伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.116

伊東道生,ワイン,最新情報,トレンド,Vin de France,コロナ

*連載コラム「伊東道生の『<頭>で飲むワイン』」のアーカイブページはこちら

ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。

~年末年始もChampagne avec コロナ~

最後のメルマガとなります。来年は、あらゆる事態が好転することを願うばかりです。

年末、宴会シーズンも重なるということで、例年12月にはシャンパーニュの記事、たいていRVF誌の特集をご紹介、という風になっていたのですが、RVF誌のシャンパーニュ特集(2004年から2016年のミレジメ・シャンパーニュ特集)は12月発売で、手元にとどくには、もう少し先。

余裕があれば、年内にもう一回メルマガの予定です(あくまで予定)。期待せずに(!)お待ちください。

今月号は2021年を祝う542のグラン・ヴァン、しかもシャンパーニュ抜き!の特集。ちょっと当てが外れました。

記事自体は、それほど珍しくもなく、サン・テミリオンでオーゾンヌやアンジェラスがおすすめと言われても、それで・・?という感じです。

コルシカでClos CanarelliやClos Nicrosi、ジュラで Domaine Andre et Mireille Tissot、Domaine Ganevat、南西地区でClos Joliette、Domaine Camin Larredyaとかがおすすめというのは、それなりの情報ですが、これも別の箇所で手に入れられそうな。

もちろん次回の特集もありますが、察するに、年末年始は、ほっといてもシャンパーニュは売れる、今年のコロナ禍で売り上げの落ちているワイン業界を盛り上げるため、という意図があるのでしょう。

そこで今回のメルマガは、2021年版のRVFガイドが最近出たので、そこからシャンパーニュを拾っていくことにします。

まず今注目すべきドメーヌです。シャンパーニュのAgrapartというドメーヌをご存じかとおもいます。

まだ一つ星だったのが、RVFが注目・評価をし、あれよあれよと評価がうなぎ上り。

RVFの評価は、フランス国内販売にけっこう直結しており、かつてはパリの大手高級スーパーであるグラン・デピスリーのワイン売り場は、月ごとの雑誌に合わせた注目ワインをそっくり販売していました。(今はどうなのでしょう)ともかく、これに並行して市場価格もうなぎ上り。

かつては日本でも気軽に変えていたのが、高騰するだけでなく、手に入らなくなってきました。

ジャック・セロスほど高くはないのですが、そもそも手に入らないのが残念。

つまりRVFが眼をつけたドメーヌは今のうちに爆買い?でもしておかないと飲めなくなる可能性も・・というのは大げさにしても、入手困難になるので、ご注意を。AR Lenobleも注目ドメーヌでしたが、ここもそろそろ手に入りにくくなってきました。

前置きが長くなりました。注目すべきシャンパーニュのドメーヌは、Leclerc Briantです。

ドメーヌ自体は1872年創設ですが、2012年にアメリカ人カップルに買収され、醸造をFrederic Zeimett、カーブ主任をHerve Jestinが担当することによって品質が向上しています。

ガイドブックでは、今回一つ星から二つ星へ上昇。16haのうち8haにピノ・ノワール53%、ムニエ47%、同じく8haもシャルドネ、いずれもビオディナミ栽培。

ほかにビオもしくはビオディナミ栽培農家から葡萄を購入しています。ラインナップを挙げておきます。

・Brut Nature Blanc de Meuniers 120ユーロ (94点)
・Brut Reserve 40ユーロ (93点)
・Brut Zero Abyss 2014 140ユーロ (96点)
・Brut Zero Grand Blanc 2013 150ユーロ (92点)
・Extra-Brut Premier Cru 49ユーロ (92点)
・Brut Rose 52ユーロ (92点)
・Extra-Brut 2013 52ユーロ (93点)

最初のムニエは、2005年ものがベースで、まだ保存しておくべき。2013年のグラン・ブランは花と蜂蜜の香りもあり、今でも飲める。Abyssは肉感的で、きわめて複雑、という評価です。(お気づきの方もおられるかと思いますが、従来RVF誌は20点満点評価でした。今回から雑誌ともども100点評点に変更です。ユニバーサル基準に合わせた、とのことです。)

他にガイドで、はじめて一つ星を獲得したドメーヌが3つあります。

まずPierre Paillard。ピエールは二人の息子と11ha(7.5haがピノ・ノワール、3.5haがシャルドネ)を切り盛り。

村名ブージーがいずれのキュベにもついており、ブラン・ド・ブラン(62ユーロ、91点)、ブラン・ド・ノワール(62ユーロ、92点)の他にLes Parcelles XV(36ユーロ、91点)、Les Terres Roses XVI(45ユーロ、92点)は、ローマ数字が、ベースとなっている葡萄のミレジメを表しています。

他に、Le Grande Recolte 2008(36ユーロ、91点)は力強く手、繊細、食事に合うという評価です。

R. Pouillon et filsも今年星を獲得したドメーヌ。

5haにピノ・ノワール75%、ムニエ25%、2haにシャルドネを植え、葡萄の購入はしていないので、年間55000本という希少もの。

1er cru Solera(44ユーロ、92点)は、1997年から2014年までの葡萄をアッサンブラージュしたもので、黄色い果実の風味、供するときにはデキャンティングを。

2016年をベースにしたのがロゼ(30ユーロ、91点)、こちらは赤い果実の風味。Les Chataigniers 2015(55ユーロ、90点)はムニエ主体。

ところで賛否両論はありますが、シャンパーニュも香りを引き出したり、味わいの尖りを減らしたりためにデキャンティングをすることがあります。

シャンパーニュのJacques Lassaigneなどでは裏のエチケットに「香りを引き出すために10分前に開栓、何年か寝かせた場合はデキャンティング(カラフェ)がお勧め」と記載されています。

こちらにはソムリエによる実演もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=aRGBy_3twig 

ものものしいシャンパーニュ用カラフェはこちらで。
https://www.vessiere-cristaux.fr/boutique/art-de-la-table/carafes-cristal-uni/carafe-champagne-jcb-baccarat/

さて、3つめが、Frederic Savart。3.5haにピノ・ノワール、0.5haにシャルドネ。

他に葡萄を購入。ランスの西10キロにあるエクエイ(Ecoueil)村ではもっぱらムニエが植えられていたのが、1960年代にピノ・ノワールが再評価されて植えられ、2015、2016、2017年ものをアッサンブラージュしたものがOuverture(27ユーロ、91点)。

Ouvertureといわれると音楽好きならば、オペラの序曲と連想するでしょうが、ピノ・ノワールの「植え始め」といったところでしょうか。

Expression(当主は芸術的用語が好きなようです)はピノ・ノワールを十分に「表現した」ロゼ。150-180ユーロで94点です。

いずれも、まだそれほど有名ではないですが、有望株です。是非、ご注目を。

話はころりと変わって・・・。秋から冬に入ると、ジビエの季節です。コロナ禍でレストランもままならないですが。

日本ではジビエの!熊やイノシシが住宅地に出没し、野菜や果物などを荒らす話がニュースで流れます。

よく考えれば、なるほど、なのですが、ジビエは葡萄も食べます。イノシシ、鹿、モリバト、ウサギといったジビエに5000本に匹敵する葡萄を食べられてしまう、と嘆くのは、ペサック・レオニャンのシャトー・ブラウンの当主ジャン・クリストフ・モー氏。ロワールのドメーヌ・トレヴァロンの当主エロワ・デュルバック氏は、年間15000本相当の被害。

「白葡萄と、シラーが好きで、カベルネはまあまり好きではないようだ」、とジビエの「好み」も披露しています。

全国狩猟教会によると、イノシシと鹿だけ1500から1800トン相当の被害があるそうです。これには、ビオ栽培が生態系を活性化し、その結果、ジビエが出没という事態になっているというのも、皮肉な話ですが、ビオ栽培の葡萄を食べたジビエは、その葡萄のワインで料理したら、おいしいでしょうね。

2020.12.07


伊東道生 Michio Ito

東京農工大学工学研究院言語文化科学部門教授。名古屋生まれ。
高校時代から上方落語をはじめとする関西文化にあこがれ、大学時代は大阪で学び、後に『大阪の表現力』(パルコ出版)を出版。哲学を専門としながらも、大学では、教養科目としてドイツ語のほかフランス語の授業を行うことも。
ワインの知識を活かして『ワイナート』誌に「味は美を語れるか」を連載。美学の視点からワイン批評に切り込んでいる。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン


はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。

 

ワインスクール 無料体験会のご案内

ワイン3杯のテイスティング付き無料会を毎月開催。
ロケーションや教室の雰囲気、授業の進め方などの不安を解消いただき、
ご納得いただいてからのご入会をおすすめしています。

無料体験お申込フォーム

資料請求(無料)フォーム

 

 

伊東道生,ワイン,最新情報,トレンド,Vin de France,コロナ

豊かな人生を、ワインとともに

(ワインスクール無料体験のご案内)

世界的に高名なワイン評論家スティーヴン・スパリュアはパリで1972年にワインスクールを立ち上げました。そのスタイルを受け継ぎ、1987年、日本初のワインスクールとしてアカデミー・デュ・ヴァンが開校しました。

シーズンごとに開講されるワインの講座数は150以上。初心者からプロフェッショナルまで、ワインや酒、食文化の好奇心を満たす多彩な講座をご用意しています。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン