッツプレイ / レベルビア〔アメリカ〕〜ハーバルホップとシトラスホップをブレンドしたピルスナー

※以上は取材時にあったもの、在庫は問い合わせを

 

4. ふれあいの場として、学びの場としての角打ちスペース

 

ある日の角打ちワイン。容量は50ml、100mlから選べる。

10月よりカウンターでの角打ちもスタートし、おすすめワインをグラスでいただいたり、ボトルワインやビールを店内で楽しむことができる(抜栓料が必要です)。週末には「ニューヨーク「南アフリカ」など産地や生産者などのテーマで角打ちワインを実施することも。どのようにして造られたかを聞きながら味わえるまたとないチャンスだし、運がよければ、悦子さんからワイナリー取材時の裏話も聞けるかもしれない。東向島「オーティス」の入手困難な白カビ熟成サラミ、横浜のSakura燻製工房のミックスナッツなどのアテとともにどうぞ。

「角打ちは炭鉱の町が発祥。仕事が終わり、酒屋に寄って仲間と一杯飲みながらその日の疲れを癒し、パッと帰る。風習であり文化なんですね」と北九州に赴任した経験がある涼太さんは語る。「この店も、阿佐ヶ谷のそんなコミュニティになるといいと思っているんです。お酒が好きな人がお酒を通じて集い、ふれあえるサードプレイスのような空間。ロンドンのパブやイタリアのバルのように」。

コミュニケーションスペースとして、また学びの場として、ワインやビールに関するセミナーやイベントも絶賛計画中。エデュケイターとして講師も務める悦子さんのセミナーをこのコージーな空間で受けられるのはなんとも贅沢。さらに世界各地のビールを知り尽くした涼太さんのマニアックな麦酒トークも想像するだけで楽しみだ。早期開催が待たれるところである。

星の数ほどあるワインとビール。知られていなくても、素晴らしい生産者が手がけるとびきりおいしいものはたくさんある。ここにくればこれまで知り得なかったキラリと光るワインとビールに出会えるはず。中央線沿線の方はもちろん、そうでない人も行ってみるべき!

 

5. ショップDATA

【BIRRA e VINO  MASUYO(ビッラ エ ヴィーノ マスヨウ)】

東京都杉並区阿佐谷北3-27-10
定休日/水曜、第2・第3火曜
営業時間/14:00〜22:00 、11:00〜22:00(土・日・祝)〔角打ちと有料試飲は21:30オーダーストップ〕
(感染拡大防止対策に基づく変更の可能性がありますので、ご来店時は事前にご確認ください)
https://www.masuyo01.com
InstagramとFacebookで日々おすすめアイテムや角打ちの情報を発信中。

 

谷 宏美/Hiromi Tani
ワインライター/エディター。ファッション誌の美容エディターを経てフリーランスに。ワイン専門誌やライフスタイル誌の執筆、コンテンツ制作、スタイリングやコーディネート、撮影ディレクションなど、ワインと食とビューティにまつわることを仕事にしている。パートナーは人間ひとりと猫4匹。

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