連載コラム

おおくぼかずよの「男女の友情は成立するか?それはさておき日本酒の話」 Vol.08 2018_06_01

こんにちは。日本酒コラム担当のおおくぼかずよです。そろそろ夏の予定も決まってくる頃ですが、より有意義で充実した夏を過ごされるために、今年は健康にも美容にも良いとされる甘酒を活用されてはいかがでしょうか。

【酒なのにノンアルコール?】
甘酒には2通りあることをご存知でしょうか。米麹を原料にしてつくる「米麹甘酒」と、酒粕を原料にしてつくる「酒粕甘酒」があります。

まず、米麹でつくられる甘酒は、麹の力によって米を糖化させたものです。アルコール発酵はさせていないのでアルコールを含まず、また、砂糖を添加せずに米本来の甘さを大切にして市販化されているものが多く、お子様でも安心して召し上がれます。

もうひとつの酒粕を溶いて砂糖などで甘味を調整してつくれた甘酒には、酒粕自体にアルコールが含まれているのでこちらはノンアルコールではありませんが、アルコールでほんのり身体が温まりますね。生姜を入れると、さらに美味。

その時々に合わせて、飲み分けて下さいね。

【甘酒は夏の季語】
甘酒は俳句では夏の季語ということはご存知の方も多いかと思いますが、江戸時代の初めの頃までは冬によく飲まれていたようです。江戸時代中期から後期の医師、小川顕道(1737~1816)が著した随筆集「塵塚談」には、

『30歳の頃(1767年)までは寒い冬の夜のみ売り巡っていた。しかし、今は暑中往来を売り、夜に売っているものは少ない。浅草本願寺前の甘酒店は古く四季を通して売っている。四季通して外で売っている所は江戸中で45軒ある。』とあります。

夏に飲まれるようになったのは、江戸時代の後期といわれています。甘酒は「飲む点滴」と言われるほど、ブドウ糖や天然型吸収ビタミン群、必須アミノ酸など多くの栄養成分を含みます。夏場の死亡率がまだ高かったこの時代、甘酒は抗酸化作用も高く、暑さで失われた体力を回復させることは幕府も承知していて、誰も飲めるようにと一杯の販売価格の上限を設定し、保護するようになりました。夏の幕府お墨付きの栄養ドリンク的な存在として飲まれ始めたようです。

【いつの世も恋は切ない?!“甘酒屋の荷”】

甘酒はどのように売られていたかというと、参道などの甘酒屋の他、天秤棒を担いだ甘酒屋が江戸の市中を売り歩いていました。国立国会図書館のデジタルコレクションにアクセスすると当時の甘酒売りが描かれた文献を見ることが出来ます。
「守貞漫稿6巻23頁」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2592395/23

甘酒売りは、天秤棒の前に茶碗やお盆を、後ろの箱に甘酒の釜を据えていたところから、 一方が熱いがもう一方は冷たいということで、「甘酒屋の荷」といい、片思いを表す洒落(しゃれ)言葉だったとか。洒落好きな江戸文化が垣間見られますね。

【おすすめの甘酒】
最後に都内にある老舗の甘酒屋をご紹介。東京・外神田にある神田明神そばには、創業1846年の「天野屋」と創業1616年の「三河屋綾部商店」というお茶屋さんが2軒あります。参拝しながら飲み比べなどいかがでしょうか。

自宅で楽しみたい方は、酒蔵が米麹のみでつくるノンアルコールの甘酒4選をご紹介します。

・八海山「麹だけでつくったあまさけ」
デパートや都内酒販店で購入出来ます。

・真澄「真澄 糀あま酒」
HPにある甘酒アレンジのレシピも参考になります。

・橘倉「こうじと井戸水だけの手造りあま酒」
くせがなく米の優しさを感じる味わいが人気です。

・天鷹「有機 大吟醸 あまさけ」
大吟醸とありますが、こだわりの有機米でつくられたノンアルコールです。

甘酒パワーで素敵な夏をお過ごし下さい。