連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.28 2013.08.05

天候不順の続くフランス

 昨年のフランスは天候に恵まれず、ワインの出来も、ここ10年で最も評価に苦しむ複雑なものだと言われています。ボルドーの春は湿気が多く、ローヌ南部では凍結。ラングドックの冬は乾燥し、ブルゴーニュの四分の三の畑に雹がおそいました。気候の変動と病気のおそれが収穫量にも影響を及ぼし、軒並み生産減です。Revue du vin de Franceの記事にしたがって、ざっと各地方を見ていきます。
 まず、アルザスとロワールの白はよく、貴腐菌も順調です。ただし、赤はカベルネフランとガメが不調で、早飲みすべし。
 ボルドーは、右岸、メルロの地であるポムロールとサン・テミリオンの勝利。一般に2012年は不安定な気候で、熟成も遅かったのですが、ジロンドでは、20年来の悪天候。
 シャンパーニュも、収穫は落ちましたが(30%減)、2003年と同じくらいのアルコール度と糖度があり、凝集力が高く酸味もよい具合。ピノが肉厚でよく、とくにモンターニュ・ド・ランスのピノが素晴らしい出来で、大手の多くがミレジムを出すだろう、とのことです。そう言えば、ロイヤル・ベビーの記念に、ポール・ロジェは記念ボトルでもだすのかな。今のところ、そういう動きはないですが。  
 ジュラのシャルドネは魅惑的で、将来が期待され、また、サヴォワでは、ルーサンヌ種よりもジャッケール種やルーセット種が満足すべきバランスをだしています。
 ローヌの北はクラシックなスタイルのシラーができあがり、とくにエルミタージュとサン・ジョセフが注目。南はアルコール度が低くタンニンも軽いが繊細で、果実味があり、おしなべて、白が赤を勝っているようです。
 ラングドック=ルーションでは、フランスの他の地区と比べると天候はよく、全体的にうまくいったとのことです。また九月の雨のおかげで、赤は熟成し、フレッシュ。白も新鮮で芳香高い。
 プロヴァンスでは、赤が柔らかで飲みやすく、カベルネとシラーがエクサン・プロヴァンスでうまくいっています。白は2011年よりも日射が少なかったのですが、繊細で新鮮。
 南西地区の白は、ばらつきがあり、2011年よりもアルコール度が低いが、ものによっては、香りよく楽しみなものになるでしょう。ピレネー、とくにジュランソンの辛口がよく、
カオールも、肉付きよく新鮮で、香り高いということです。カオールと言えば、個人的にはインクのような色の赤ワイン、とつい連想しますが、カオールのブドウ栽培者組合は、今年5月にappelation Cahors blanc をINAOに申請したそうです。セパージュは、chenin,chardonney,viognier,sauvignon blanc,vermentino種。
 コルシカの白とミュスカでは9月に250mmも降った雨で、ブドウにばらつきがありますが、ビオ栽培者はとくによい、と。ただし、白とミュスカ以外は若いうちに飲んだ方がよいようです。
 ロワールでは、10月初めの雨の前に収穫したソーヴィニオン、ガメ、ピノ・ノワールはよい出来。サントル・ロワールでは、とくにサンセールで、白も赤もよく、ブルグイユの赤、ミュスカデの白、アンジュ、ソーミュールのシュナンもよい出来。
 ブルゴーニュでも収穫量が低かったようです。ここ20年でもっとも複雑な年で、生産量の少なさにもかかわらず、よいものも。雷雨に見舞われましたが、ムルソーやピュリニー・モンラッシェでは、十分よいシャルドネが収穫されました。ニュイでは、果実味があり、クラシックなスタイルの繊細なワインが出来、シャンポール・ミュジニーとジュヴレイ=シャンベルタンがとくによいようです。優秀な多数のドメーヌでは成功を収めているもようです。ブルゴーニュと言えば、2016年のオープンを目指し。ボーヌ市が、ワインの文化センター「シテ・ド・ヴァン・ド・ブルゴーニュ」の建設に乗り出しました。ブルゴーニュのクリマをユネスコの世界遺産に申請する動きを、後押しするとも言われています。
 そして、今年も、天候はイマイチです。
 長引く雨、凍てつく寒さと灰色の空、今年の春は厳しく、すべてのアペラシオンで、収穫は大幅に遅れる見込みです。強烈な雨のため、微生物の活動が妨げられ、植物サイクルに狂いが生じ、ブルゴーニュは湿気で病気の怖れもでています。当然、“ビオ”ワインにも影響がでています。おまけに、ブルゴーニュは、7月23日昼過ぎ、15時半におそった雹を伴う嵐で、最悪の天候になりました。ブルゴーニュ全体では、27000ヘクタールが被害に遭いました。2013年の収穫の30000ヘクトリットル分の損失に当たるとか。
 とくに被害の多かったサヴィニーレ・ボーヌをはじめとするボーヌ地区では、ブドウ畑の35%から40%にあたる1700から2000ヘクタールが被害に遭い、ところによって、10%から100%!のブドウをやられるという、カタストロフィックな悲劇も。わずか30%の栽培者だけが被害を免れました。地区別の被害は、こうなっています。
 ヴォルネイでは、30から70%、一級畑の20から50%。
 ボーヌでは、ブドウの10から90%。
 アロース・コルトンでは、特に一級畑を中心に30から50%。
 ムルソーでは北部で、5から40%
 ポマール、一番ひどく、一級畑の50から70%、全体として90%とか。栽培者のジャン=ルイ・モワスネ(Jean-Louis Moissenet)氏は、「一年間働いてきて、それが一瞬ですべてを失った」と語っています。
 農相が、7月23日にブドウ栽培者に税金の免除など、いくつかの措置をだしましたが、ドメーヌの廃業もささやかれているくらいです。ボジョレーヌーボーの予約もはじまるころです。どうなるのでしょう。最近、中国人が、ボルドーからブルゴーニュにシフトしているらしいので、またまた買収もありそうです。なによりも、価格も大幅に上がりそうです。残念です。
 
 ここで、そのすさまじい雨のようすがわかります
http://www.larvf.com/,vins-bourgogne-orage-grele-vent-degats-pommard-beaune-nicolas-rossignol,13180,4315016.asp

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