連載コラム

連載コラム:佐藤くらら陽子のブルゴーニュ日記 Vol.03 2016_02_29

こんにちは、ブルゴーニュより佐藤くらら陽子です。

朝市にミモザのお花が登場し、すっかり春の様子をうかがえるボーヌです。
「今年は冬がない」と言われるくらいの暖冬のブルゴーニュですが、畑での剪定の授業では時々、雪や霰が降って、凍えながらの作業が続いています。
ブルゴーニュの天気は分刻みで変わります。それが畑の場所、区画や畝の位置により異なりますし、風の通る道や、雨や雪、霧に覆われる場所が畑や畝により変わりますので、ミクロクリマを肌で感じながら作業をしています。

2月も後半に入りましたが、ボーヌの街中は観光客も少なく、とても静かです。
その中でも、フランスの行事を感じるのが、グルメです。
1月のアーモンドケーキのガレット・ド・ロワに続き、2月2日はクレープを頂く日でした。
シャンドリュー(la Chandeleur)といって、ロウソク祝別という「聖母マリアを清める」祝日で、キリスト生誕40日後に当たる2月2日にフランスではクレープを頂く習慣があります。(でも、祝日ではありません)
言われは色々ありますが、この日から冬から春への移行となり、クレープが太陽の象徴とされ、クレープを食べる日とされています。
面白いのが、左手にコインを持ち、右手で上手にフライパンのクレープをひっくり返すことができたら、その年は金運に恵まれると言われています。
街のパン屋さん、お菓子屋さん、カフェや朝市などではクレープが並びました。
クレープはブルターニュ地方の名産物なので、お決まりのマリアージュとしてはやはり、シードルがクレープの横に置かれていました。街に出るたびに、フランス人のマリアージュを感じることができます。
そして、もう一つこの時期にお店に並ぶお菓子があります。
マルディグラと呼ばれるキリスト復活祭の47日前に、ベニエと呼ばれる揚げドーナッツを頂く風習があります。
マルディグラはカレーム(復活祭前日までの節制する40日間、マルディが火曜日を意味します)が始まる前日のことで、節制生活に入る前の火曜日は贅沢に過ごし、脂肪分の多い食事をするという習慣です。
デザートの締めとして、小さく揚げたドーナッツに粉砂糖を振りかけたお菓子のベニエを食べる習慣があり、お菓子屋さんやパン屋さんの店先にベニエが並び、小さい子供たちが喜んで食べているのを目にします。今まで店頭になかったものが登場したので、興味津々で買ってみましたが、ふわっふわしてとても軽いのですが、とても甘く、ものすごく油っぽいお菓子でした。(汗) 日本のドーナッツとは全く違いました。
そして、もうこの時期は復活祭の準備が始まっています。卵の形をしたお菓子や、ウサギやニワトリの形をしたチョコレートが店先に並び始めました。
ボーヌは小さい街ですが、お店を色々覗いてみると、季節ごとに売られているお菓子や野菜がかわるので、ブルゴーニュの季節感を肌で感じています。特に毎週土曜日の朝市に行く度に季節の代わり、旬の果物、野菜、チーズを感じることができ、楽しみの一つになっています。

さて、学校の畑での授業も、剪定作業が続いています。
今年は暖かいので畑での作業が順調に進んでいます。
通常、ブルゴーニュの1月と2月は厳寒にあたり、天候が悪いと畑での作業は中止になります。
なので、作業は滞りますので、ブドウの樹の病気(カビの病気)を懸念するのですが、今年はこの好天のおかげで、畑での作業が早く進み、病気やウィルスに侵される可能性が低いのではないかといわれています。しかしながら、今の懸念としては3月の遅霜の到来で、天候の動向を日々チェックしている状況です。
天候、自然には人間は勝てない、全てが自然の恵みなので、こればかりは誰も予想できません。
そういう現場にいると、接に自然の有難みと偉大さ、そして、恐怖を感じざるを得ません。

そんな中、剪定のテストがありました。
一人ずつ畑に行き、試験官の前でピノノワールの剪定と、剪定のみならずブドウの樹を取り巻く全ての自然条件(アナトミーと言われます)を説明し、質疑応答を伴う、私にとっては緊張の試験でした。
まず、指定された樹の樹勢はどうかが問われました。
去年の枝を見てブドウの実がどのくらい付いていたかを見ます。枝の数を数え、どのくらいの樹勢だったかを考え、今年のブドウがどの枝に付くべきかを選び、残す芽の数を判断します。
そして、どの剪定タイプが正しいか(必ずしもギヨーサンプルが全てではないので)を考えます。
また、枝を見ながらの質疑応答では、ブドウの樹の年間サイクル、それに合わせ必要な作業の説明と、光合成や自然体系の説明、ブドウの樹の病気や対象法など、色々な質問が容赦なく浴びせられました。
質問に答えながらも、目の前のブドウの樹をどう剪定すべきか考えるので集中力を保つのも大変でした。
そして、ようやくフランス語の質疑応答を終え、自分で選んだ枝に鋏を入れる剪定の実施テストです。
30分、2株の剪定が指定されました。そのうちの1株は枝の数も少なく、樹勢も小さく、通常のギヨーサンプルの8芽残す剪定方法には合わないものでした。
悩んだ末、株の中心に沿った枝を選び、昨年の枝の数を数え、芽の数を少なくすべきと判断し、4芽だけ残しました。
その判断が正しく、試験官の先生に褒めていただき、どうにか合格することができました。(容赦なく、クラス中の1/4は不合格で、再試となります)
ドキドキの30分でしたが、私には果てしなく長い時間に感じました。

そして、試験は終わったものの、畑での授業は続いています。
畑に行く度に、着実にブドウの枝の芽が大きくなっているのを目で確認できます。
着実にワインとなるブドウの実の準備がなされているのを目の当たりにし、感動しています。
私自身も畑での作業を通して、今年も、良いブドウができ、美味しいワインになってくれることを願いながら、作業をしています。

まだまだ、修行の日々で、沢山の試験がありますが、ブドウの樹と共に生活している自分とワインの尊さを感じる毎日です。

ではまた!