連載コラム

葉山考太郎の「新痛快ワイン辞典」 Vol.06 2017_12_22

葉山考太郎先生が1999年に出版した『辛口・軽口ワイン辞典』(日経BP社)の続編です。ワインに関する用語が、葉山先生特有の痛快な語り口で解説されています。今回は、「け」と「こ」で始まる語をお届けします。

【見出し語について】
(1) アルファベットで始まる語はカタカナ表記で配列した。【例】AOC⇒エー・オー・シー
(2) シャトーやドメーヌが付くものは、それを除いた見出し語で収録した。【例】シャトー・ラヤス⇒ラヤス、シャトー
(3) 人名は、「姓+名」で収録した。【例】ロバート・パーカー⇒パーカー、ロバート



■け■

KWV (Kooperatiewe Wijinbouwers Vereniging)
新世界ワインの注目国、南ア最大の生産者で、世界第7位の巨人。ブドウ栽培農家の経済的安定を目的に設立した共同組合。自分で醸造・販売する業者も吸収し、95%の生産者が加入。政府機関並みの強大権力を持ち、「紙幣を作るのは財務省、ワインはKWV」となる。業界独占と組織肥大で弊害が表面化。アパルトヘイトとこれが南アワイン産業の障害となったが、1994年のマンデラによる初の黒人政権樹立後、1997年から民営化された。以降、ブティック・ワイナリーが登場し、南アワインが面白くなった。

ゲーテ (Goethe)
誕生から臨終までワイン漬けのドイツの超有名詩人。1749年生まれなので、モエ・エ・シャンドン社の設立とほぼ同時期。仮死状態で産まれたが、暖めたモーゼル・ワインに入れたとたん、産声をあげる。朝、白をグラスで1杯、昼はフランケンを1本、夜はデザート・ワインとシャンパーニュを飲んだ。1日の平均飲酒量は1リットル。ラインガウを1杯飲んだ後、「もっと光を」と言って息を引き取るが、ホントは「もっとワインを」だったりして。

げこ(下戸)
酒に交われば赤くなる人。

ゲップ
シャンパーニュをたくさん飲むと口から出るもの。恋愛のお酒、シャンパーニュを1ススリするとベッドが30cm近づくが、大きなゲップ1回で30km遠ざかるので注意。だからと言って、シャンパーニュ・マドラーみたいな棒で泡を飛ばすのは田舎者の行動と心得るべし。なお、無理やりベッドを引き寄せるために大量に飲むと、病院のベッドが近づいてくるので注意。

ケネディーだいとうりょう(ケネディー大統領)
名門出身で若くてカッコよく、ソ連の妖怪、フルシチョフと戦う正義の味方と一躍世界の人気者になった政治家。ケネディーのハウス・シャンパーニュはドンペリで、1963年のダラス暗殺前夜も飲んだ。本人も認める病的な女好きで、奥さんのジャクリーンも半ば公認状態だった。特に、マリリン・モンローとの「交際」が有名で、ケネディーの誕生日にア・カペラで「ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー」を唄うモンローは、声も姿も異常に妖艶。クリントンといい、米大統領は代々「お熱いのがお好き」。モンロー御用達シャンパーニュもドンペリだった。なお、「ケネディー大統領」ではなく、JFKと言うと滞米20年の雰囲気が出る(阪神タイガースのファンと思われる可能性もあり)。

ゲラール、ミシェル (Michel Guerard)
1933年3月27日生まれ。フレンチの天才シェフ。脂肪コテコテの従来のフレンチから、健康で太らない「ヌーヴェル・キュイジーヌ」を提唱。写実的な絵画にキュビスムを持ち込んだピカソみたいに、フレンチを劇的に変えた。「美味しく食べてやせよう」がキャッチ・フレーズで、エステ付きレストラン、「レ・プレ・ド・ウジェニー」を経営。冷凍食品も手掛けるなど、多才ながら冷静で礼儀正しい人。(関連項目:ヌーヴェル・キュイジーヌ)

ケンウッド・アーティスト・シリーズ (Kenwood Artist series)
カリフォルニアのケンウッドが出しているワイン。ムートンを真似て、1975年から毎年ラベルを変える。ラベルを描いた有名人は、1987年のミロ、1989年のピカソ。異色は1978年のチャールズ・ミンガス3世。ジャズの巨匠でベーシスト、チャールズ・ミンガスの息子。お父さんは、ベースの弦を弾くとき、薬指と小指の動きが鳩のようなので、「ダブ」と呼ばれた。代表作が『直立猿人』。超個性的で、マル・ウォルドロン、ジャッキー・マクリーン、エリック・ドルフィー等の妖怪連合の親分(ワインに関係なくてスイマセン)。

けんたいき(倦怠期)
家に帰ると、暖かい奥さんと冷たいシャンパーニュが待っているのが新婚時代。これが20年も経つと、冷たい奥さんと暖かいビールが待つようになる。


■こ■

ゴー・ミヨー (Gault-Millau)
アンリ・ゴー(Henri Gault)とクリスチャン・ミヨー(Christian Millau)が1973年から出版しているレストランのガイドブック。ミシュランと双璧をなす。ミシュランは星3つで評価するが、こちらは20点法。ヌーヴェル・キュイジーヌを広める原動力になった。ゴーとミヨーの二人は、アカデミー・デュ・ヴァンの創立者で現名誉校長のスティーヴン・スパリュア氏と大の仲良し。(関連項目:ヌーヴェル・キュイジーヌ、ミシュラン・ガイドブック)

ごういん(強引)
例えば、『私を愛したスパイ』で、ロジャー・ムーア扮したジェームス・ボンドが、「ドンペリ好きに悪人はいない」と言うこと。「ハゲに癌なし」と同じ位、強引で根拠がない。

こうきゅうフレンチきょうふのさんだいかんもん(高級フレンチ恐怖の三大関門)
「お友達」から「親密な関係」への昇格を目指し、高級フレンチ・レストランへ彼女を誘ってイイ格好をしたい正統な青年の前に岩のように立ちはだかる3つの関所。「アペリティフをお飲みになりますか」、「ワインはどうなさいますか」、「ホスト・テイスティングをなさって下さい」の3つ。そんなとき、アペリティフもコースも全て、「シャンパーニュを飲みます」と言い、ホスト・テイスティングはテキトーに飲んで、「これでお願いします」と言えばOK。

こうくうきさんぎょう(航空機産業)
重長厚大産業の典型。手間・ヒマ・金がかかるので、かつての大手がどんどん撤退。大型旅客機市場はボーイング社が独占。戦闘機を自国でバリバリ開発しているのはアメリカ、ロシアとフランスくらい。フランスが戦闘機開発に一生懸命なのは、ワインとともに重要な輸出品だから。ワインは、アメリカ、イギリス、日本など金持ち国へ売り、戦闘機はアフリカ、南米、台湾などへ輸出する。アメとムチならぬ、ワインと軍用機で世界市場をカバー。(関連項目:ダッソー)

こうすいようのさけ(香水用の酒)
オーデコロン代わりに、ウナジに着けるお酒。木村拓哉がテレビCMでウィスキーを体にすりこんで以来、試す人が増えた。これは昔からの有名な技で、個性的な香りのするバーボン(例えば、オールド・グランド・ダッド)やグラッパがピッタリ。(関連項目:グラッパ、試飲会のタブー)

こくさいコンクールのきんしょう(国際コンクールの金賞)
1989年、ユーゴスラビアのリュブリアーナで開かれた国際ワイン・コンクールでメルシャンの切り札、「桔梗が原メルロー1985年」が受けた賞。このワインは、メルロー種で作る本格ポムロル・タイプの赤。生産本数が500ケースと極少量なのもポムロルなみ。初ビンテージの1985年はいまだに伝説的で、ヒュー・ジョンソンが「ペトリュスに対する日本の答がこれだ」とレベルの高さにビックリしたらしい。

コクトー、ジャン (Jean Cocteau)
1947年のムートン・ラベルを描いたフランスの超有名文化人。小説、詩、戯曲、舞踏、映画(『美女と野獣』が有名)や、バンドを結成して酒場を回るなど、何でも小器用にこなす。絵もサラッとした鉛筆描きから礼拝堂の壁画まで多様。美少年や筋肉ムキムキの労働者を好んで描き、同性愛を噂された。「私の耳は貝の殻。海の響きを懐かしむ」という俳句式ミニ詩は日本の文学少女御用達。そのせいか、ムートンに描いた人の耳は貝殻風。

こしゅのばっせん(古酒の抜栓)
熟練したソムリエにも難しい技。50年、60年経つと、コルクがポロポロに崩れてスクリューをねじ込めなかったり、入ってもコルクの外側がボトルに張り付き、真ん中だけが抜ける。二股になったプロング式のコルク抜きをコルクとボトルの間にジワジワ差し込んで、回しながら抜くのが正統派だが、これも大変。うまく行ったと思っても、コルクの最後の1センチがボトルに残ることが多い。地味だが、状況に応じた高度な技術が必要。そんな状況を一挙に解決したのが古酒専用のコルク抜き、デュランド。初心者にも簡単に古酒のコルクが抜けるが、問題は価格が20,000円もして腰が抜けること。「古酒を飲むなら、これぐらいは買え」と言われればそれまでだけれど……。

こだるはっこう(小樽醗酵)
バリック(225リットル)やピエス(228リットル)等の小さな樽で醗酵させること。樽香がつき、酸化が進む。あるワイン学校のシャンパーニュの授業で「クリュグは小さい樽で醗酵させます」と先生が説明したところ、休み時間に受講生が来て嬉しそうに言ったそう。「先生、クリュグって北海道で作ってるんですね」。言われた先生は、最初、何のことか判らなかったが、話すうちに謎が解けた。その受講生は、小樽を「オタル」と読んだのだ。ウソみたいな実話。

コテコテ
樽香の強い白ワインを飲んだとき、ワイン通が反射的に言う言葉。「ウワー、このムルソー、コテコテだなぁ」のように使う。別の言い方として、「木工所で割り箸を齧りながら飲んでるみたい」というのもある。けなしているように聞こえるが、実は七分三分で誉めている。(関連項目:樽香、木工所)

ごほんのや(五本の矢)
毛利元就が「三本の矢」なら、世界的大富豪、ロスチャイルド家のシンボルは5本の矢。マークのどこかに5本の矢が描いてある。一代で大金持ちになったマイヤー・アムシェルには5人の息子がおり、長男をドイツ、次男はオーストリア、三男をイギリス、四男はイタリア、五男をフランスに送り、ヨーロッパ経済を完全制覇。5人の結束の固さを表すシンボルが5本の矢という訳。でも、三男の孫、ナサニエルが購入したムートンと、五男のジェームスが買ったラフィットは仲が悪い。

コメント (comment)
ワインをテイスティングしたときの感想。「肉付きの良い立派なボディ、すらっと伸びた脚。ノーズも素晴らしい。少し閉じてはにかんだところがあってウイウイしいねえ」のようにコメントされると、どう聞いても、女性を誉めているとしか思えない。(関連項目:表現法)

こゆうめいし(固有名詞)
他と識別するための名前。ワインの世界は銘柄や生産者名の評判がすべてなので超重要。でも、固有名詞を極端に嫌うNHKは、ピアノ・コンサートで鍵盤の上の「スタインウェイ」を黒テープで隠したり、インタビューの相手が「ディズニーランドへ行きたい」と言ったときアナウンサーが「郊外大型テーマパークですね」とフォローするなど苦労が絶えない。「ムートン」の場合は「毎年ラベルの絵が変わるメドック一級格付け」と言い換えるのだろうか?

コルク・オーク (Cork Oak)
コルク樫。スペインに多い。皮が3cmから7cmになり、剥がしてコルクにする。オークの一種なのでドングリを大量に落とす。世界最高の生ハムの一つ、ハモンハブーゴの原料になる黒ブタは、このドングリを一日に10キロ食べて育つ。コルクと生ハムの両方の素になるオークは、エラい樹だ。(関連項目:オーク、オークの木、樽香)

ゴルゴ13 (ゴルゴ・サーティーン)
1969年に連載を開始した長寿スナイパー漫画の人気主人公。2000年には450話を超えた。これまで、2557発を撃ち、1242億円を稼ぐ。70才を越えているが(東京都の都バス無料パスを持っている?)、サザエさん同様、年を取らない。第5次ワインブーム(1995年から)を反映してか、増刊55号(1998年12月)の標的は、シャトー・ラ・ミッション1978年。ボトルを木の弾丸で撃ち、澱を舞い上がらせ、「檻が立ったので飲めない……」と試飲会が中止になった。ワインはそこまでデリケートじゃないと思うが、まあ、イイか。(関連項目:第5次ワインブーム、デューク東郷)

語呂合わせ:その2・ボルドー篇
『辛口/軽口ワイン辞典』の「語呂合わせ」の続編。
・カロン・セギュール:火力は石油
・ピション・バロン:美女、波乱
・ラ・ミッション・オー・ブリオン:わぁ、ミッちゃん、大ドンブリ
・ヴィュー・シャトー・セルタン:民社党会談
・ラ・コンセイヤント:あっ、この栓抜いたの?
・シュヴァル・ブラン:しばらくブランク
・テルトル・ロトビュフ:手に取るとホッとする

語路合せ:その3・ブルゴーニュ篇
・シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ:しゃべるのは玄人で~す
・クロ・ド・ラ・ロッシュ:黒虎ダッシュ
・グラン・エシェゾー:鞍馬 海老蔵
・アロース・コルトン:苦労し、凝る肩
・コルトン・シャルルマーニュ:くるっと猿回し
・シャサーニュ・モンラシェ:釈迦に文殊達
・ペルナン・ベルジュレス:チョーさん(長嶋監督)、米寿です
・オークセイ・デュレス:青臭いドレス
・サヴィニ・レ・ボーヌ:ワサビに手料理

語呂合せ:その4・コート・デュ・ローヌ篇
・コート・ロティー:秘め事、露呈
・ジゴンダ:離婚だ
・シャトーヌフ・デュ・パプ:砂糖ぬいたパフェ
・サン・ジョセフ:三塁セーフ
・シャトー・グリエ:佐藤久利江

語呂合せ:その5・シャンパーニュ篇
・コント・ド・シャンパーニュ:今度のジャンパーおニュー
・ヴーヴ・クリコ:夫婦の売り子
・ルイ・ローデレール:つい、飲んで寝る
・ローラン・ペリエ:動乱のパリへ

語呂合せ:その6・イタリア篇
・キァンティ・クラッシコ:極めてイイ暮らし
・カルミニャーノ・ロッソ:春美ちゃん、どーぞ
・ヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ:手のシビレで持つと震えるの
・フランチャコルタ:ウーロン茶くれた
・ベルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ:ベル鳴ったので三時まえ
・アルバーナ・ディ・ロマーニャ:アルバイトで困った
・トルジャーノ・ロッソ・リゼルバ:徹ちゃん、細っそりしてるワ
・モンテファルコ・サグランティーノ:森で春の桜散るの
・ガッティナーラ:勝手ながら
・バルベラ・ダスティ:「ベルバラ」大好き
・ドルチェット・ダルバ:カルチェの達磨
・オルトレポ・パヴェーゼ:オスの猫は早いぜ
・バルポリチェッラ:なるほど知恵者
・ラクリマ・クリスティ:お車、乗り捨て
・ランブルスコ・ディ・ソルバーラ:乱舞する子に売るバラ

語呂合せ:その7・ドイツ篇
・トロッケンベーレンアウスレーゼ:とろけるプリンは明日の朝まで
・モーゼル・ザール・ルーバー:モデルはサルとロバ
・ラインヘッセン:ワインでっせ
・ヘシッシェ・ベルクストラーゼ:必死で歩くストリート
・アイテルスバッヒャー・カルトホイザーホーフベルク:アイツ居留守ばっかり。バレると灰皿放り投げる。
・シュロス・ライヒハルツハウゼン:首相、会費払えず騒然
・シュロス・フォルラーツ:酒量減る夏
・シュロス・ヨハニスベルガー:そろそろ、ご飯にすべーか?
・シャルツホフベルガー:シャツ、帽子、ベルト
・ホッホハイマー・ドムデヒャナイ:ちょっと一杯、飲んでかない?
・ベーレナー・ゾンネンウアー:入れないとは残念だ
・エルバッヒャー・マルコブルン:L(サイズ)ばっかり、丸子のブルマー
・ベルンカステラー・ドクトール:メロンにカステラ、よく太る
・ツェラー・シュバルツェ・カッツ:その面、しばらく貸せよ
・ピースポーター・ゴルトトロップヒェン:チーズのポタージュ、凍るとトロッとする
・グラッヒャー・ヒンメルライヒ:グラマーで品ある来賓
・クレファー・ナックト・アルシュ:帰れば、泣く子とアル中
・リープフラウミルヒ:スープで使うミルク

コンセイエ (Conseiller)
ワイン・ショップを対象に、1996年からSOPEXAが始めた認定試験。酒販経験が1年以上あれば受験できる。筆記と実地試験があり、筆記試験の問題は郵送される。ユニークなのは、実地試験。販売企画書を作り、それに従って6日以上の販売プロモーションをする。要は、フランス・ワインをたくさん仕入れて売れば認定してくれる。日本ソムリエ協会の旧ワイン・アドバイザーに似ているが、こっちが遥かに面倒。(関連項目:SOPEXA)

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