吉田さおりのシャンパーニュ徒然草〜シャンパーニュビギナーからシャンパーニュオタクへの道のり観察記〜vol.3シャンパーニュのデゴルジュマン後の熟成の魅力

アカデミーデュヴァンで、「シャンパーニュマスター講座」を」担当する人気講師で、自称シャンパーニュオタクの吉田さおりが、シャンパーニュの魅力を全力で伝える新連載。第3回目は、シャンパーニュのデゴルジュマン後の魅力をご紹介いたします。

文・写真/吉田さおり


【目次】

1.シャンパーニュのデゴルジュマン後の熟成について
2.食品におけるマイヤール反応(メイナード反応)について


1. シャンパーニュのデゴルジュマン後の熟成について

アイ村入口の標識

読者の皆様、こんにちは!!
アカデミー・デュ・ヴァンの吉田さおりです。
連載の第3回目は、シャンパーニュのデゴルジュマン後の熟成の魅力をご紹介していきます。どうぞ最後までお付き合いください!!

 

(1) ヴィエイスマン・シュール・リー熟成について

ブジー村の風景

シャンパーニュの醸造工程で、ベースワイン(発泡性ワインになる前のスティルワインの段階のワインのことです。)に、糖分と酵母を添加し、瓶に詰めて栓をする工程をティラージュと言いますが、このティラージュ後、瓶内にてアルコール発酵が起き、アルコールと二酸化炭素が発生します。シャンパーニュの泡はこの時に生じた二酸化炭素が液体に溶け込んだものなのです。この瓶内でのアルコール発酵のことを、瓶内二次発酵と言いますが、この瓶内二次発酵の際に生じる澱の殆どの成分は、酵母の死がいで、この酵母の死がいは、数ヵ月経過すると自己分解を起こし、香りや味わいに好ましい芳香や旨味を与える成分を生成します。この澱と共に熟成させることを、ヴィエイスマン・シュール・リー熟成(瓶内熟成)と言います。

この澱との接触年数が長いほど、酒質に厚味が増し、好ましい芳香も増していきます。プレスティージュシャンパーニュ(各メゾンが威信をかけて造る最高級品をプレスティージュシャンパーニュと言います。)の平均的なヴィエイスマン・シュール・リー熟成期間は約10年で、途方もない長い年月を掛けて、素晴らしいシャンパーニュを造りあげます!! プレスティージュシャンパーニュを召し上がる時は、それを心して、敬意の念を持って、堪能してくださいね!!

 

(2) デゴルジュマン後の熟成について

デゴルジュマンとは澱抜きのことで、前述した澱を取り除くことです。
このデゴルジュマンを行ってから、シャンパーニュは酸化熟成が始まります。
シャンパーニュにとって、このデゴルジュマン後の経過年数がいかに、香りや味わいの美味しさに関わってくるのかをご説明します!!

例えば・・・
① シャンパーニュA
ヴィエイスマン・シュール・リー熟成10年、デゴルジュマンからの経過年数は1年。
② シャンパーニュB
ヴィエイスマン・シュール・リー熟成5年、デゴルジュマンからの経過年数は6年。
という、2つのシャンパーニュがあったとします。

シャンパーニュAは、ヴィエイスマン・シュール・リー熟成を10年も行っているということは、プレスティージュシャンパーニュ級です。

かたや、シャンパーニュBのヴィエイスマン・シュール・リー熟成は、シャンパーニュAの半分の5年です。でも、デゴルジュマン後からの年数は経っています。

さて、この2つのシャンパーニュを飲み比べたら・・・・。
圧倒的に美味しく感じるのは、実はシャンパーニュBなのです!!
味わいだけではなく、香りもシャンパーニュBのほうが素晴らしいのですよ!!

シャンパーニュの研究科の講座で、このデゴルジュマン後のシャンパーニュの垂直試飲は何度も行ってきましたが、いつも必ず、デゴルジュマン後からの経過年数が経っているシャンパーニュほど、絶大な人気があります。

なぜ、デゴルジュマン後の経過年数を経ているシャンパーニュが美味しいのかは、マイヤール反応(メイナード反応)が起きているからのです!!

 

(3)マイヤール反応(メイナード反応)とは?

マイヤール反応(メイナード反応)とは、還元糖による反応で、シャンパーニュの場合、ドザージュで加えられた糖やブドウ由来の残糖分が、酵母の自己分解によって生成するアミノ酸と反応し、生み出されていると考えられています。

マイヤール反応は、なにもシャンパーニュだけに起こる反応ではなく、残糖のあるワインには起こり得る反応ですので、例えば、残糖の多い貴腐ワインなどは、早いうちからマイヤール反応が起きます。スティルワインの辛口白ワインでも、結構な年数は掛かりますが、マイヤール反応は起こります。

シャンパーニュで、マイヤール反応が起こった初期のうちは、コーヒーのようなモカフレーヴァーのような香りで、ナッティーな香りとも表現される、何とも美味しそうな香りが現れます!!

さらにマイヤール反応が進むと、キャラメルを焦がしたような香りへと変化し、まるでポルトガルの酒精強化ワインのマデイラのような香りになっていきます。
そして、香りだけではなく、味わいもより濃密に変化し、酒質に旨味が増して、途方もなく美味しいシャンパーニュになりますよ!!

ここで、読者の皆さまに、物凄くお伝えしたいのは、「シャンパーニュは買ってきて直ぐ飲んではいけない飲み物である!!」ということなのです!!

シャンパーニは、買ってきて直ぐに飲んではいけないワインの代表格である!!ということを強くお伝えしたいのですよ~!!

特価で買われた3000~4000円のシャンパーニュでも良いですので、買ってきてから、買ったことを3年は忘れましょう!! できれば5年!!

そうすれば、そのシャンパーニュは、ヴィンテージのクリュッグか??くらいに化けてくれますよ!! これ本当です!!

 

2.食品におけるマイヤール反応(メイナード反応)について


ワインに限らず、食べ物でも、マイヤール反応は、非常に重要な事柄なのです!!
人が食べて美味しいと思うことは、実は全て、マイヤール反応に繋がっていると言われています。

食品におけるマイヤール反応は、肉や魚、パンなど食材に含まれるタンパク質のアミノ酸と糖が、加熱によって結びつくことで起こります。

例えばパンケーキの場合、卵や牛乳(タンパク質)と、砂糖や小麦粉(糖)を混ぜて高温で加熱をするとキツネ色に焼きあがりますが、これはマイヤール反応によって、褐色物質のメラノイジンが生成されるからなのです。そして、マイヤール反応は、常温時でも起こりますが、高温で加熱することにより、非常に早く起こります。

また、マイヤール反応によって、食品の色味だけでなく、香りも変化します。
例えば、生の牛肉は、血が混じった生臭さがありますが、高温で加熱すると、香ばしい香りが立ちあがり、食欲がそそられる香りへと変化しますよね。
この加熱によって変わる香りは、もちろん、様々な成分間の複雑な反応による結果でもありますが、大部分はマイヤール反応が起きたことによって生成される香りだそうですよ!!

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!!
次回の第4回目は、この連載の副題でもある「シャンパーニュビギナーからシャンパーニ
ュオタクへの道のり観察記」をテーマに書きたいと思います。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします!!

 

吉田 さおり/Saori Yoshida

JSA認定ソムリエ、JSA認定ワイン・エキスパート/エクセレンス、WSET®Level3 、CPA認定チーズプロフェッショナル、アカデミー・デュ・ヴァンでStep-1から学び、ワインの素晴らしさ、奥深さに魅せられる。資格取得後も、各種研究科を受講し、ワインの知識を磨き、JSA主催第3回ワインエキスパートコンクール優勝。ワインショップでの販売を通じて把握した様々な顧客ニーズを踏まえ、また培った商品知識も活かし、初心者から上級者まで、幅広いレベルの受講生に満足感を与える講座を目指している。また、「ワインを学ぶことは、知識を得るだけでなく、新たな人との出会いのきっかけになる」がモットーで、毎回の授業やクラス会が楽しみになるような雰囲気づくりを心がけている

 

吉田さおりのシャンパーニュ徒然草〜シャンパーニュビギナーからシャンパーニュオタクへの道のり観察記

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