連載コラム

遠藤利三郎の「読むワイン」~利三郎文庫便り Vol.12 2018.09.14

「シャトー ラグランジュ物語」を読む。

シャトー・ラグランジュ。
言わずと知れたメドック3級の由緒あるシャトーだが
1980年代前半、ラグランジュの評価は最低だった。
そしてサントリーが1986年にオーナーになり
徹底的な改善に取り組んだ。
その結果、ラグランジュの品質は見事に蘇り、
「日本の企業が沈んだ船を再び海の上に浮かべた」と
絶賛されたのだった。

この本はサントリーがラグランジュのオーナーとなって
30周年を記念して出版されたもの。
日本企業がメドックの格付けシャトーの
オーナー(ヨーロッパ人以外で初めて!)になるまでの経緯が
人間を中心に据えてドラマのように展開する。

まだ日本でワインがほとんど飲まれていない時代、
フランス人が日本人をほとんど知らない時代。
その中でメドックの人間関係に中に溶け込もうとする地道な努力、
元スペイン人オーナーとの遅々として進まぬ話し合い、
フランス政府高級官僚との一瞬も気の抜けぬ交渉。
言葉では表現しつくせない苦労が伝わる。

題名:シャトー ラグランジュ物語
著者:「シャトー ラグランジュ物語」制作プロジェクト
出版社:新潮社




「ボーヌで死ぬということ」を読む。

ブルゴーニュ・ファンなら知らぬ者はいないオスピス・ド・ボーヌ。
このワインが栄光の三日間のメインイベントである
チャリティー・オークションで競売に掛けられることは有名な話だ。
オスピス・ド・ボーヌは本来は施療院であり、
その運営はワインの売上で賄われている。
この本は銘酒を産み出すオスピス・ド・ボーヌを巡る随筆。

オテル・デューは、ブルゴーニュ公国の財務卿であった
ニコラ・ロランが1443年に設立した。
当時、なぜこの施療院が必要だったのか。
かつて院内にある「貧者たちの間」の礼拝堂に置かれていた
ファン・デル・ウェイデンの「最後の審判」を読み解いたのち、
筆者は宗教、戦争、伝染病など当時の世相から、静かに深く語る。
秋の静かな夜に、ブルゴーニュグラスを傾けながら
中世の思索にゆったりと揺蕩うのにふさわしい書だ。

題名:ボーヌで死ぬということ
著者:田辺保
出版社:みすず書房


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