世界には多彩なスパークリングワインがあります。その中で常に注目を集めてきたのが―「CAVA(カバ)」です。伝統方式による繊細な泡、豊かな熟成の表現、そしてサステナブルな取り組み。カバは、味わいと哲学の両面で、世界の専門家のみならずワインラバーを魅了し続けています。
世界のトップレストランが注目
スペインを代表するスパークリング「カバ」。その評価は、長きにわたり確かなものとして築かれてきました。カタルーニャ地域やバルセロナのミシュラン星付きレストランすべてが、ワインリストにカバを取り入れ、料理とのペアリングに欠かせない存在となっています。
たとえば、バルセロナの星付きレストラン「Àbac(アバック)」のソムリエ、ステファニー・キップス氏もこう語ります。「私はカバが大好きです。ワインリストの中でもとても重要な位置づけにしています。カバには長期熟成タイプもあれば、フレッシュで果実味豊かなもの、クリーミーなスタイルもある。どんな時も欠かせない存在です」
このように、現場のプロフェッショナルに支持されることで、カバは常に「なぜ選ばれるのか」と語られる存在となっています。ここからは、その理由を5つの視点から紐解き、カバの魅力に迫っていきましょう。
【カバが選ばれる5つの理由】
1. アルコールは11.5~12%、カラダにやさしい泡
2. チャレロ100%という選択
3. 顔の見えるカバ
4. 単一畑から生まれる頂点「Cava de Paraje Calificado」
5. 干ばつの年、それでも前を向く人々
1. アルコールは11.5~12%、カラダにやさしい泡
カバの魅力のひとつは、その飲み心地の良さです。アルコール度数はおおよそ11.5〜12%。これは「補糖」を行わないことに由来します。補糖とは、発酵前のブドウ果汁に砂糖を加えてアルコール度数を高める方法のこと。カバではそれを行わず、ブドウが持つ自然の力だけで発酵を進めます。そのため、爽やかでやわらかな味わいが生まれるのです。
この「ちょうどいいアルコール感」は、現代のライフスタイルにもぴったり。休日の夜に楽しんでも重くなりすぎず、平日のランチやアペロにも心地よく寄り添います。料理との相性の幅広さも魅力で、カバはまさに時代にフィットするスパークリングワインといえるでしょう。
2. チャレロ100%という選択

チャレロ
カバといえば、マカベオ、パレリャーダ、チャレロの3品種をブレンドするのが定番です。その中で今、再び注目を集めているのがチャレロ。
地球温暖化の影響で酸を保つことが難しくなる中、もともと酸が高いチャレロは、頼もしい存在です。酸のおかげで味わいにしっかりとした骨格が生まれ、緊張感と凛とした表情を与えてくれます。
近年はこのチャレッロを100%使った単一品種のカバも登場。400haもの畑すべてをオーガニックで取り組む生産者Sumarroca(スマロッカ)はさらに踏み込み、酸化防止剤を加えずに仕上げるシリーズをリリースしました。「酸が高ければワインは傷みにくく、酸化防止剤を減らせる(もしくは加えなくても済む)」という発想が背景にあります。
こうした新しいスタイルは、環境意識や自然派ワインに関心の高い消費者から熱い支持を集めています。

カタルーニャ州の生産者スマロッカのブドウ畑は、オーガニック転換して10年以上
3. 顔の見えるカバ
カバには「Sello Elaborador Integral(インテグラル生産者スタンプ)」という特別な認定制度があります。自社畑で栽培から醸造までを一貫して行う生産者だけに与えられるもので、現在わずか16軒しか認定されていません。

Sello Elaborador Integral(https://www.cava.wine/)
こうしたつくり手たちは、畑ごとにタンクを分けて仕込み、酵母の管理や残糖のコントロールまで徹底。細部へのこだわりを積み重ねることで、個性豊かで奥行きのある「顔の見えるカバ」が生み出されます。
Giró del Gorner(ジロ・デル・ゴルネー) や Avinyó(アヴィニョ)といった造り手のカバは、その土地の個性とつくり手のメッセージがしっかりと映し出された一本。まさに「味わいで語るプレミアム・スパークリング」として、多くのワイン愛好家を魅了しています。
4. 単一畑から生まれる頂点「Cava de Paraje Calificado」
カバの世界における最高峰――それが「Cava de Paraje Calificado(カバ・デ・パラへ・カリフィカード)」です。2017年に誕生した制度で、現在この称号を持つのは、わずか6ワイナリー・8つの畑から生まれる10ブランドのみ。まさに、選ばれしカバといえるでしょう。
このカテゴリーの特筆すべき点は、単なる畑の格付けではなく、その畑の個性を映し出す銘柄ごとの品質が認められること。さらに36ヵ月以上の熟成を経ていることも条件のひとつであり、時間をかけて生まれる複雑さと奥行きが際立ちます。国際品種ではなくスペイン固有品種を中心に、土地のテロワールを尊重したカバがここから生まれます。
例えばPere Ventura(ペレ・ベントゥーラ)が所有する「Can Bas(カン・バス)」からつくられるカバは、力強さと繊細さをあわせ持ち、グラスの中で土地の個性を語ります。地中海から約35km内陸、標高200〜250mに位置するわずか4ヘクタールの区画には、樹齢100年を超えるブドウ樹が今も息づいています。夏に気温が30度を超えても、海風が畑を吹き抜け、驚くほど清涼な空気をもたらす。その自然の恵みと人の技が重なってこそ、比類なきカバが誕生しているのです。
5. 干ばつの年、それでも前を向く人々
2024年、スペインでは深刻な干ばつに見舞われました。古木のなかには枯れてしまうものもありました。しかし、ブドウにとって過酷な環境の中でも、生産者たちは品質を守るために工夫を重ねています。
品種の見直しや、ブドウ樹の仕立て方(支柱の使い方のこと)の改善、畑の場所選び。気候変動の最前線に立たされながらも、つくり手たちは「未来へつなぐカバ」を生み出す努力を続けています。その姿は、カバが逆境の中でも進化を続け、「未来へ向かうワイン」であることを物語っています。
カバは、スペインを代表するプレミアム・スパークリングとして、その魅力をさまざまな形で伝えています。アルコール度数のちょうどよさ、個性豊かな品種チャレロ、自社畑から一貫して造られるSello Elaborador Integral、Cava de Paraje Calificado、そして気候変動に真摯に向き合うつくり手たち――。
そのすべてが、現代人にフィットするだけでなく、「信頼できる品質」を約束しています。そして、世界の専門家やトップレストランから寄せられる厚い信頼こそが、カバの価値をさらに輝かせているのです。
平日のランチから特別な記念日まで、あらゆるシーンに寄り添ってくれることこそ、カバの最大の魅力です。次にスパークリングを選ぶとき、ぜひカバを手に取ってみてください。きっと、新しい発見と、いつの時代にも変わらない心地よさに出会えるはずです。






