連載コラム

連載コラム:堀晶代の知っておきたいブルゴーニュ&シャンパーニュのエッジなお話しVol.04 2017.12.01

〜発見の連続!シャンパーニュ・ウィーク〜

 過去最高の売り上げを記録したオスピス・ド・ボーヌ2017も終わり、次にフランスを賑わすのは来年以降に各産地が行う大規模な試飲会だ。2月初旬には「サロン・デ・ヴィン・ド・ロワール」、3月には「グラン・ジュール・ド・ブルゴーニュ」(偶数年開催)や「デクーヴェルト・アン・ヴァレ・ド・ローヌ」(奇数年開催)、そして3月末から4月初旬の「ボルドー・プリムール」へと続く。

だがここへ、数年前から「ル・プランタン・デ・シャンパーニュ」、通称シャンパーニュ・ウィークが加わった。世界的に著名な産地で大規模な試飲会がなかったことが不思議ではあるが、考えてみればシャンパーニュはひとつのアペラシオンである。つまり地方や村ごとの紹介は少ない。実際にシャンパーニュ・ウィークの発端も、ベレッシュ・エ・フィス(リュード村)のラファエル・ベレッシュと、ラエルト・フレール(シャヴォ村)のオーレリアン・ラエルトが、新進気鋭のRM生産者に声をかけ、2009年に「テール・エ・ヴァン・ド・シャンパーニュ」を結成したことに遡る。グループ名には、「シャンパーニュには多彩な土壌(テール、Terres)があり、異なる土壌から個性豊かなワイン(Vins)が生まれる」という思いが込められている。ラファエルは「アッサンブラージュのイメージが強いシャンパーニュだが、ほかのワイン産地と同様にテロワールやヴィンテージの特徴があることを知ってほしかった」と語る。

テール・エ・ヴァン・ド・シャンパーニュの試飲会がユニークだったのは、できあがったシャンパーニュだけではなく、前年度に仕込んだヴァン・クレール(ベースワイン)も提供したこと。日頃からブラインドテイスティングはするものの、仕事の上では先入観を持たずに品質を判断するという意味合いが強い。だがワイン会などでのブラインドテイスティングは、ゲームの要素もある。品種、産地(ひいては土壌)、ヴィンテージ、造り手などを分析していく。その中でアッサンブラージュを施しているシャンパーニュは分かり辛い。しかし品種や土壌の説明を受けながら、100本ノックのようにヴァン・クレールの試飲を続けていくと、とくに面白いことは、土壌のキャラクターに対するイメージが沸いてくることだ。

今日の科学をもってしても、土壌とワインの風味の相関性を完璧に立証するには至っていない。だが人は何らかの要素を感知しているのだと思われる。

またヴァン・クレールを試飲させるのは自信の表れでもある。泡をまとっていない、いわばスッピンの未完成のワインでも、誤魔化しはしていないという誇り。実際にヴァン・クレールは個性豊かで、逆にこの個性をひとつのシャンパーニュとしてまとめあげる技量は凄いと感嘆する。

このヴァン・クレールを提供するスタイルは、おもにソムリエたちに反響を呼んだ。現在ではシャンパーニュ・ウィークの公式カレンダーには20を超えるグループが名を連ねるが、ヴァン・クレールを試飲させるグループは他にもある。オフ会も見逃せない。

心配なのは、ただ2点。ひとつめは前回のメルマガでも書いたが、今後は地球温暖化により4月末の霜害は増えていくだろうということ。その点、シャンパーニュ・ウィークの開催時期は、だいたい4月第3週日曜日スタートなのだ。大々的な試飲会は、畑の心配がないからこそ成立するもの。日程を変えるべきかもしれない。

個人的には、やはりシャンパーニュはフランス北限のワイン産地だけあり、とくにできたてホヤホヤもヴァン・クレールは酸が半端なく強い。3日目くらいから歯に染みる。シャンパーニュに限らず、日程が長引く大規模試飲会では、歯磨きの「シュミテクト やさしくホワイトニング」が必須アイテムである。。。