連載コラム

連載コラム:佐藤くらら陽子のブルゴーニュ日記 Vol.15 2017_10_27

畑が黄金に輝いているブルゴーニュより、こんにちは、佐藤くらら陽子です。

収穫が終わり、畑は一年で一番美しい季節を迎え、黄金の色に輝いています。まさにコート・ドール「黄金の丘」の景色!ビニュロン(栽培家)でさえ、この畑を見て「一番美しい!」と言い、一年の仕事を労いつつ自らの仕込み途中のワインを味わい、今年の収穫を歓喜しています。

8月の末から始まった2017年の収穫。去年よりは1か月早い収穫のミレジメとなりました。

昨年の経験を踏まえ、4月の霜対策で村一丸となって藁を燃やしてブドウを守り、夏の好天も手伝ってくれたおかげで、今年のブドウはとても元気な状態となりました。カビの害も最小限に収められ、収量に恵まれる、久しぶりに素晴らしい年となりました。ただ、正直、今年の収穫は長かったです。通常10日前後で終わる収穫ですが、3週間かかりました。

8月後半から30度を超す天候に恵まれたブルゴーニュ。そのおかげで一番始めはクレマン・ド・ブルゴーニュの産地であるソーヌ・エ・ロワール地域から収穫が始まりました。そして、それに続きコート・ドール。特に南の地域は9月を待たずに収穫を開始しました。

今年のシモン・ビーズのブドウも順調に成熟が進み、当主の千砂さんの指示のもと8月29日から収穫が始まりました。昨年のサヴィニ・レ・ボーヌは霜の被害のため収穫の開始は10月でしたので、今年は1か月以上早い収穫となりました。(ミレジムを知るには現地にいないとわからず、良い勉強になりました。)フランスのその他の地域、ボルドーやジュラ地方は今年の春の霜の被害で収穫量は激減、収穫時期は遅れるとの事、そしてボージョレーは6月に雹の被害にあった為、収量は減少するだろうと言われる中、ブルゴーニュのビーズの収穫は始まりました。

毎日流れるニュースでは今年のフランスのワイン生産量は霜や天候の被害により史上最悪と言われていましたが、ブルゴーニュのビニュロン(醸造家)は勝気でした。

今年はブドウの質も素晴らしく、収穫量にも恵まれ、大豊作の素晴らしい実りの年となりました。

シモン・ビーズの今年の収穫初日は8月29日6時30集合。およそ30名の収穫隊がドメーヌに集まりました。今年は千砂さんが指揮する中、息子のユーゴ君が背負い籠のポーターデビュー、娘のナスカちゃんも収穫隊として参加するという初の親子総出の収穫となりました。(ドメーヌ初です!)そして、今年の収穫隊は8月末でまだ夏休みという事もあり、学生が多くとにかくにぎやかな収穫となりました。

一番初めは白ブドウのシャルドネから収穫開始となりました。(通常圧搾機の使用順として白から収穫していきます)ブドウの状態は健全で、つまみ食いをすると甘くて美味しく、疲れが抜けるほどの美味しさ!幸せを感じるほどきれいなブドウ!このつまみ食いが至福の時!このブドウがワインになっていくのかと思うと、ちょっぴり感激さえ覚えます。冬からブドウの樹を見ていると感動もひとしおです!

そして何と言っても、収穫の醍醐味は畑で食べる「カスクルート」とよばれる朝食です。

疲れが出始める9時過ぎにドメーヌから畑にパンとチーズ、ハム、チョコレート、コーヒー、コーラ、そしてワインなどの朝食が運ばれてきます。太陽も登り始め、一仕事を終えて疲れた状態の中、各自好きなものを詰めたサンドイッチを輝くブドウ畑の中で頬ばります。そして、片手にワインも!畑の中で頂く最高に美味しい朝食です!


今年、コート・ドールの中でも8月末から収穫を開始している畑は稀で、特にサヴィニの多くのドメーヌはブドウの熟成を9月過ぎまで待ちました。

その中でも、有機栽培を目指すドメーヌやビオディナミを行っているドメーヌ、(有名どころで言うピュリニーのルフレーヴ)は収穫開始が早めでした。

これはビオディナミの土に与える調合剤がブドウの成熟を助け、ブドウの成熟を早めたからとのこと。従って、収穫時期が早まったそうです。

完璧にビオディナミとはなりませんが、ビーズディナミ(千砂さんの栽培方法)のシモン・ビーズのブドウは状態が整ったため、早いタイミングの収穫となりました。それでも、畑の位置やブドウの成育により、一気に収穫を終わらせることはなく、畑のブドウの状態を見て収穫日を決めていったため、最終収穫日が9月29日という例年にない3週間という長期の収穫となりました。それでもブドウの状態は綺麗で健全、収量にも恵まれ素晴らしい年となりました。

私は畑で頑張っていたので、今年のブドウの出来が綺麗で感動的で感無量です。畑で働くことでワインの尊さを改めて知れる年となりました。益々、皆様にワインの奥深さを伝えたい意気込みに燃えています!

それでは!また!収穫したブドウが美味しいワインになることを祈りつつ…。