連載コラム

おおくぼかずよの「男女の友情は成立するか?それはさておき日本酒の話」 Vol.03 2017_10_06

~世界の乾杯酒を目指して~

今年2月、J.S.A.の日本酒に特化した認定制度「SAKE DIPLOMA」の発表から8ヶ月。この発表が日本酒をあまり飲む機会がなかったという方々にとって日本酒に興味を持つ大きなきっかけになったことを実感しております。SAKE DIPLOMAのみならず、様々な日本酒関連の資格が増えていることからもわかるように、「酔う酒」から「味わう酒」へすでにシフトチェンジをしている日本酒は、次はどこへ向かうのか。そのひとつの答えが、知的好奇心の対象としての「探求する酒」ではないでしょうか。口噛みの酒から2000年以上の悠久の歴史を誇り、日本人にとっては主食以上の価値を持つ米から造られる日本酒。米の圃場にもワインと同じように特A地区と呼ばれる場所があり、ブドウと同じようにそれぞれ個性の違う米を使い分けます。そして、なぜ米は酒になると華やかで甘美な香りがするのか、なぜワインと同じ醸造酒でありながらあのような高いアルコール度数を生み出すことが出来るのかなど、学べば学ぶほど醸造は化学であることがわかり、それぞれの風土や文化、また造り手の意図が日本酒の酒質設計に大きな影響を与えていることを知ることになります。資格を取得することは旅の目的地ではなく、ガイドブックを手に入れたようなもの。これから始まる大いなる探究の旅の第一歩としてご紹介したいのが、門出の酒にぴったりの『awa酒(アワサケ)』です。

awa酒とは、有志の蔵元により設立された一般社団法人awa酒協会(代表理事「水芭蕉」醸造元永井酒造、永井則吉社長)が認証する、一定のガス気圧を保持し透明でグラスに注いだ時にひとすじの泡が立つ自然発酵の日本酒のこと。現在は9社が賛同し、8社10製品が認定されています。

<認定されている10製品(2017年10月1日現在)>
岩手県 (株)南部美人    南部美人 あわさけ
秋田県 秋田清酒(株)    出羽鶴 明日へ
群馬県 永井酒造(株)    MIZUBASHO PURE
群馬県 永井酒造(株)    THE MIZUBASHO PURE 2008
埼玉県 滝澤酒造(株)    菊泉 ひとすじ
山梨県 山梨銘醸(株)    七賢 星ノ輝
山梨県 山梨銘醸(株)    七賢 杜ノ奏
新潟県 八海醸造(株)    瓶内二次発酵酒 あわ 八海山
鳥取県 千代むすび酒造(株)   CHIYOMUSUBI SORAH
佐賀県 天山酒造(株)    天山 スパークリング

先日、東京青山にあるawa酒協会の事務局にて、蔵元の皆様から造り手としての熱い想いや技術面についてお話を伺わせて頂き、awa酒を推進している素晴らしい方々にお会いすることが出来ました。

awa酒の基準とは、
1.米(※1)、米こうじ及び水のみを使用し、日本酒であること
2.国産米を100%使用し、かつ農産物検査法により3等以上に格付けされた米を原料とするもの
3.醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること(※2)
4.外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること
5.アルコール分は、10度以上
6.ガス圧は20℃で3.5バール(※2)以上
※1 純米であることや精米歩合については規定しない
※2 二次発酵についてはタンク内でも瓶内でも規定内とする

さらに、常温で3ヶ月以上、香味・品質が安定していること、また火入れ殺菌を行うことなど、厳しい基準が設けられ、認定された製品には日本酒業界としては初となる真贋を見分けるためのホログラムシールが貼られています。

米から生まれたスパークリングのawa酒は未知の可能性を秘めた日本酒です。永井酒造では700回以上のトライアンドエラーを繰り返し、滝澤酒造では20年以上の歳月の中で完成した念願の酒であり、日々、研究開発が進んでいる『いま』の日本酒 。

今回、インタビューさせていただいたawa酒協会は、シリコンバレーで活躍されている人々が集まる刺激溢れるスペースに事務局を置き、日本酒業界にとどまらず世界を舞台に活躍されている女性起業家やIT業界のメンバーもバックアップ、次世代も視野に入れ、awa酒を通して米の消費拡大や地域創生など世界に認められる成功事例になることを目指しているとのこと。テイスティングさせていただいた千代むすび酒造の「SORAH」の目映いオーロラを模した美しいラベルはawa酒がつくり出す未来の輝きを表現しているようでした。

選ばれた米と清冽な水で醸され、注げばグラスの中で華やかな芳香を纏いながら、ひとすじの美しい泡を紡ぎ出す。自然と人が奏でるたおやかな響き。awa酒を初めて口にされるときは、蔵人たちの不断の努力の結晶であり、長年の夢でもあったという秘められたストーリーも是非思い浮かべながら味わってみてください。この時代にいるからこそ新しく生まれた日本酒の『いま』に出会えた感動を皆さんと共有し、世界の乾杯シーンでawa酒が選ばれ、これからもずっと人生の節目のときに側にある酒であってほしいと願っています。

awa酒協会
http://www.awasake.or.jp/