連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.40 2014.08.09

今年の収穫など

 夏真っ盛りです。バカンスに入ったRevue du vin de France誌は、ぺらぺらの薄さです。ですので、ネット記事からいくつかを紹介します。

 まずは、ブドウの収穫も迫ってきているので、今年の収穫から。
 フランス農業相の発表によると、2014年の収穫のブドウの収穫は4600百万ヘクトリットル強の見込みで、不作だった2013年に比べて、9.5%の増収となりました。2012年に対しても増加し、ここ5年で平均的なものです。
 2013年は、6月段階で同じく4600百万6千ヘクトリットル強を予想していたのですが、結果的には、大幅に下がり、4200百万3千7百リットルになった経緯があります。
 今年も、7月21日段階では、10%増の予想でしたが、その後の悪天候で減りました。去年から続く雹と湿気の多さという天候被害は、あいかわらず今年もブルゴーニュやボルドーで発生しています。
 さらに、7月6日、ラングドック=ルーションのオード県を雹がおそい、オード県の農業相 Philippe Vergnesによると 12 000 から 15 000 ha、オードの葡萄畑の21%、とくにAOC Minervoisと Malepère が雹の被害にあい、Malepère は 50 ~100%、Minervois は 80 ~ 100%もダメージで、オード県でのワイン生産が25%減の見込みとなると発表されています。7月21日の段階で、フランス全体の雹による被害は、2万8000ha に及ぶとされていましたが、その半分がラングドック=ルーションに集中しています。収穫量は、当然低下する見込みです。昨年は、フランス全体が低調ななか、ラングドック=ルーションは出来映えもよかったのですが・・・。最終的にはどうなるでしょう。
 一方、ボルドーは去年の被害を回復して、昨年比+50%、平年比+7%の上昇といううれしいニュースも入ってきています。
 では、地区ごとの評価です。
 シャンパーニュ地方。7月半ばまで、ブドウの状態はよく、カビなどが発生しないように純分監視されている。熟成状態も平年並み、ということです。
 ブルゴーニュとボジョレーでは、平年より十日ほど早い成長で、ブドウの状態はとてもよく保持されているが、ボジョレーでは、カビが発生する兆候が見られている。当面、生産量の可能性は上がる見込みだが、コート・ドールとソーヌ・ロワールは6月28日の雹のため、生産減の可能性も。被害はさまざまだが、6000haに及んでいる。
 アルザスでは、春に湿気に悩まされたものの、7月当初の見込みでは、それは回復し、ブドウの状態は良好。
 サヴォワでは、開花は十分で、ここ5年の平均的な生産量になる見込み。
 ジュラ地方では、もう収穫できる状態で、平年並みの出来になりそう。
 ロワールでは、開花が早く、ばらつきもなく季候が良かったせいで、7月半ばに十分な熟成状態、ロワール中部でのべト病も十分な監視の下にある。2013年比7%増で、2009年から2013年の平均値に近い見込み。
 ボルドーの北に位置するシャラントCharente地域では、開花期の6月8日にコニャックの畑7500haを雹がおそいましたが、幸いにも、その他の地域では影響はなく、状態は好ましく、結実不良はわずか。ユニ・ブランは、収穫までもう少しの段階。ブドウの健康状態もいいが、うどん粉病の危険な兆候も現れ始めている。生産量の可能性は今のところ良好。
 ボルドーでは、2013年とは逆に、収穫機ではなく、開花期に雹におそわれた。ブドウの成熟もよく、健康状態も良好。メドックの1500haに及ぶ雹の被害にもかかわらず、きわめて生産量が低かった2013年に比べて、50%以上の増収の可能性が見込まれている。
 南西地域で、雹に見舞われたのは、とくにミディ=ピレネーで、ここでは生産量は落ちるが、それでも2013年に比較すると回復し、全体としては、平年近くにまで達する可能性がある。
 そう言えば、最近、RVF誌では、南西地方を取り上げることが多くなってきました。フランスでもあまり知られていなく、例えばガイヤックでほとんど、絶えかけているモザック種やデュラス種など古い14種のセパージュを育てているDomaine Plageolesにインタビューしたり、カオールの独自の地域分けとカテゴリー付けをしたりしています。私の講座でもその話をしましたが、ワインそのものがなかなか手に入らないし、やはりピンとこないようです。個人的にはアジャン、コンクなどロマネスク建築とコンポステラ巡礼街道などがあって、親しみ深い地域なのですが・・・。
 
 さて昨年良かった、ラングドック=ルーションでは、春先からの湿気の多さが災いし、しかも状態は均一ではない。ガールやピレネー東部では平年並みだが、この地域の主要栽培地であるオードとエローでは決定的ともいえる損害をうけており(先に挙げた被害によるものです。)ブドウ全体が開花期に雹にあった。早熟しているものは、週末にも(7月末)成熟に達しそう。雹の被害は、さまざまな地域で、結局のところ、オード県では12 800haで、当然収穫量減です。
 その他のローヌとプロヴァンスでは雹の被害を免れ、状態も良いが成熟はまだ。ヴァールVarやヴォークリューズVaucluse夏の初めに風雨にさらされ、ベト病やうどん粉病が、ローヌ北部にはハイイロカビが発生。ヴァール、ヴッシュ・デュ・ローヌles Bouches-du-Rhône 、アルデシュArdècheでの局所的な雹の被害はあったが、2013年に比較して生産は伸び、平年並み。
 最後にコルシカ。ブドウ状態は良く、グルナシュやメルロの生育がよい。
 と、いうことで生産量は上がり、一息ですが、ラングドック=ルーションの被害も気になりますし、その他ボルドーやブルゴーニュでも、フランスのテレビのニュースでは、昨年からの被害続きで、資金繰りもまわらず、廃業する農家も出るのではないか、というのが心配です。最近、ボルドーをLVMHグループが席巻していますが、ブドウ栽培とワイン作りが寡占状態にならず、いつまでもAOCボルドーやボルドー・シューペリウールクラスでの小規模農家が残って、伝統がつながることを願っています。
 もう一つ話題。
 以前、このコラムでも取り上げましたが、インドネシア人のルディ・クーニワン Rudy Kurniawanの偽ワイン事件の判決が7月24日に出る予定でしたが、The Dsinks Business誌の8月8日版によると、延期されたようです。昨年12月に判決が出ていて、上訴したようですが、これで決定はまだ先になります。その偽ワインづくりに対するスマートフォンやタブレットを使った対策もあると、RVFでは紹介しています。
 最後に私的な話題で恐縮ですが、もう一つ。7月末に、1990年のシャンパーニュを飲む会をしました。たまたまよく知っているレストランで、ブルーノ・パイヤールの90が手に入ったと聞いたので、それでは、とギー・ミシュエルとアンドレ・ボーフォールの90を参加させました。結果は・・・。かなり駄目でした。ギー・ミシュエルなどは泡が抜け、マデラ化寸前とアンドレ・ボーフォールも、う~んという状態。ブルーノ・パイヤールもばっちり熟成、というのとはほど遠かった。沈没船から引き上げた1907年のエイドシック・モノポールの方がまだ泡があったような。
 実は、開けてびっくりですが、コルクが留めの針金の半分から三分の二までしかありませんでした。これなら、と変に納得。結局、いまでこそレコルタン・マニピュランなどともてはやしていますが、当時はまだ弱小生産者、しかも資金繰りが潤沢ではなかったし、そもそも14年もたって飲むことは想定していなかったのでは?という、結論にみんなで達しました。今度はドンペリとロデレール90で再挑戦!

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