【永久保存版】トスカーナ:品種・おすすめワイン銘柄から歴史までを徹底解説

花の都フィレンツェにピサの斜塔、世界遺産の古都シエナと観光スポット満載のトスカーナ。一方で、ワインの銘醸地としても、北に南にどこへ行っても美味しいワインがいっぱい!これは知っておきたいという内容に絞って、ご紹介します。

しっかり読めば、代表的なブドウ品種やワインはもとより、その背景にある歴史や登場人物までも深堀して、ソムリエを超える知識をものにできる内容です。レストランのワインメニューなど恐れるに足りず、自分の好みの一本を上手く探せるようになります。

本記事は、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。


【目次】

  1. 意外に簡単 品種と産地の基礎
  2. やっぱり主流は赤ワイン
    ① キャンティとキャンティ・クラシコ そもそもなにが違うの?
    ② 王様ワイン ブルネッロとモンテプルチアーノ
    ③ サッシカイアとスーパー・タスカン
  3. 高貴なる白ワイン
    ① 聖なるワイン ヴィン・サント
    ② 白ワイン最高峰 ベルナッチャ・ディ・サンジャミアーノ
  4. 当たり年・飲んでみたい ヴィンテージ ワイン
  5. いつか遊びに行きたい ワイナリー
  6. あとがき

1. 意外に簡単 品種と産地の基礎

産地の特徴

西のリグリア海、ティレニア海沿岸は温暖な地中海性気候。内陸に行くにしたがって、大陸性気候の影響が強くなり、北アペニン山脈の影響も受けます。内陸は丘陵地帯が大半で150mから550mほどの高地でのブドウ栽培です。最近の温暖化の影響で南部のブルネッロでは600mの栽培高度の上限が解除されました。土壌は、粘土、泥灰土を帯びた砕けやすい瓦礫質のガレストロと粘土石灰質のアルベリーゼは憶えておきましょう。
一方、海岸沿いの北マレンマでは栽培をするのは主として平たんな土地となります。昔は湿地帯でしたが、20世紀前半に干拓されて、その後スーパー・タスカンの聖地となったわけです。土壌はさまざまですが、サッシカイアでは砂利質が有名です。過去の干拓の歴史と重なってボルドーを思い起こさせませんか?

ブドウ品種

トスカーナの栽培面積の過半は黒ブドウのサンジョヴェーゼです。
この品種はイタリア南部では馬車馬のように働く果実、つまりバルク・ワイン用品種として少々ネガティブに扱われる事もあるわりに、栽培は簡単ではないのです。芽吹きは早くて熟すのには時間がかかります。遅霜にも秋雨にも被害を受けやすいということになりますよね。

同じトスカーナでも気候や風土で違いが出ますので、有名産地ではシノニムがあります。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノではブルネッロ。ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノでは、プルニョーロ・ジェンティーレと呼ばれます。
1980年代から始まった優良クローンの選抜プロジェクト、「キアンティ・クラシコ2000」のおかげで、60~70年代に広く植樹されたR10などの質より量のクローンが改植されてきています。

白ブドウはトレッビアーノ・トスカーノマルヴァジア(ビアンカ・ルンガ)を押さえておきましょう。

トレッビアーノ・トスカーノは白ブドウではトスカーナ最大の栽培面積。晩熟ですが、軽快で酸もありニュートラルなワインになります。フランスではコニャック用のブドウとしても知られ、ユニ・ブランと言えば聞き覚えがありますよね。マルヴァジアはトスカーナを中心に中央イタリアで栽培されています。ボディは厚めで、ニュートラルからセミ・アロマティックで酸はやや控えめなワインです。

どちらのブドウもキャンティに脇役としてブレンドできますが、ヴィン・サントでは主役。

2. やっぱり主流は赤ワイン

① キャンティとキャンティ・クラシコ そもそもなにが違うの?

キャンティDOCGはトスカーナのDOC、DOCGのワインの生産量の半分を占めます。キャンティ・クラシコDOCGはそれに続きますが金額ベースにすると順位が逆転。1ヘクタール当りの収量は1割弱ほどキャンティ・クラシコの方が厳しい規定となっています。どちらも今では生産者によって、長期熟成を主眼にした伝統的なクロアチアのスラヴォニア・オークを使った大樽のボッティとフレンチ・オークの新樽を使い分けます。

キャンティもキャンティ・クラシコも主としてサンジョヴェーゼから造られますが、今は補助品種となったカナイオーロが18世紀頃までは実は主要品種でした。

歴史は後の世になって様々な評価が下されるものですが、1716年のトスカーナ大公・コジモ3世が定めたキャンティの生産地の境界線と1872年にベッティーノ・リカーゾリ男爵が残したブレンド方法が、スーパー・タスカンの登場までのキャンティの運命を決めたと言っても過言では無いでしょう。

リカーゾリはサンジョヴェーゼの品質と長期熟成のポテンシャルに気づき、ブレンドの中核に据えました。そして、早飲み用には、カナイオーロやマルヴァジアとのブレンドを提案したのです。後のイタリアの首相を務める人物ですから影響力はおおきく、この早飲みのブレンドが「公式」として広く使われるようになりました。

さらには栽培・醸造で第一人者であったダルマッソ教授の働きかけもあり、1932年には、キャンティの歴史的な境界線がこれまでの産地の外側へと大きく広がります。当時はワインの品質や他産地との比較、トスカーナの経済的な繁栄も考えてのことでした。この新しく認められた産地が1967年にDOCに認められます。

しかし結果としては、キャンティ・クラシコは拡大された栽培面積に埋もれてしまったのです。この歴史的な産地が独立したアペレーションに認められるには1996年まで待たなければなりませんでした。

キャンティ・クラシコDOCGは主としてフィレンツェとシエナの間に位置し、7000ヘクタールほどの畑が広がります。今では、サンジョヴェーゼの100%使用も認められ、他方カベルネやメルローもブレンド可能。とても柔軟になりました。使う事も滅多になくなった白ブドウも2006年には晴れて(?)使用禁止です。

3段階の品質レベルの等級も2013年に完成しています。最高品質はグラン・セレツィオーネ。30か月の長期熟成が必要とされるのに加えて、ティスティング評価まで必要です。その下に位置するリゼルヴァ、アンナータ(通常のキャンティ)とは一線を画しています。さらに今年は11のサブ・ゾーンが定まり、グラン・セレツィオーネに属するワインにはサブ・ゾーン名が表記可能となりました。一方、サンジョヴェーゼの比率は最低80%から90%へと厳しくなり、国際品種のカベルネやメルローは使えなくなるようです。昨今の土着品種重視の潮流の中で歴史の振り子が戻っているのですね。

キャンティDOCGは14,000ヘクタールと広大。白ブドウのブレンドは今でも可能です。サブ・リージョンで、特に押さえておきたいのは、北東にあるルフィーナと、南にあるコリ・セネシでしょうか。

ルフィーナはフィレンツェの東にあり、北アペニン山脈からの冷涼な風の影響を受けます。畑も350mの高度。冷涼な環境による高い酸に恵まれたエレガントなワインになってくれます。

コリ・セネシは、シエナ周辺にあり、キャンティでは最も南に位置しています。ブルネロ・モンタルチーノにも近く温暖。ふくよかなワインになります。規制も厳しく、キャンティDOCGでは使用が認められている白ブドウを2016年に使用不可にしています。

② 王様ワイン ブルネッロとモンテプルチアーノ

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはフィレンツェから110キロほど南。この地はさらに暖かく乾燥しています。おかげでサンジョヴェーゼはとても熟して豊満になります。サンジョヴェーゼ100%が必須です。特筆すべきは長期熟成であり、バローロを超える最低4年間の熟成義務がアペレーション上で定められています。産地の北と南では高度差もあり、土壌も異なります。だから、サブ・リージョンを導入してはどうかという議論があるのも頷けますね。比較的新しいワインで、フェルッチョ・ビオンディ・サンティが1865年に初リリースしました。1950年代には20もいなかった生産者は、今や10倍以上。栽培面積も2000ヘクタール以上へと大幅に増加しています。

90年代にはスーパー・タスカン全盛でがっしりした造りのワインが流行。そこで、エレガンスさや新鮮さを売りにしていたブルネッロは勢いを盛り返そうと100周年記念ティスティングを企画しました。今では小樽による熟成をする生産者がいる一方で、昔ながらの大樽に戻る生産者も少なくありません。凝縮度が高く複雑味ある華やかなワインが国際的な人気を博しています

ロッソ・ディ・モンタルチーノはセカンド・ワインの位置付けです。100%サンジョヴェーゼ使用は変わりません。若木から取れたブドウや、専用の区画、或いはヴィンテージの出来不出来を勘案しています。熟成期間は1年間。キャッシュが早く入るので生産者は、助かりますし、消費者もとっつきやすい。リリースされてすぐ楽しめますから。

モンタルチーノのすぐ東にある、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノは歴史ある産地です。中世には既に輸出をしていた記録が残っています。著名人からも愛され、ローマ教皇や米国大統領のトーマス・ジェファーソンも顧客でした。よく混同されるのが、アブルッツォ州で有名な黒ブドウ品種のモンテプルチャーノです。この産地にある街の地名と名前が同じであるという事だけで関係はないのでご注意を!

③ サッシカイアとスーパー・タスカン

北マレンマのボルゲリ地区はトスカーナ・ワイン変革の震源地といって良いでしょう。スーパー・タスカンは厳格なアペレーションの規則には従わずに、カベルネやメルローを活用して、フレンチ・オークの新樽も取り入れました。早くから楽しめて、それでいて長期熟成にも耐えるワイン・スタイルを打ち立てて、世界的な評価を受けることに。ヴィノ・デ・タヴォラ、後のIGTの格付けを恥じる事なくDOC、DOCGの制度に一石を投じたのです。

このムーヴメントは時代に即した制度の変革を促して、キャンティなどの伝統的な生産者達にも大きな影響を与えました。

ことの始まりはサッシカイアです。ボルドーを愛して、マレンマの砂利質の土壌に目を付けていたマリオ・インチーザ・デッラ・ロッケッタ侯爵が家族のために造り始めたカベルネ主体のボルドーブレンド。従兄弟のアンティノリ家のロドヴィコ侯爵の助言と、醸造家ジャコモ・タキスの参加で、素晴らしいワインであることが広く知られることになります。

1978年のデキャンタ誌が主催したブラインド・テイスティングでサッシカイアが優勝し世界的な名声を獲得します。さらには80年代に入るとロドヴィコは自身のオルネライアを立ち上げるのです。2013年には、サッシカイアだけの為に、ボルゲリ・サッシカイアDOCが認められます。スーパー・タスカンが硬直化していたトスカーナのワイン法を変革する起爆剤となったと言えるでしょう。

1970年代には並行して、キャンティ・クラシコのテヌータ・ティニャネロの畑でアンティノリ家とジャコモ・タキスはサンジョヴェーゼ主体でカベルネをブレンドしたティニャネロを造っていました。次は逆にカベルネ主体でサンジョヴェーゼをブレンドしたソライアをリリース。ヴィノ・デ・タヴォラとしての販売であり、DOCには認められません。サンジョヴェーゼの熟成に小さな新樽をつかいボルドー品種も使うなど、当時のキャンティ・クラシコの畑としては「実験場」と言っても過言ではありません。

90年代には、フレスコ・バルディ侯爵がカリフォルニアのロバート・モンダヴィと組んでモンタルチーノでルーチェを立ち上げます。サンジョヴェーゼとメルローのブレンドのスーパー・タスカンです。

こうして、勢いを増し、特に90年代に急激に増えたスーパー・タスカンですが、2000年代に入ると落ち着きをみせます。

最近では、イタリア土着品種の見直しや新樽使用比率の減少など一昔前のワイン造りへの回帰も見られます。

フィレンツェの西のカルミニャーノは、1500年代にさかのぼる、カベルネ・ソーヴィニョンやカベルネ・フランをブレンドしてきた長い歴史があります。後のアンリ2世と結婚し、フランスの王宮に華麗なイタリアの食文化をもたらしたカトリーヌ・ド・メディチ。彼女のおかげでフランスのブドウ品種が故郷のトスカーナに植樹されたという話が語り継がれています。スーパー・タスカンのご先祖様ともいえるのではないでしょうか。

3. 高貴なる白ワイン

① 聖なるワイン ヴィン・サント

聖なるワインと呼ばれ、おもに琥珀色の甘口のデザート・ワインとして供されます。トレッビアーノ・トスカーナあるいはマルヴァジアを最低60%使う白ワインが主流です。

収穫したブドウは良く乾燥させた後に圧搾。糖度が高いので発酵はゆっくり。マードレと呼ばれる、以前の醸造で使われて樽底に沈殿した澱や酵母を発酵に使う生産者もいてスタイルに生産者の独自性が映しだされます。カラテッリと呼ばれる50リットル程度の樽で長期熟成期間を過ごすのです、ほどよく酸化的に。キャラメルや、アプリコット、オレンジブロッサムや蜂蜜などの華やかな香りに包まれます。

サンジョヴェーゼを使ったオッキオ・ディ・ペルニーチェという赤ワインタイプもあります。ペルニーチェとはヤマウズラの目のことを言いますが、こちらのワインはとても希少です。

② 白ワイン最高峰 ベルナッチャ・ディ・サンジャミアーノ

この土地はユネスコの世界遺産に登録されていますが、ワインも中世からすでに有名。由緒あるアペレーションです。1966年にイタリアでの最初のDOCにも認定され、白ワインではトスカーナで唯一のDOCG。砂岩や泥灰質の土壌が知られています。ソーヴィニヨン・ブランやリースリングもブレンド可能ですが、単一品種のワインが主流。

ステンレス・タンクを使用した現代的なワイン造りが普及しているものの、リゼルヴァなどの高品質ワインの中に見つかる樽発酵・熟成を経た麦わら色でハチミツやナッツの風味をもったワインは素晴らしいです。

4. 当たり年・飲んでみたい ヴィンテージ ワイン

ブルネッロの生産者協会では、2004年、2006年、2007年、2010年、2012年、2015年、2016年に最高の5スターを付けています。他方、2014年は満足行く年では無いと、ビオンディ・サンティはすべてロッソ・ディ・モンタルチーノに格を落としたようです。キャンティ・クラシコも同様に2006年、2010年、2016年は秀逸なヴィンテージ

ただし、気候変動の影響は深刻になりつつあり、生産者達は樹冠管理の工夫、新しいクローンや将来的な新しい品種の採用などを検討しています。

5.いつか遊びに行きたい ワイナリー

フィレンツェやシエナ発のワイナリー・ツアーで殆どの有名な産地へのアクセスが可能で、ブドウ畑の見学やワイナリーでのティスティングが楽しめます。ゆっくり滞在ができるのでしたら、もっと沢山の選択肢があります。

キャンティやブルネッロ他の一流アペレーションが年に一度、アンテプリマと呼ばれる新酒のティスティング・イヴェントも開催します。

また、トスカーナ・ワイン・アーキテクチュア―という14の生産者の団体があり、世界的に著名な建築家によるワイナリーや周囲の自然環境を訪問者に楽しんで頂くように門戸を開いています。例えば、サルヴァトーレ フェラガモが、トスカーナに所有するイル・ボッロは、ワイナリー内にアートギャラリー!リゾートホテルもあり、乗馬も楽しめるそうです。ロンバルディア州の瓶内二次発酵スパークリング・ワイン、フランチャコルタの有名生産者でもあるベラヴィスタのスーパー・タスカンのペトラでは、3時間にも及ぶブドウ畑からワイナリーのツアーをランチで締めくくるツアーも。

6. あとがき

ご紹介できていないアペレーションや面白い逸話はまだまだ沢山あります。ナポレオンが愛したエルバ島の甘口赤ワインのアレアティコやコルトーナのシラー。キャンティ・クラシコのシンボルになっている黒い雄鶏(ガッロ・ネーロ)の由来などなど。でも、勉強した内容さえ押さえておけば、トスカーナのワインの基本はマスターしたのも同じです。早速、ワインショップにワインバーに出かけましょう。

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