連載コラム

連載コラム:堀晶代の知っておきたいブルゴーニュ&シャンパーニュのエッジなお話し Vol.12 2018.11.23

「8」のジンクスは健在!量・質ともに豊作を喜ぶシャンパーニュ

どのワイン産地にもジンクスというものがある。シャンパーニュならそのひとつが、「8」で終わるヴィンテージは良作年というものだ。たしかに過去をふり返ると2008年や1998年は、ミレジメを仕込んだメゾンが多い。では2018年はどうだったのか?

近年、世界中で異常気象が心配される。四季のある国でも穏やかな春夏秋冬の移ろいがない年が続く。フランスも然りだが、日本とフランスを往復するようになりつくづく感じるのは、フランスの春夏秋冬は、もともと日本よりも極端だ。日本にある「衣替え」という習慣がないのも、この春夏秋冬の極端さかもしれず、フランス人が日本人とは違う独特のたくましさを持っているのも、厳しい四季を生き抜いてきたことが理由のひとつかもしれない。その点では「8のジンクスは守られた。想定内の四季だった」という18年も、かなり波乱に満ちている。

ブドウ畑の一年は、収穫が終わった晩秋から始まる。

まずは17年から18年にかけての冬は、1965年以来の記録的な多雨。例年なら霜で凍えている土は、区画によっては雨でぬかるみ、冬にすべき耕作がとても困難となった。やっと本格的な冬が訪れたのは、2月になってからである。冬がずれこんだために春の到来も遅く、

発芽はシャルドネが4月15日、ピノ・ノワールが17日、ムニエが18日と、通常より約1週間遅かった。

その4月には再び雨。しかも強い風や雹を伴う嵐だったので、観光でも人気の風光明媚なヴィトリアの丘の115ヘクタールが、壊滅的なダメージを受けた。そして5月に入ると寒の戻り。局所的に晩霜被害がみられた。だが数日後には一気に夏のような陽気になり、気温は30℃まで急上昇する。その後は雹を伴う雷雨が3度にわたり、再びヴィトリアの丘や、コート・デ・バール、ヴァレ・ド・ラ・マルヌを襲い、あらたに878ヘクタールが大打撃を受けた。シャンパーニュ全体で見れば17年の霜害のような広域の被害ではないが、オーブ県にとっては、昨年の霜害に続き2年連続の自然災害である。しかし嵐や雷雨以外の日の日照は強く、開花のピークは過去10年の平均より10日間ほど早かった。晩冬から初夏のジェットコースターのような天候推移による発芽から開花までの期間の短さは、18年の特徴だ。

第11回のコラムでも書いたが、ブドウ樹の本能として、前年に霜害などで極端に収穫量が落ちた場合、翌年にはブドウを大量にならすという性質がある。17年に霜害でブドウを失ったシャンパーニュも、7月以降が乾燥した猛暑となると、樹にたわわに実ったブドウはグングンと成長した。7月に畑を廻って見た時も、その房の量と元気さにはビックリしたものである。そのパワーは8月20日から始まった収穫期間中も勢いが落ちることなく、栽培農家やメゾンはしっかりと量を確保できた。かつ好天により、ブドウは健全で糖度も高い。

さて、では量と質がうまく比例することはあるのだろうか?シャンパーニュ委員会が規定した18年のヘクタールあたりの最大収量は10800キロだが、実際に収穫された量は16000から18000キロとされている。これには将来のリザーヴワインとしての枠があることは以前のコラムでも少し触れたが、おそらく今年度、シャンパーニュはフランスでもっともヘクタールあたりの収量が高い産地である。

この大豊作に、優秀なメゾンはどのように対応したのか?規定された最大収量と実際の収穫量の隔たりを、醸造ではどのように組み込むのか?これについては、いずれまた紹介していきたいと思う。

ともあれシャンパーニュ委員会から送って頂いた18年の資料や、生産者やワイン関係者の声からは、18年は量・質が揃った喜ばしいヴィンテージであることが伝わってくる。だが質に関して言えば、「健全さと糖度の高さ」以外に「味わい」というものがある。そこにはやはり、天の恵みと言ってもある程度の収量のコントロールが必要であり、「8のジンクスを最大限に生かしたのは、どういったメゾンなのか?」を知るには、まだまだ時間がかかりそうだ。

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