ワインのプロ7人が選ぶ「寿ぎワイン 2021」

ワインのプロ7人が選ぶ「寿ぎワイン 2021」

さまざまな思いを胸に迎えた、新しい年。けれどいつ何どきも、ワインが私たちの暮らしを豊かに彩ってくれることに変わりはありません。ワインのプロフェッショナルの皆さんが選んだ、新年を祝うのにふさわしいワインは、ズバリこれ。新年会やワイン会でのセレクトの参考にもなりそうです。「寿ぎワイン」で、明るく希望に満ちた2021年をスタートさせてみては。

文・編集/谷 宏美


7人が選んだ「寿ぎワイン」はこちら

  1. 岩瀬 大二さん/ワインナビゲーター
    ヴィーニャ・エラスリス セーニャ 2018
  2. 奥山久美子さん/アカデミー・デュ・ヴァン 副校長
    ドメーヌ・デ・コント・ラフォン モンラッシェ 2011
  3. 近藤 佑哉さん/「銀座レカン」シェフ ソムリエ
    フェルミエ ロゼ(ピノ・ノワール&ピノ・グリ)2019
  4. 藤巻 暁さん/ソムリエ
    ルイス・パト ヴィーニャ・ヴェーリャス レッド 2016
  5. 三澤 彩奈さん/グレイスワイン 栽培醸造家
    シャトー・シガラス・ラボー
  6. 薮崎 友宏さん/「薬膳中華 南青山エッセンス」オーナーシェフ
    ココ・ファーム・ワイナリー バラ色の人生 2018
  7. 吉田さおりさん/アカデミー・デュ・ヴァン講師
    パスカル・ドケ ル・メニル・シュール・オジェ・グラン・クリュ 2006

(五十音順、ワインの在庫は生産者または輸入元にお問い合わせください)


初春の慶賀を込めて皆さんが選んだのは、どのようなワインなのでしょう。セレクトの理由とともにご紹介します。

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❶岩瀬 大二さん/ワインナビゲーター

岩瀬 大二さんが選んだ「寿ぎワイン」セーニャ 2018 ヴィーニャ・エラスリス

<岩瀬 大二さんが選んだ「寿ぎワイン」>

アカデミー・デュ・ヴァンで「チリワインの新発見と再発見」というテーマでの講座を担当したことがあります。チリでの取材を通して、私自身がチリワインに対するイメージを大いに覆され、今までにない驚きも体感。これを皆さんに伝えたい。それは私がこの世界に関わっているモチベーションでもあります。

今回ご紹介するセーニャは、その思いを伝えるための数あるアイテムのうちのひとつ。チリのプレミアムワインとしてすでに評価を確実なものにしているワインですが、現地に伺い、また、当主のチャドウィックさんには何度もインタビューをさせていただき、ワインに込めた想い、にじみ出る人柄と哲学、生み出してきた物語に引き込まれています。

その最新ヴィンテージが2018。もちろん、それぞれ味わう人が求めるもの、そもそものアイテムがもつキャラクターによって好みのヴィンテージは変わってくると思いますが、今回の2018年は、チリの2016年と2017年の相反する個性、それは冷涼な年と暑い年ということなのですが、それが見事に調和。深み、集中力と緩やかな解放感、力強さを感じさせながらも親しみやすい。偉大なヴィンテージといわれますが、その重圧を味わう人には感じさせません。

静かな、でも笑顔の楽しい会話を、親しい数人だけで。自慢話も悪口もない幸せな時間に寄り添ってくれる。今の状況は不自由なこともありますが、そんなときにこのワインは至福の時間を与えてくれるように思います。元気な乾杯ができなくても大丈夫。十分に今も幸せ。私にそう思わせてくれたワインです。

岩瀬 大二/Daiji Iwase
酒旅ライターやMCとしてお酒にまつわる執筆や企画、講演など活動の場は多岐に富み、アカデミー・デュ・ヴァン講師も務める。酒類のみにフォーカスするのではなくカルチャーやライフスタイルとコネクトして紹介、その斬新な表現やプレゼンテーションに定評がある。ワイン専門誌や情報誌、WEB媒体など多くのメディアやイベントなど、幅広く活躍。フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ、シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長など、多数の顔をもつ。

 

❷奥山 久美子さん/アカデミー・デュ・ヴァン 副校長

奥山 久美子さんが選んだ「寿ぎワイン」 ワイン:モンラッシェ 2011生産者:ドメーヌ・デ・コント・ラフォン<奥山 久美子さんが選んだ「寿ぎワイン」>

「モンラッシェ初日の出を背に耀けり 里寿(奥山久美子)」
2021年が明るく楽しい年になることを祈願しつつ、お正月にモンラッシェの杯を掲げました。大切な門出を祝うワインとしてモンラッシェがふさわしいと考えるのは、ブルゴーニュ最高峰の白ワインとして揺るぎない存在感を放ち続ける、世界でもっとも壮麗なシャルドネであるから。そしてこの至高のワインのもつ力強い生命力にあやかりたい、そう思うからです。

ピュリニィ・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェの村にまたがる8ヘクタールほどの特級畑には、15生産者がそれぞれ素晴らしいワインを造っています。私はその中でも、ドメーヌ・デ・コント・ラフォンがシャサーニュ側の南向き斜面に所有する約0.3 ヘクタールの区画から生まれるモンラッシェが大好き。現当主のドミニク・ラフォンが、ピエール・モレにメタイヤージュをしていた畑を1991年に取り戻し、ビオディナミ農法を実践。以来、テロワールの表現は緻密になり、一段と複雑で卓越したミネラルとフィネスに溢れる感動的なモンラッシェとなりました。ドミニク・ラフォンの哲学と芸術性、コート・ドールの平和で穏やかな情景に思いを馳せつつ、新年を寿ぎたいものです。

奥山 久美子/Kumiko Okuyama
フランスやイタリアを頻繁に訪れる中で、ワインの素晴らしさとその背景にある文化に興味をもつ。1987年にパリの分校として開講したアカデミー・デュ・ヴァン東京校の第一期生となって以来研鑽を重ね、同校講師を経て2002年4月に副校長に就任。著書に『ブルゴーニュ コート・ドールの26村』(ワイン王国)、『極上ワイン100本』(朝日新聞出版新書)、監修に『シャンパンのシーン別楽しみ方』(朝日新聞出版)、「大人のためのワイン絵本」(原本「Vinographie」、日本文芸社)など。

 

❸近藤 佑哉さん/「銀座レカン」シェフ ソムリエ

近藤 佑哉さんが選んだ「寿ぎワイン」>ワイン:ロゼ(ピノ・ノワール&ピノ・グリ)2019生産者:フェルミエ

<近藤 佑哉さんが選んだ「寿ぎワイン」>

  • ワイン:ロゼ(ピノ・ノワール&ピノ・グリ)2019
    生産者:フェルミエ
    参考URL https://fermier.jp/?p=1880

新年を祝う食事の場に、ロゼワインはいかがでしょうか。その美しい色合いは食卓に華やかさを添え、宴を鮮やかに彩ってくれます。赤ワインと白ワインがもつ個性をいずれも兼ね備え、フードフレンドリーなところもおすすめしたい理由のひとつです。

私がセレクトしたのは、新潟ワインコーストとして知られる日本海沿岸の越前浜にあるワイナリー、フェルミエのロゼです。ピノ・ノワールとピノ・グリが織りなす豊かな果実味とフレッシュな酸味がとても魅力的で、余韻に感じる心地よい苦味が味わいを複雑に表現します。さまざまなタイプのお料理とのマリアージュを楽しめますが、中でも和食との相性は抜群です。

日本ワインの品質の向上が注目される中、フェルミエのほかにも複数のワイナリーが集まる新潟ワインコーストは話題の産地のひとつ。そこで造られたワインは、気のおけない仲間との食事会やリモート飲みにおいて、会話も弾むのではないでしょうか。

近藤 佑哉/Yuya Kondo
J.S.A.認定ソムリエ。大学卒業後、銀座レカンに入社。その後ホテル ニュー・オータニ レストラン トゥールダルジャンタ・トーキョーなどで研鑽を積み 2019年、銀座レカンにソムリエとして戻り、2020年4月より現職。
2019年ポメリーソムリエコンクール2019 優勝、 2019年第3回ボルドー&ボルドー・シュペリウール ソムリエコンクール 優勝 、2020年第9回全日本最優秀ソムリエコンクール 第3位など、コンクール入賞歴多数。若きトップソムリエとして注目されている。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン


はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。

 

❹藤巻 暁さん/ソムリエ

藤巻 暁さんが選んだ「寿ぎワイン」>ワイン:ヴィーニャ・ヴェーリャス レッド 2018造り手:ルイス・パト<藤巻 暁さんが選んだ「寿ぎワイン」>

大きな翼を広げて飛び立つ鳥がラベルにあしらわれ、見るからに縁起がよさそう。ポルトガルワイン界の革新的な造り手、ルイス・パトのワインです。「パト」はポルトガル語で鴨を意味するそうで、彼のワインの多くに、鴨が描かれているわけです(日本人としては、ハト=鳩だとなおよい気もしますが、鴨です)。

このワインは、バガ100%の赤ワイン。バガは大西洋岸の産地バイラーダの固有品種で、小粒で果皮が分厚く、酸が高く渋みも豊富で濃厚な長熟型のワインに仕上がるブドウ。そう聞くと高級メジャー品種の雰囲気を呈していますが、飲むとスッパエグ渋いものがほとんどで、昔から安酒の代名詞でした。そのバガを世に知らしめたのがルイス・パトです。全房発酵が常だったところを除梗し、口当たりよく、さらにおもしろさが感じられるように上手に仕上げたことに始まり、樹勢が強く多産になりがちなこのブドウを収量制限したり、希少な自根のバガを用いて超高級ワインを造ったり、飲みづらいといわれるバガに白を混ぜて飲みやすくし、「レベル(Rebel=反逆者)」と名づけてリリースするなど、独創的な手腕を続々と発揮。さらには、自身でフレンチオークを開発したり、SO2フリーのスパークリングワインにトライしたりと、造り手としての異端児ぶりは枚挙にいとまがないほどなのです。

ワイン造りにおいて、子供のような遊び心を失わず、周囲があっと驚くことをやってのける革命児。なかなか穏やかならぬご時世ですが、こんな型破りな造り手のワインを飲みながら新しい年を祝うのも、またオツなのではないでしょうか。

藤巻 暁/Akira Fujimaki
J.S.A.認定ソムリエ・エクセレンス、アカデミー・デュ・ヴァン講師。現在は東急百貨店本店和洋酒売場にてワインのセレクトやアドバイスを行いつつ、ワインに関するコンサルティングやセミナー講師など幅広く活動。あらゆる産地や造り手についての膨大な知識と長年にわたる現場での経験、多岐にわたるネットワークに基づく考察をもち、飲料・飲食業界やメディアでの信頼、信望も厚い。自宅のセラーには2000本を所蔵する。WSET®アドヴァンスト・サーティフィケイト。

 

❺三澤 彩奈さん/グレイスワイン 栽培醸造家

三澤 彩奈さんが選んだ「寿ぎワイン」>ワイン:シャトー・シガラス・ラボー<三澤 彩奈さんが選んだ「寿ぎワイン」>

貴腐ワインは特有の気象から生み出された風土の産物であり、ブドウ由来の深い甘味に自然の尊さを感じさせる、唯一無二のワイン。新年を寿ぐワインとして、ふさわしい1本です。

シガラス・ラボーは、ソーテルヌで第1級に格付けされたシャトーのうち、最も小さな家族経営のワイナリーです。ボルドー留学中に現オーナーのロール・コンペイロ氏と出会い、誠実なものづくりに対する考え方に大きく影響を受けました。新興国や若い世代の造り手は、時として「どのようにワインを売るか」ということや「どのように自分のワインを見せるか」ということに意識がとらわれ過ぎてしまっているように感じることがあります。シガラスの生き生きとした味わい自体にソーテルヌの新しい魅力を感じ、心を打たれましたが、同時に、ひたすら質の高いワインを造るために努力を惜しまない彼女の姿勢を尊敬してやみません。

三澤 彩奈/Ayana Misawa
中央葡萄酒4代目オーナーの長女として生まれる。ボルドー大学、ブルゴーニュにて栽培と醸造を学び、フランス栽培醸造上級技術者資格を取得。さらに南アフリカ・ステレンボッシュ大学大学院を卒業して帰国、中央葡萄酒の醸造責任者に就任。勝沼と明野の畑すべてのワイン造りを手がける。2014年「デカンタ・ワールド・ワイン・アワード」でキュヴェ三澤 明野甲州 2013が日本ワイン初の金賞を獲得、以降6年連続受賞。2019年にはブルームバーグの「2019年ワイントップ10」にグレイス ブラン・ド・ブラン 2014 が選ばれるという快挙を果たす。

 

❻薮崎 友宏さん/「薬膳中華 南青山エッセンス」オーナーシェフ

岩瀬 大二さんが選んだ「寿ぎワイン」>ワイン:バラ色の人生 2018生産者:ココ・ファーム・ワイナリー

<薮崎 友宏さんが選んだ「寿ぎワイン」>

弊社の自社農園から近く、また私が栃木県足利市の親善大使を勤めていることからもご縁の深いココ・ファーム ワイナリー。すべてのワインに自然酵母を活用し、風味豊かな味わいと香りは独特のテロワールを写し出しています。豊富なラインナップの中から、2021年がすべての人々にとって明るい年となればという気持ちを込めて、「バラ色の人生」と名づけられたロゼワインをセレクトしました。

美しいエチケットにテーブルがパッと華やぐよう。赤系果実のチャーミングなニュアンス、芳しいフローラルの中に、ときめくような甘酸っぱい口福に満たされます。アフターには落ち着きのある力強さと豊かさが訪れ、まさにバラの花に満たされたかのように幸せいっぱいの人生を思わせるワインです。

野菜の煮しめや栗きんとん、田作り、昆布巻きなどのお正月料理はもちろん、今の季節はごまだれでいただく鍋料理にも合います。棒々鶏や海老のチリソース、酢豚やカニ玉、油淋鶏に北京ダックと、中華料理にも万能。おいしくておめでたい気分になれるワインですね。

薮崎 友宏/Tomohiro Yabusaki
J.S.A認定 ソムリエ・エクセレンス、アカデミー・デュ・ヴァン講師、C.P.A認定 チーズプロフェッショナル、コマンドリー・ド・ボルドー、料理マスターズ、国際薬膳調理師など、多くの資格や肩書きをもつ、才能とバイタリティ溢れるチャイニーズシェフ。Step-1からアカデミー・デュ・ヴァンで学び、講師を務める今もなお研究科クラスに通う。幅広い観点からワインと中華料理のマリアージュを研究する毎日を送っている。
南青山エッセンス https://essence.tokyo

 

❼吉田さおりさん/アカデミー・デュ・ヴァン講師

吉田さおりが選んだ「寿ぎワイン」>ワイン:ル・メニル・シュール・オジェ・グラン・クリュ 2006生産者:パスカル・ドケ

<吉田さおりさんが選んだ「寿ぎワイン」>

ひとことでいうと「凛とした美しさのあるシャンパーニュ」。新年を迎えるにあたり、自分自身がこうありたいと願うスタイルと重なるシャンパーニュです。

高品質なシャルドネを産するル・メニル・シュール・オジェの特級畑のブドウのみを使用。石灰岩土壌から生まれるブラン・ド・ブランは優美でエレガントな佇まいを呈しています。十分な熟成期間を経て、芳醇で深みのある香りも魅力的。ドザージュに頼らず、ブドウの質がもたらす重みと、一本筋の通った酸、そしてミネラル感が余韻を持ち上げているのがわかります。大手メゾンのようなわかりやすい華やかさよりも、地に足のついた実直さを感じさせ、それがゆえにブドウ本来のよさをダイレクトに味わうことができます。

この時期に楽しむ機会の増える和食やお寿司ととても相性がよいのも、これを選定した理由のひとつ。日本料理やお寿司の味わいはとても繊細です。そうした料理と合わせたときに、決して自己主張することなく陰で支え、最後に「ああ、おいしかった」としみじみ思わせるのがこのパスカル・ドケのシャンパーニュなのです。

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吉田 さおり/Saori Yoshida
JSA認定ワインエキスパート・エクセレンス、JSA認定ソムリエ、WSET®Level 3。CPA認定チーズプロフェッショナル。Step-1からアカデミー・デュ・ヴァンで学び、ワインの素晴らしさ、奥深さに魅せられ、現在は受験対策講座ほか、多数のクラスを担当し、ワイン初心者の方から上級者まで、幅広いレベルの受講生に向けて講義を行う。JSA主催第3回ワインエキスパートコンクール優勝。日本ソムリエ協会の機関誌「Sommelier」に執筆中。
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