連載コラム

浅妻千映子の最新レストラン事情 Vol.03 2017.08.04

中国料理の当たり年

不思議なことだが、新しくオープンするレストランを見ていると、何かのジャンルで「当たり年」というのがある。「ブーム」とはちょっとニュアンスが異なるのだが、それはさておき、昨年から今年は中国料理の当たり年だ。新しくオープンする店も多ければ、そのレベルの高さに驚くばかり。

そもそもこの20年を振り返ると、中国料理をとりまくもろもろの変化には目を見張るものがある。例えば15年前、いや10年前でも、デートでフレンチやイタリアンに行くことがあっても、中国料理に行くことはなかなかなかったのではないだろうか。フランスやイタリアに修業に行く料理人はたくさんいたが、中国に修業に行く料理人というのは聞いたことも考えたこともなかったのではないか。もちろん、ワインとは無縁。深夜営業の店などもない。カウンターの店もない。
ごくごく一部の例外はあったが、一般的に中国料理はそんな位置づけだったし、実際にそうだったと思う。

 いまや、そのすべては鮮やかに覆されている。

15年前、中国料理にワインを合わせるというセンセーショナルなコンセプトでオープンした西麻布の「エピセ」だとか、外資系ホテルの台頭によってホテル中国料理の地図が変わったり、東京の中国料理20年の歩みについて、私なりに思うところや系図?を語りだすときりがないから割愛するとして、さて現在だ。

なんといっても、いま一番話題の店であると同時に、訪れて、心底美味しいと思ったのは、南麻布に2月にできた「茶禅華」。15品1万8000円というコース一本だから、かなり強気の店である。

どんな魅力的なレストランでも、10数品も出てくると、たいてい、2,3品は完ぺきとは言えない料理が出てくるものだし、それは仕方ないものだと思っていた。が、すべての皿が完璧ということもあったのだ。

料理長は、和食店「龍吟」での修業経歴もあり、魚の炭火焼きなんかもストレートに美味しい。そもそも、蒸し魚が定番の中国料理にあって、炭火焼きが出てくることがユニークではないか。

チャーシューや春巻きといったなじみの料理も出たが、その洗練度は半端ではなく、別物である。

ふかひれも出た。過去、ふかひれの姿煮を美味しいと思ったことはほとんどないが、ここのものは納得がいった。太い繊維で、ねっちりというよりコリコリに近いかもしれない。

そして飲み物。

お茶のペアリングコースや、ワイン、日本酒、紹興酒を組み込んだアルコールのペアリングコースなどがある。

この日は、充実したリストからこなれているブルゴーニュの赤をチョイスしたが、これも大正解であった。「こなれている」ことがポイントだったと思われる。

15品の料理の合間に、お茶が3回登場した。2種は冷たいの。ワイングラスで最初に出てきたお茶は、シャンボールミジュニーを思わせる香りがあり、なるほどこれならお茶のペアリングも満足できそうだと思った。

最後には柔らかな香りのバラのお茶が。きゅっと食事を締めくくるのではなく、余韻を残しながら穏やかに締めくくってくれたような気がして心地よかった。

新富町の「東弦京」も感動的だった。アラカルトとコースがあり、アラカルトで気になった料理を8500円のコースに組み込んでもらうことができる。

さりげなく出された和え物などの前菜に箸をつけたら、一日の疲れでぼんやりしていた頭と目が覚めるようなおいしさだった。

締めに盛り込んでもらったパクチーの冷麺がまた美味しくて、普段は飲み干すことなど絶対にないスープを一滴残らず飲んでしまったほどだ。

ワインを頼んでいる人も多い。ちょっぴり気の弱そうなソムリエがいて、押してはこずに、聞いてくれる。

神楽坂にできた「ジューバー」も面白い。あの坂に面していながら、どこまでもわかりにくいビルの3階にある。カウンター中心の店で、深夜までの営業。肉団子や水餃子など、多くの料理は数百円だ。味にも個性がある。ワインの充実はないけれど、パクチーモヒートなんかを片手にいくつもの料理をつまみ、楽しく語れる、友達同士で訪れるには最高の店だ。

南青山にもすこぶる評判がいい新店がある。ワインも美味しいよと言われている。

調べれば、料理人は私が大好きな新宿御苑の「シェフス」という店からの独立ではないか。

一週間くらい先の予約をしようと思い、何度かトライしたものの、ことごとく満席。やっとのことで入れた予約が数日後に迫り、まさに今、期待に胸を膨らませ、ワクワクしながら待っているところだ。

期待しすぎはいけないと何度も経験しているのだが、どうにも気持ちが抑えられない感じである。

ほかに、三軒茶屋にも面白そうな店ができ、銀座にも新しい店ができたという情報が舞い込んできた。いずれも出身の店がよかっただけに、期待が高まってしまう。

そして、本当に中国料理の当たり年だと思うのである。

■エピセ
http://epicer.jp/

■茶禅華
http://sazenka.com/

■東弦京
http://togenkyo1125.com/

■ジューバー
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13207885/

■シェフス
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130402/13000884/

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