連載コラム

浅妻千映子の最新レストラン事情 Vol.16 2019_04_05

世界最先端の美味が東京で

壮大なプロジェクトが進行中である。
最初に話を聞いたとき、ビックリした。こんなに贅沢なことが実現可能なんて!

「COOK JAPAN PROJECT」。
実は今日からスタートする。なので、もしかしてもうご存知で、予約を入れているというツワモノもいるかもしれない。
世界各国から、10か月間、毎月3人のスターシェフが来日し、それぞれのシェフが数日間だけのレストランを東京で開くのだ。「COOK JAPAN」というからには、そう、日本の食材を使って。
繰り返すが、世界各国から合計30人のスターシェフである。これが色々な意味で、どれだけ凄いプロジェクトか、想像できるだろうか。

会場となるのは、コレド日本橋アネックスの、元「レストラン サンパウ」があった場所。ちなみにレストラン サンパウはスペインの3つ星「サンパウ」の東京店で、こちらは平河町にできた、ザ・キタノホテル東京内に移転した。
話が逸れるが、サンパウは、私自身が唯一2度訪れたことのある海外3つ星レストランなので、個人的思い入れがある。ショートカットの女性シェフ、カルメ氏がとても魅力的なのだ。

さて、COOK JAPAN PROJECTに話を戻そう。
今日から3日間だけ料理を披露するオープニングシェフは、なんとパリとクーシュヴェル(スキーなどができるフランス有数の高級リゾート地)で2店のミシュラン3つ星を持つシェフ、ヤニック・アレノ氏。世界5カ国で16ものレストランを持っているから(しかし日本にはない)、名前を知っている人も多いだろう。世界的スーパースターシェフである。

4月の中旬には、パリの一つ星「レストラン・アントワーヌ」からティエボー・ソンバルディエシェフがやってくる。魚料理に定評のあるシェフで、今回、初来日だと聞いた。間違いなく日本の魚に刺激を受けることだろう。本場の江戸前鮨なんかも楽しみにしているに違いない。出会った日本の魚に興奮し、とびきりの新しい料理を生み出すのでは……なんて勝手な想像を膨らませていくと、気が早くもこちらまで興奮してしまう。

4月の下旬は、オランダの3つ星シェフ、ヤコブ・ヤン・ボエルマ氏だ。オランダシェフの最高タイトルである「SVH Master Chef」を獲得している実力派とのこと。
あまり知られていないが、オランダは、九州ほどの国土にミシュランの星付きレストランが100店ほど存在するという美食の国である。今、その最先端で何が起こっているのか、このシェフの料理を食べれば見えてくるかもしれない。

この先も、すでに20人ほどのシェフが決まっていて、例えば、ついこの間、発表された「アジアのベストレストラン50」で一位に輝いたシンガポールの「オデット」のシェフも7月に予定されている。美食家たちの注目エリア、南米のペルーやチリからやってくるシェフもいる。
気鋭のシェフが目白押しで、いやいや、本当にすごいプロジェクトだと心底思うのである。

レストラン サンパウの跡地でやるのだから、設備に文句はないはずだ。どのシェフも、日本の食材を使って存分に料理を楽しみ、個性あるお皿を披露してくれることだろう。
世界の最先端が東京にいながらにして味わえる、貴重な10ヶ月間である。

■COOK JAPAN PROJECT: https://cookjapanproject.com

■レストラン サンパウ: https://www.santpau.jp