連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.06 2011.10.12

雑誌La revue de vin de France を読む

本や雑誌の体裁は、現在ではかなり世界中で似てきていますが、昔、それこそ17世紀や18世紀ではもちろん、19世紀でも地域やコンテンツにしたがって、けっこう違うものでした。
目次のない本もありましたし、印刷の都合でしょうか、次のページに移るときに、前のページの最後の単語が、次のページの最初にあって、重複したり、なかなか面白いものです。中には、ぺらぺらめくっていくと、真ん中あたりに目次がでてきて、びっくりするのもあります。学術書などでは、項目の索引は、今でこそ当たり前ですが、一昔前には、あまりお目にかかれなかったものです。
それ以前の中世ではそもそも本の題名がなく、本文の最初の数語、あるいは最初と本文の最後の数語をあわせて表題がわりにするのが普通でした。19世紀とかのフランスの本では、ご丁寧に、パラグラフごとにまとめが横に添えてある本まであります。またフランス綴じなどといって、最初は仮装丁で、裁断せずに綴じただけで、ページがくっついていて、それをペーパーナイフで切って読む、あるいは、仮装丁の紙の表紙を、皮のような立派な表紙に変えて、自分用の蔵書として、本格的に装丁し直すといったものもあります。これを受け持つ製本屋さんも、街中にわずかながらあって、職人はレリユールrelieurと言います。
現代でも、こういう違いは、わずかながら残っていて、英語やドイツ語、日本語などの本は、目次は最初にありますが、フランスの本は、最後にあります。
ところで、フランスに、La revue de vin de Franceという有名なワイン雑誌があります。直訳すると、「フランスのワインの雑誌」という、そのものズバリというか、身も蓋もない題名です。雑誌の体裁はまあ、とりたてて言うような違いはありませんが、その代わり、バカンス前後では、ぺらぺらの雑誌になり、春と秋、クリスマス前には、それを取り戻すかのように分厚くなります。ぺらぺらの雑誌を手にすると、編集部もバカンスを心待ちにしているように思えてほほえましく、クリスマス前には、かならずシャンパーニュ特集が組まれます。家族で、何を飲むか算段をしているのでしょうかね。日本でこういうことをしたら、ブーイングかもしれないですね。
RVF(しばしば、こう略されます)の9月号は、「ワイン市場」という、これも定期的に組む特集で、分厚い号です。
「ワイン市場」の名にふさわしく?フランスのCarrefourや、Auchan、Casinoなどの大手のスーパーで、ワイン市を開いて目玉商品と価格がのっています。個人的によく行くパリのデパート、ボンマルシェ横の食料品スーパー La grande épicerie de Paris では、Jacque Selosse Initialeが62ユーロとか、Didier DagneauのSilex 2007 が89ユーロなどとなっています。円高なので、現地にいたらなあ、などと思っています。
その他の雑誌の目玉は、まず、サンテミリオンの格付け変更の記事です。2006年以来の改訂時期で、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに、Angelus、Pavie、Figeacが加わるのは確実で、そのために、またまた現在の価格からはねあがるだろう、とのことです。それに加え、アルファベット順並べるので、Angelusがトップに来て、売り上げが伸びるのでは、などとなっています。
もう一つの目玉は、2008年と2009年のボルドー評価です。2009年の伝説は、今でも続いているのだそうです。2008年の評価には、classicという言葉が出てきます。今年のプリムールにも、同じ言葉が使われていて、有坂さんから、「困ったら、クラシックと言うのよ。」と教えていただきましたが、はてさて、2008年と2010年のクラシックの差は何でしょうね。