【三次試験対策編】ソムリエ試験 徹底ガイド

ソムリエ資格受験者の方には、11月下旬に最終関門である三次試験があります。三次試験で課されるのは、赤ワインのサービス実技のみですが、二次試験の際に課された論述試験の採点結果も、三次試験の合否判定に合わせて使用されます。

本記事では、日本で最も多くの「ソムリエ」資格試験合格者を輩出してきたワインスクール アカデミー・デュ・ヴァンが、三次試験で課されるサービス実技の流れとトレーニング方法、そして二次試験時に課される論述試験の傾向と対策について、以下の目次に沿ってわかりやすく説明していきます。


【目次】

1. ソムリエ資格 サービス実技で必要なスキル
2. ソムリエ資格 サービス実技のトレーニング方法
3. ソムリエ資格 論述試験の傾向と対策
4. まとめ


1. ソムリエ資格 サービス実技で必要なスキル

ソムリエ資格試験に出願すると、日本ソムリエ協会のウェブサイトにアップされている、サービス実技の「模範演技」の動画が視聴できるようになります(視聴に必要なID、パスワードについて協会から連絡があります)。

基本的には、その動画の通りのサービスを、審査員の前でしてみせればよいのですが、ここではひとまず文字でその流れを追ってみましょう。
なお、サービス実技の流れについては、『日本ソムリエ協会 教本』の「ソムリエの職責とサービス実技」の章にも写真付きの解説ページがありますので、そちらも参照するようにしてください。

  1. 顧客役の審査員に対して、注文された赤ワインのボトルをプレゼンテーションし、デキャンティングについての了承を取る。
  2. デキャンティングに必要なサービス道具(デキャンター、ライトなど)をバックヤードから持ってきてサービス台に置く。
  3. パニエ(ワインバスケット)にワインを寝かせた状態で、ソムリエナイフで抜栓する。
  4. ソムリエ自身がコンディションを見るためにごく少量テイスティングする。
  5. デキャンティング(デキャンターへのワインの移し替え)を行う。
  6. 顧客役の審査員のグラスに少量ワインを注ぎ、ホスト・テイスティング(ワインの状態に問題がないかの味見)をしてもらう。
  7. 顧客役の審査員のグラスに、適量ワインを注ぎ足す。
  8. サービス道具をバックヤードに後片付けする。

おおまかな流れをつかんでいただくために、細かい同作(例:キャップシールをめくったあと、瓶口をリトー(サービス用の白いナプキン)で拭く)については、上記では省略してあります。

この①~⑧の流れを円滑に遂行するために、必要なスキルはたった3つです。

A:必要な細かい手順を覚え、一連のサービスがよどみなくできるようにする
B:ソムリエナイフでの抜栓が、ワインをパニエに入れた状態でスムーズにできる
C:正しい姿勢、スピードでデキャンティングができる

では次項で、A、B、Cそれぞれのトレーニング方法を見ていきましょう。

 

2. ソムリエ資格 サービス実技のトレーニング方法

ソムリエ資格のサービス実技では、二次試験のテイスティングと同じく「場数」がモノを言います。

正しい手順で反復練習をすることが何よりも必要なのですが、とはいえ二次試験のテイスティングほど数をこなさなくても、三次試験に合格できるレベルのスキルは身につきます。訓練開始前から仕事またはプライベートでソムリエナイフを使って栓を開けているか、デキャンティングの経験があるかにもよりますが、練習の回数は実際に開けてデキャンティングするワインの本数にして、10~30本ほどでよいかと思います。

訓練の順番としては、上記のB→C→Aの順に進めていくとよいでしょう。
数ヶ月かけて無理なく訓練していったほうが楽ではありますが、余裕がなければ二次試験終了から三次試験までの約1ヶ月半の期間に集中的に訓練することでも、なんとかはなります。

2.-1 ソムリエナイフでの抜栓

ワインのオープナーには、誰でも失敗なく栓を抜けるものが数ありますが、ソムリエナイフはある程度練習をして、使い慣れないとほぼ必ず失敗します。

抜きやすさよりも携帯性を重視したプロの道具だからです。

小さなブレードを使い、キャップシールを切るのも難しければ、コルクを折らずに栓を抜くのも難しいです。

それぞれコツが必要なのですが、自力でそのコツをつかもうとするには、相当の試行錯誤を重ねなければならず、非効率です。
「できる人」に手本を見せてもらい、その通りにできるよう真似て見せるのが上達への早道です。

なお、パニエ(ワインバスケット)に寝かせた状態で栓を抜くのは、ボトルを立てた状態で栓を抜くよりも難易度が高いので、まずはボトルを立てた状態で完璧にキャップシールが切れ、栓が抜けるようになりましょう。パニエを使った練習はそのあとです。

2.-2 デキャンティング

栓を抜いた赤ワインを、デキャンター(透明のガラス瓶)に移し替える作業で、赤ワインの中で沈殿している澱を取り除くためと、赤ワインを空気に触れさせて風味を開かせるためのふたつの目的で行います(試験で実際に扱う赤ワインには、澱があるものもあれば、ないものもあります)。

ソムリエナイフでの抜栓ほど難易度は高くない作業ですが、澱が入らないようにちょうどいいタイミングで移し替えを止めることには少しコツがいるほか、正しい姿勢、スピードで移し替えをすることも重要です。

姿勢とスピードについては、適切かどうかなかなか自分ではわからないものなので、やはり「できる人」に見てもらい、助言をもらうとよいでしょう(動画を撮影してもらい、セルフチェックするのもよい方法です)。

抜栓のトレーニングは、ワイン1本につき1回しかできませんが、デキャンティングのトレーニングはワイン1本で何回でも可能ですし、姿勢・スピードの訓練だけなら適当な空きボトルと水を使って行うこともできます。

2.-3 手順を覚える

ソムリエナイフでの抜栓と、デキャンティングが問題なくできるようになったら、あとは一連のサービス手順を覚えるだけです。

試験の審査では、必要な手順・ステップが抜けるたびに減点されていくので、これはこれで重要ではあるのですが、単に「覚えるだけ」なので、さほど難しいことではありません。

手順のトレーニングだけなら、実際にワインを抜く必要も、デキャンティングする必要もないので、一揃いのサービス道具とワインボトル(中身が入っていても、空きボトルでもかまいません)を使って、身体が覚えるまで繰り返し練習しましょう。

 

3. ソムリエ資格 論述試験の傾向と対策

ソムリエ資格三次試験の合否判定は、二次試験のテイスティングのあと課される、論述試験の採点結果も加えてなされます。

この論述試験は、20分間の制限時間内に3問の問題に、各200字以内で答えるというものです。

2016年に新しく始まった試験であるため、まだ過去問題が5年分、15問しかないのですが、どんな問題が実際に出題されたか見てみましょう。

<2016年>

  • 赤ワインを冷やして飲みたいとうお客様に、どのようなワインと料理をお勧めするか説明しなさい。
  • ワインを初めて飲むというお客様に、X番のテイスィングワイン(テイスティングで出題されたワインから指定)の味わいはどのようなものか説明しなさい。
  • ひやおろしとは何か、説明しなさい。

<2017年>

  • X番のワインに相性がよい料理を説明しなさい。
  • オレンジワインについて説明しなさい。
  • 2018年10月30日施行予定の日本のワインラベル表示ルールについて説明しなさい。

<2018年>

  • X番のワインに合わせて、お勧めする料理とその理由を説明しなさい。
  • ジョージアワインについて説明しなさい。
  • 2015年より日本の輸入ワイン量No.1となったチリワインの今後の展望について説明しなさい。

<2019年>

  • ワインを初めて飲むというお客様に、テイスティング試験で供出された 1 番目のワイ ンの味わいを 200 字以内で説明してください。
  • 「Queso Manchego」について 200 字以内で説明してください。
  • 日本における「ぶどう酒/ワイン」の地理的表示について説明してください。

<2020年>

  • ワインをあまり飲んだことが無いお客様に対して、自宅で飲むワイン(家飲みワイ ン)を 200 字以内で提案をしてください。
  • 「マスカット・ベーリーA」と相性が良いと思われる料理を 1 つ挙げ、理由と共に 200 字以内で説明してください。
  • 「オーストリアン・ゼクト g.U.」ついて説明してください。

これら過去問の傾向を体別すると、以下の3つに分けられます。

① 『日本ソムリエ協会 教本』記載の知識を問う問題
② ワインと料理の相性について問う問題
③ その他、ワインに関する一般的な見識を問う問題

上記①については、一次試験の延長なので、ことさらに対策を行う必要はありません。
論述試験が行われる二次試験の前に、教本のおさらいをしておくだけで事足りるでしょう。

②については、ワインと料理のペアリングについての基本的な原則(ワインと料理のボリュームを合わせる、ワインと料理の格を合わせる、地方料理とその地方のワインは相性がよい、など)をいくつか覚えておき(教本には該当の知識が記載されていないので、市販のワイン入門書などで学んでください)、その原則に乗っ取った相性料理と、よって立つ原則の説明ができればOKです。

相性料理として提案するのは、フレンチ、イタリアンなど西洋料理に限らず、日本の家庭料理のようなものでも、その理由を明確に提示できるのではあれば問題ないと考えられます。

対策が最も難しいのが上記③(2018年に出題された、チリワインの将来展望を問う問題のようなタイプの出題)でして、こちらは日頃からワインに関する情報収集を心がけ、自分なりの見識を持つようにするほかありません。

ただ、③のような問題は出題されても1問だと思われますので、さほど心配することはないでしょう。

 

4. まとめ

ソムリエ資格の三次試験は、単体での合格率が90%程度になる、いわば「通すための試験」です。

論述試験でまったく何も書けなかった、サービス実技で大きな失敗をいくつもやらかした、といった極端なことにならなければ、まず受かるものだと言えます。

その点からすれば、一次試験対策、二次試験対策に時間とエネルギーを割いていただいたほうがよいのは間違いありません。
とはいえ、必要な対策をきちんと取れば、ほぼ確実に合格する試験を取りこぼすのはもったいないことですから、二次試験の論述の前には教本のおさらいと料理とワインのペアリングの原則確認をし、遅くとも二次試験が終わった時点からは、サービス実技の訓練に取り組んでください。

この最後の関門を無事突破できれば、いよいよ栄光のソムリエバッジを手にできます!

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世界的に高名なワイン評論家スティーヴン・スパリュアはパリで1972年にワインスクールを立ち上げました。そのスタイルを受け継ぎ、1987年、日本初のワインスクールとしてアカデミー・デュ・ヴァンが開校しました。

シーズンごとに開講されるワインの講座数は150以上。初心者からプロフェッショナルまで、ワインや酒、食文化の好奇心を満たす多彩な講座をご用意しています。

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