伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.109

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続々・コロナウイルスに負けないワイン

伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.109

先月末になんとかRVF誌発売。かなり薄っぺら、無理もないです。

冒頭、編集者Denis Saverot氏は、新しいミレジムの試飲記事を載せなかったのは、40年間で初めて、と切り出しています。

これは、とくにボルドー・プリムールを指しています。

4月の終盤には「プリムール週間 Semaine des primeurs」は、夏まで延期というアナウンスがされました。

しかしボルドー・グラン・クリュ協会は5月26日に、6月初めに行うことを決定。

6月4日と5日に、ネゴシアンおよび、ネゴシアンと生産者の値段仲介をする仲買人courtierの500人が優先的に招待されます。

このメルマガが出る頃には、もう始まっているでしょう。

生産者、とくに小規模生産者の資金繰り、ネゴシアンのキャッシュフローへの懸念から、時期を早めたのでしょう。

いずこも同じで、感染リスクと経済活動の天秤をどう考えるかでしょうね。

プリムールがだめなら、というわけでRVF誌は差し替え記事が、各評論家に聞く自分なりの伝説ボルドー。

Mouton 1945とか、Pichon-Longville Bron 1945、Petrus 1953マグナムなどがあがっていますが、けっこう若いワイン、1990年代以降のボルドーを挙げている人がほとんどです。意外です。

と、いうか自分(筆者)が、還暦をゆうに越えているから、そう思えるのかも。

1990年以降は、R・パーカーの影響で、ボルドーがものすごく変質(つまり濃くなった)ので、個人的にボルドー離れになってしまい、そのおかげでまだ90年代も「若い」と思ってしまいます。

でもまあ、Petrus 1953マグアムは飲んでみたいですが。

マグナムと言えば、Latour 1905マグナムは忘れられない思い出の一つ。2000年代のはじめ、戦前のワインを飲む会をやっていたときに飲みました。

そういえば、そのとき印象に残ったGruaud Larose 1918は、我が家にまだ一本残っています。

戦後のワインなら1980年代のMouton、1966のPape ClementやHaut Brionの白、Lafleurなどが思い出です。

閑話休題。ボルドー・プリムールの続きです。

ネゴシアンなどの試飲者は8つのグループに分けられ、消毒されたサロンで、手袋とマスクをした人がワインを提供という段取りになっています。なんか味気ない・・・。

ワイン評論家やジャーナリストはその後になります。

RVF誌も、招待されていますが、プリムールの記事は夏の終わりの2020秋号に掲載予定。

通常なら、バカンスのため8月号は薄っぺらで、エノ・ツーリズムの別冊がつくことが多いですが、これもどうなるでしょう。

またバカンス明けは秋のワイン祭りがフランス全土で開かれ、ワイン店やスーパーなどの催しが掲載される分厚いものになります。

プリムールの記事を載せるとなると、例年と異なる編集になるのでしょう。

ところで、ワインとまったく関係のない話で、恐縮ですが、私は歌舞伎ファンでもありまして、歌舞伎公演は4月以降、少なくとも7月まで中止になって、悲しい思いをしており、『演劇界』という歌舞伎雑誌も、4月号は出版されず、5月末に合併号になり、『ほうおう』という歌舞伎界の冊子もペラペラ。

新規の公演情報は、8月末の新橋演舞場の「なでしこの踊り」という舞踊のお知らせがあるだけ。

講演中止のお詫びと、申し訳程度の記事だけ。

まだワインのほうは、とりあえずは、生産されるだけ、それなりに記事を載せることができますので、<仕事>があるだけ、まだましか・・・。

ボルドーに続いて、パリ、ブリュッセル、フランクフルト、チューリッヒ、香港、上海、シンガポール、東京の134人のメンバーにワインを発送、6月22日から27日の間で試飲される予定。

輸出に関しては、トランプ関税があるとはいえ、合衆国と、イギリス、ロンドンの状況がキーとあります。考えると香港も別の意味でキーになるかもしれません。

その後、6月中旬から7月中旬にかけて、価格が決定していきます。

なかにはすでに価格を発表済みのシャトーもあるようです。

経済活動の低下が価格低下になるのでしょうか。

ちなみに世界一のワイン生産量を誇るイタリアでは、早くも今年の売り上げが20~25%減、20億ユーロ減の予測がでています。以下、発表済み価格です。

Chateau Lanessan 2019Haut-Medoc 10,40 ユーロ

Clos Manou 2019 Medoc 17,30 ユーロ

Chateau Haut-Bergey 2019 Pessac-Leognan 14,00 ユーロ

La Mauriane 2019 Puisseguin-Saint-Emilion 12,30 ユーロ

Chateau Pontet-Canet 2019 5eme Cru Classe Pauillac 68,00 ユーロ

巷ではコロナ禍以降の、新生活スタイルが云々されています。

レストランでの飲酒のしかたにもいろいろ言われています。

中でも対面ではなく、並んで、というのはどうでしょうねえ。ワインの飲み方も変わるのでしょうか。

RVF誌では、「フランスワインはどこに行く」という記事を掲載。生産と消費動向が分析されています。

はじめに筆者の年のことを漏らしましたが、フランスで日常的にワインを購入し、飲んでいるうち、65歳以上の人が**%です。さあ、何%でしょうか。

正解は39%です。続いて、50歳から64際までの人の割合は?どうでしょう。

同じく39%。つまり日常的ワインの消費は50歳以上で8割弱!

30年ほど前から、フランスでは、さまざまな要因-伝統的家族の崩壊、つまり家族一緒にご飯を食べる機会の減少、若者のファストフード指向、食事時間が短くなっている現象、ワインよりもスイーツへの愛好など-のために、ワイン消費自体が減っています。

日本でも、若者の飲酒離れは見られます。同時に女性の飲酒が増えたのは洋の東西を問わず、です。

2008年には一人当たりの年間消費量が38リットルだったのが、2015年には29リットルに。

日常的にワインを飲むのは、フランス人の15%という調査結果がでています。

こうした傾向は、とくに赤ワインに見られ、その生産の45%を買っているのが、またもや65歳以上の老人。

35歳以下の若者は、なんと5%を占めるに過ぎません。

では、白ワインかというと、飲むのはビールであったり、テキーラ、ジン、ウォッカであったり。

50歳以下の人が、そうしたスピリッツ類の56%を購入しています。

飲み物に対する嗜好や考えが変わってきているのですね。

コロナウイルス後は、宴会、パーティーも減少し、この傾向にますます拍車がかかる ?

「コロナウイルスに負けない」シリーズの最初に、ペルノーなどが消毒用ジェルを生産と書きましたが、日本でも続きましたね。

その他、ワイン、酒造メーカーからいろいろな試みがされています。

その中で、直球!とばかりに酒そのものを提供というニュースも。

どこのAOCかわかりますか。

そう、シャンパーニュ。

こればかりはシャンパーニュのステータスのなせるわざ!?

6月10日から12日にかけて5千本のシャンパーニュを当地区のマルヌ、オーブ、エーヌ、オート・マルヌの医療従事者にプレゼント。いい話です。

2020.06.19


伊東道生 Michio Ito

東京農工大学工学研究院言語文化科学部門教授。名古屋生まれ。
高校時代から上方落語をはじめとする関西文化にあこがれ、大学時代は大阪で学び、後に『大阪の表現力』(パルコ出版)を出版。哲学を専門としながらも、大学では、教養科目としてドイツ語のほかフランス語の授業を行うことも。
ワインの知識を活かして『ワイナート』誌に「味は美を語れるか」を連載。美学の視点からワイン批評に切り込んでいる。

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