連載コラム

連載コラム:佐藤くらら陽子のブルゴーニュ日記 Vol.05 2016_05_18

ブルゴーニュより、こんにちは、佐藤くらら陽子です。

5月に入ったものの、お天気が安定しないブルゴーニュのボーヌです。
窓の外の天気が5分ごとに雷・雨・晴れ・雹・雷・雨・晴れ・雨と変わり、雷が鳴るたびに耳をふさぐ私は、クラスメートにからかわれています。(畑にはこの天候の変化は、全く笑い事ではないです。)

皆様もすでにご存知かと思いますが、4月28-29日に「春の遅霜」がブルゴーニュを襲いました。4月の初旬は気候も良く、ブドウの発芽も順調に進み、毎日畑に出る度にブドウの樹の成長の様子が楽しみで、成長の早さに驚き、生命力の強さを感じていた矢先の出来事でした。
マイナス2度から4度程に気温が下がり、霜が降りました。早朝の畑はもちろんの事、歩道も真白。
これから展葉に向かうブドウの樹液が凍り、芽や葉への生命線がシャットダウンされてしまいました。生命線を絶たれたことにより、芽や小さな葉はまるで焦げたかのように灰色に干からびた状態になってしまいました。
シャブリや、シャンパーニュ地方のブドウ畑は、火を焚いて回避した所もあるようでしたが、私の研修先のサヴィニィ・レ・ボーヌの村の畑は、概ね8割近くの被害を受けました。どのドメーヌも畑で擦れ違いに挨拶をするものの、苦笑いです。「お宅の畑はどう?」、「。。。」、「頑張って!」「お宅もね!」という具合で、どのドメーヌも心配を隠せない様子です。
5月の研修では通常、「エパンプラージュ」、「エブルジョナージュ」という、芽掻き(余計な芽や葉を落とす作業)が主な作業となります。
成長の早いブドウの樹の「今!」という時期を見定め、一気に芽掻きを行う作業です。これは季節労働者を雇うほど人手の必要な大作業となり、大忙しとなる予定でした。
本来ならば、葉が伸び、畑全体が緑で覆いつくされ、大勢でのにぎやかな作業となります。
ですが、畑はその芽も葉もない、灰色の状態です。そのため、畑での作業は、3週間ほどお休み。第2の芽が出てくるまで、様子見となりました。
これは、約20年振りの被害とのこと。学校の先生、ドメーヌの人達も「この畑の状態は、初めて見た」と言います。私自身も収穫後から冬の剪定を通し、ブドウの樹のお世話をしていたので、畑を目の前に胸が痛くなり、切なくなりました。

しかし、ドメーヌの当主の千砂さんは前向きです。「これから先どうなるか見てみないとわからないでしょう!」と言います。その言葉に勇気づけられ、私も従業員もこの先の畑の状態に期待を持っています。

そのような中、5月の第1週目の週末、サヴィニィ・レ・ボーヌ村の「ビアンヴニュ・サヴィニィ」という蔵開放の行事がありました。
サヴィニィ・レ・ボーヌ村の約20のドメーヌが、一般のお客さん向けに蔵のワインを振る舞ってくれるというお祭りのようなイベントです。
お客さんは4ユーロで、村の中心となる広場でグラスを買い、地図を受け取ります。グラスさえあれば、どこのドメーヌに行っても無料で試飲ができます。
この日ばかりは、村あげてのお祭りです。普段は人もまばら、小さなスーパー1つ、パン屋さん2軒という小さな村に、観光用のトロッコ電車、小さな移動遊園地、メリーゴーランドが設置され、屋台のお菓子に子供たちは大喜び。もちろん、大人の楽しみはワインです!
各ドメーヌは、レジオナル(地方名つまりブルゴーニュ)、村名(サヴィニィ・レ・ボーヌ)、1級、やクレマンなど、ブルゴーニュ、又はサヴィニーのワインを用意します。
シモン・ビーズも千砂さんの旦那・パトリックの姉妹がパリや地方から大集合。家族揃ってイベントを盛り上げました。(因みに、姉妹皆さんパトリックを含めみんなそっくりでした!)
私は試飲ブースに立ち、ワインの説明をしながらお客さんにワインをお勧めする係でした。
ビーズの奥さんが日本人というのを知っている方々に、何度も千砂さんと間違えられ、冷汗をかきながらでしたが、1日100人以上のお客様を相手に、サービスを行いました。
自分の働いている畑のワインを説明するのは、熱が入ります!というのも、一般のお客様の評価のコメントのレベルが高いのです。(汗)会話の中に、沢山の専門用語が出てくるので、私も必死になってワインの特徴、土壌などを説明しました。
もちろん、20件近くのドメーヌを渡り歩き、千鳥足になりながら訪問してくださるお客様も多く、、明るく、陽気に大声で冗談交じりの会話もありました。さすがに、ワインの土地の人らしいな。。と思いつつ、酔っぱらいは万国共通と改めて認識しました!
又、驚く事に沢山の日本人のお客様がいらっしゃいました。 千砂さんのパワーによるところですが、ドメーヌ・フルーロ・ラローズの久美子さんと二コラの夫婦を始め、ブルゴーニュのレストランのオーナー、醸造研修生、フランス料理の研修生、ソムリエ、ワインインポーターなど、まるで日本人交流会。つかの間の日本語でのワイン談義の場となりました。
大盛況の中、大勢のお客さんにワインを振る舞い、ビーズのワインの美味しさを、伝えられたのではないかと思いました。

また、来週から畑に出ますので、今後のブルゴーニュの畑の状態を報告したいと思います。

ではまた!