スペインを代表するスパークリングワイン「CAVA(カバ)」が、2025年から大きな変革を迎えます。Reserva(レセルバ)、Gran Reserva(グラン・レセルバ)、そして最上位のParaje Calificado(パラへ・カリフィカド)といった上位カテゴリーにおいて、使用されるブドウはすべてオーガニック認証を受けていなければならなくなります。スパークリングワインの世界で、カテゴリー単位でオーガニックを義務化する動きは非常に珍しく、国内外で注目を集めています。
【目次】
1. なぜカバはオーガニックを義務化したのか
2. カバ新制度の詳細
3. カバの現地生産者の声
4. カバが “ワイン通” に選ばれる理由
5. 信念ある泡へ
1. なぜカバはオーガニックを義務化したのか
この方針が意味するのは、単なる栽培方法の変更ではありません。カバが大切にしてきた本質的な価値を、より明確に示し、未来に向けて発展させていくという強い意思なのです。
D.O. CAVA(原産地呼称委員会)は、畑の選定から厳格な栽培基準、環境への取り組みに至るまで、品質と持続可能性の両面で改革を進めています。その成果として、長期熟成に耐える複雑さとエレガンスを兼ね備えた「プレミアム・カバ」は、従来からの存在感をさらに磨き上げ、世界の一流レストランやワインラバーから高い注目を集めています。さらに、消費者の意識も大きく変化しています。環境に配慮した農業やサステイナブルなワインづくりは、いまや世界的な潮流。気候変動がブドウ栽培に与える影響が大きくなる中、土壌や生態系を守るオーガニック農法は、未来に向けた必要不可欠な選択といえます。
2. カバ新制度の詳細
オーガニック認証は通常3年間の転換期間が必要ですが、ほぼすべての生産者はすでに移行を終えたのです。
D.O. CAVAは、認証のための管理体制を強化し、畑の監査や栽培記録のチェックを厳格化。単に「オーガニック」と表示するだけではなく、その裏付けとなる信頼性の確保を重視しています。この制度は、品質だけでなく、カバの「栽培哲学」まで規格化する動きといえるでしょう。

カバのボトルに表示されたEUのオーガニック認証「ユーロリーフ」
3. カバの現地生産者の声
実際に現地を訪ねると、この変革の裏には大きな努力と覚悟があることがわかります。
スペイン・コムタッツ・デ・バルセロナ または カタルーニャ州に拠点を置き、465haのオーガニック自社畑を持つスペイン屈指のワイナリー Sumarroca(スマロッカ) の醸造家オスカル・リョンバルト氏によれば、オーガニック栽培では化学合成農薬や化学肥料を使えないため、病害のリスクを「畑管理の基礎」の段階で最小限に抑える工夫が欠かせないといいます。 たとえば、剪定(前年に伸びた枝を切り落とし、必要な芽だけを残して果実の品質を高める作業)や摘心(枝の先端や芽を摘み取り、樹の勢いをコントロールする作業)など、ブドウ畑での手作業をより丁寧かつ的確に行う工夫が求められているそうです。
一方、リョンバルト氏は「畑全体における生物多様性が高まり、それに伴うポジティブな恩恵を実感している」とも語っています。

カタルーニャ州の生産者スマロッカのブドウ畑は、オーガニック転換して10年以上

草生栽培を実践するコムタッツ・デ・バルセロナのブドウ畑
4. カバが “ワイン通” に選ばれる理由
こうした取り組みによって、カバはプレミアムワインとして新しい価値を生み出しています。長期熟成や単一畑から生まれる表現はますます進化し、香りや味わいには一層の奥行きと複雑さが感じられます。今の時代、消費者は味わいだけでなく、そのワインがどのようにつくられ、どんな考えをもっているのかにも関心を持ちます。オーガニック義務化という姿勢そのものが、カバのブランドの信頼と魅力を高めているのです。これは特に環境意識の高いワイン通や、ストーリー性のある商品を求める層に響きます。
5. 信念ある泡へ
2025年からのオーガニック義務化により、カバは「環境への配慮」と「信念あるつくり」を体現する存在として、その価値をよりはっきりと示すようになりました。その姿勢は、カバの魅力を一層際立たせています。
この挑戦は、スパークリングワインの世界に新たな基準を打ち立て、私たち消費者にも「選ぶ理由」を与えてくれます。
次にスパークリングを選ぶときは、ぜひカバのラベルを手に取ってみてください。その一杯には、つくり手の真摯な想いと、未来への約束が泡となってきらめいているはずです。






