連載コラム

遠藤誠の「読むワイン」~利三郎文庫便り Vol.04 2017.10.13

「パリスの審判」を読む。

パリ対決と呼ばれるワイン業界での歴史的な事件、それは1976年5月24日に起きた。
パリのインターコンチネンタル・ホテルのパティオでスティーヴン・スパリュア主催によるフランスとアメリカのトップワインのブラインドによる対決が行われたのだった。
審査員はフランスを代表するワイン専門家たち。試飲による点数を集計すると驚くなかれ最高点を得たのは赤も白もアメリカワインだった。
そしてこの小さな出来事は、静かな波紋となり、ゆっくりゆっくりと世界に広がっていった。

この時代、神に選ばれた土地であるフランスでしか最高のワインは生まれないと、世界中の人々(ワイン業界の人間ですら!)が信じていた。
しかし、この対決はフランス以外でも最高のワインが造れる可能性のあることを知らしめた。
現在カリフォルニアを始めとしてニューワールド各地で素晴らしいワインが誕生するのは偶然ではない。パリ対決はニューワールドの醸造家たちに希望という光を与えたのだった。

この本をアカデミー・デュ・ヴァンが創立30周年記念だと言うので改めて読んでみた。前半は、パリ対決に登場したカリフォルニアワインを造る人々の苦悩と葛藤の軌跡だ。そして後半は一気にパリ対決へ。
著者はパリ対決を取材したタイム誌の記者(当時)、ジョージ・M・テイバー。
現場の生々しいやりとりには迫力がある。

ギリシア神話で「パリスの審判」はトロイ戦争を引き起こすことになるのだが、現代の「パリスの審判」はフランスワインとニューワールドの熾烈な争いの発端となったのだ。

題名:パリスの審判
著者:ジョージ・M・テイバー
出版社:日経BP社




「アウトローのワイン論」を読む。

勝山氏は日本のワインバーの走りでもある六本木「祥瑞」のオーナー。「自然派ワイン」の伝道師的な存在と祭り上げられることの多い勝山氏のワインに対する哲学が魅力ある語り口で綴られる。

前半は彼のワイン遍歴を描き、後半ではナチュラルなワインとは何かを訴える。そして言葉だけが一人歩きし、無添加などという「記号」だけで飲む輩を嘆き、酸化防止剤無添加、無農薬、有機でも不味かったら意味がないと言い切る。
大事なのは美味しい(勝山氏は「きれいな」という表現を使っている)こと。今更ながらと思われるかもしれないが最も大事なことだろう。
自然派、ヴァン・ナテュールとは何かを見つめ直したい人におすすめの一冊。

ところで、私は思うに所謂「自然派」のワインは3種類に分類されると思う。
1)品質追及型、2)理想追及型、3)利益追及型だ。

1)品質追及型は、さらに美味しいワインを造ろうと模索追及していたらヴァン・ナテュールに行き着いたというもの。
しっかりとした技術を持ち経験も豊富。そして努力は厭わない。
文句なしに美味しい。世界のトップワイナリーに多い。

2)夢想追及型は、「自然」が素晴らしいという夢がだけ原動力。
メディアには受けが良い。技術も経験も拙いことが多く、良い年はなんとかなるが、天候が悪い年などのアクシデントに対応しきれず、ヴィンテージによるブレが顕著。まずくても自然の味だからと開き直る。

3)利益追及型は、有機、無添加などとラベルに大きく書けば売れるので自然派を装っている商業主義的生産者。
それを「飲んでも頭が痛くならないから」と勘違いして買ってしまう方も問題だ。ワインは面白くないし、不味いか美味しくないかのどちらか。

番外)天然自然派型。テロワールがブドウ栽培にあまりにも適しているため、そもそも農薬など不要な土地の生産者。
安くても結構イケるワインが多い。

願わくば夢想追及型の方々がもっともっと技術と経験を身につけられますように。

題名:アウトローのワイン論
著者:勝山 晋作
出版社:光文社

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