連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.64 2016.10.13

フランスのワイン祭りとボルドーの評価

 春の悪天候がしばしば悲観的ニュースとなって悩ませていましたが、最新の報告では、2016年は品質がけっこうよいもの("de grande qualité")となるようです。ボルドー、アルザス、ボジョレー、ジュラは危地を脱し、昨年以上の量も確保できそうです。ただ、シャンパーニュ、ロワール、ブルゴーニュ、シャラント、ラングドック=ルーションでは1993年並の低収穫量。シャブリに関しては、かなり被害がでているとのニュースも入ってきました。4月の凍結、5月の雹、8月末には過剰な日光で「干し葡萄化(grillre)」の三重苦で、9月末時点で、まだ未収穫の畑を残している栽培家も。5453haのシャブリの半分がかなりの被害をうけ、おまけに害虫も発生し、収穫にかなりの困難を覚える栽培家もあり、結局の所、例年の半分の収穫になるようです。
 収穫量減のせいでもないでしょうが、ピレネーでは葡萄泥棒が出現。Montgaillard-Guillé家のBernadette Guilléが所有する ドメーヌSalses-le-Château (Pyrénées-Orientales).で12トンもの、収穫間際の葡萄が盗難にあいました。急斜面にある葡萄畑なので、手摘み!による盗難で、プロの仕業とか、いやはやすごい。
 さて、毎年秋は、夏のバカンスを挽回せんと、というばかりにRVF誌は分厚くなり、フランス全土のワイン祭り特集になります。パリをはじめ、各地のスーパー、カルフールやらモノプリやら日本でもおなじみのところで催されるワイン祭りの情報満載です。
 RVF誌編集部によって、白、赤、15ユーロ以下、あるいはそれ以上のワイン、シャンパーニュ、甘口ワイン、スピリット、外国産ワインが、それおぞれ10本ずつ推薦され、また各スーパーが自前で推薦のワインも掲載されています。当たり前ですが、日常的にワインを飲むフランス人にとって、普段は10ユーロ以下、せいぜい、15ユーロというのが普通です。そのため同じ値段設定がこの雑誌でも採用されています。ちなみに15ユーロ以下、30ユーロ以下という限定的ワインガイドブックもあります。
 この雑誌でも、ディケム1996年の240ユーロは別にして、シャトー・ポンテ・カネ(2012)の75ユーロが最高で、実際の購買を配慮したセレクションです。それにしてもシャトー・タルボ(2012)の34ユーロ、ルイ・ジャドー、ボーヌ・ブレサンド(2013)が35ユーロ、シャンパーニュ、フルーリー(NM)22ユーロ、ニコラ・フュエット(2008)が19ユーロというのをみると、かなりうらやましい。ちなみに外国産ワインでは、イタリア・ワイン(Passito di Pantelleria, Sangue d’Oro balnc 2014)が、高評価で26ユーロです。往年の007ファンご存知のキャロル・ブーケ(ロジャー・ムーア時代の"Four Your Eyes Only" )のドメーヌです。
 このワイン祭り特集の他に、2013年と2014年のボルドーの検証記事もシャトー別ガイド小冊子付きで、20ページにわたって特集されています。
 見出しは「2013年は飲み始めなさい、絹のような2014年は待ちなさい」です。そして2013年はプリムール時点よりもかなりよくなっており、一方2014年は驚くべきポテンシャルをもち、クラシックなエスプリにあふれている、と。ボディがあり、熟成のポテンシャルがあり、しかも値段もそれなりにリーズナブルなら、2014年を。偉大な2010年に匹敵までは言わなくとも、2012年よりは優れている。メドックとペサック・レオニャンが品良く、フレッシュで、ボディも十分。右岸のメルローは、豊かさは欠いているものの、質はよく、カベルネ・フランとのアッサンブラージュにも適している。2013年は天候にめぐまれなかったが、おそれていたようなものではなく、それなりのでき。メドックの作り手の一人は、「20年前なら、こんな天気ではおそらくワイン造りなどできなかった」と言っていますから、葡萄栽培、ワイン造り、ともにテクニカルな進歩があったのでしょう。それでも、熟成させるタイプというわけではなく、やはり早めに飲むのがいい。具体的には平均して5年以内だそうです。なんとも早飲みです。それに対して、2014年も、そしてとくに2015年は、2013年よりも保持しておくべきだが、一般にはそれほど評価は高くなく、値段も投機目的で釣り上げられてはおらず、今回のワイン祭りでの購入に適している、とのことです。
 ここまでは、ボルドーの赤の評価で、白(辛口)については、2013年は、雨の前に収穫され、テンションを保っている。2014年はさらにボディがあるが、ともにもう飲んでもかまわない、という評価です。一方、甘口の方に関しては、2013年は複雑な味わいだが、ばらつきがある。2014年はクラシックで心地よい果物の香りを伴っている、ということです。たしかに、この一般的評価に続くRVF誌の記事では、白ワインの得点が赤に比べて総体的に高くなっています。2013年はソーテルヌは意外にいい評価で値段もお手頃、シャトー・ファルグなどは18.5点で18.5ユーロという値段。また2014年のソーテルヌはたしかに値段は上がりますが、軒並み18点以上です。2014年はソーテルヌ購入のあたり年かもしれません。同銘柄を各年買うのもいいでしょうね。
 辛口に関しては、2013年のスミス・オー・ラフィットが18点ですが、83ユーロといささか高い。17点のドメーヌ・ド・シュヴァリエが16.5ユーロでお買い得そうです。但し、2014年は84ユーロに跳ね上がります。RVF誌では、樽臭のない純粋でクリスタルなあじわいは、アペラシオンの中でも際立っているとの評価です。その他、ラトゥール・マルチヤック、マラルティック・ラグラヴィエール、カルボニューなどは、評価も高く、私の好きな白ですが、2013年でも28-50ユーロと上がりましたね。これらのシャトーは、赤ワインも産出していますが、それも15点以上の評価です。
 日本ではペサック・レオニャンはオー・ブリオンを除いてあまり人気がありません。オー・ブリオンさえ、マルゴーやラフィット、ラトゥールに後塵を拝しているくらいです。まして白ワインはレストランでもお目にかかれないこともあります。残念なことですが。その分、日本ではいささか手に入りにくい時もありますが、コスパのいいワインになっています。
 ちなみにボルドー全体で最高得点は、2014年に関しては、赤はオーソンヌの19点。出来のいいソーテルヌでは、シャトー・クーテ、シャトー・ファルグが20点。2013年では、オーゾンヌ、ラフルール、ペトリュスが18点、ソーテルヌではディケムが19点となっています。
 最後に評価のまとめを引用します。
 2014年。ワインはよく熟成する。カーヴで保管しなさい。サンテ・ミリオンは魅力的、ポムロールはクラシック、メドックはエレガント、ペサックは凝縮し、ソーテルヌは活き活きとしておる。最良のものは数年の間に驚くべき熟成をするだろう。
 2013年は10年のうちに飲むべし。複雑な年で、ワインは密度と量感には欠ける。中には魅力的なクリュもあるが、保存しておくべきワインは稀である。

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