連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.79 2018.01.12

~年始は豪華なシャンパーニュと(変則的ですが)年男年女向けに~

あけましておめでとうございます。今年もアカデミー・デュ・ヴァンのメールマガジンをよろしくお願いします。

さて前回は、「年末年始、リーズナブルなシャンパーニュ」をおおくりしましたが、今回は豪華なシャンパーニュです。RVF誌がブラン・ド・ブランと2004年以前のミレジメ・シャンパーニュの特集を組んでいます。記事では、いいシャンパーニュは長く保持できるとありますが、経験上、いかなる(というのは大袈裟かもしれませんが)、ほとんどの並シャンパーニュも年を経るにつれて独特の味わいをもちます。例えば、並のモエ・シャンドンしかり、はっきり言ってあまり評価の高くないボーモン・ド・クレイエールも10年経つとすっかり「変貌」します。手前味噌ですが、4年前の『ワイナート』誌77号(2014年12月05日)の冒頭鼎談で熱く語っていますので、興味がある方は、そちらを。

RVF誌では120のシャンパーニュが、点数とともに挙げられ、コメントが付されています。とりあえず、最上位を挙げると、意外なものが・・。Louis Roederer, Cristal 2004(まだ若く、10年は熟成を待つべき。390ユーロ)、Veuve Clicqout, Brut Cave Privee Rose 1979(750ユーロ。東洋風に香辛料、バラの香り。Bouzyの赤ワインが驚くべき構造を作り上げている。408ユーロ。ただしマグナムです。同じ銘柄で1990年モノもあります。前者は今飲んでも、保存してもかまわないとの評価ですが、こちらは飲むべし、と。個人的には1990年は好きな年で、とくにCristalは忘れられません。)と並んで最高得点の19点を獲得したのは、Pierre Peters, Brut Grand Cru Blanc de Blancs OEnotheque Les Chetillon 2002です。2002はシャンパーニュでは伝説の年と言われているようですが、もっぱらシャルドネを得意とする、このドメーヌによるMesnil-sur-Ogerのlieu-ditのシャンパーニュは余韻長さとテロワールの力強さを発揮しています。同じ銘柄の2000年は17点です。ともに150ユーロ。

ゴージャス・シャンパーニュの特集とあって、多くは二桁の価格とは言え、三桁もけっこう並んでいます。最高値は、おそらく推測がつくでしょうが、Krug, Clos de Mesnil 2002で18.5点。1000ユーロ、評価の最後にmagistral、解釈すれば、ブラン・ド・ブランのシャンパーニュのモデルとなるに相応しく堂々と見事、といったところでしょうか。Salon 2006(18点)の396ユーロ、Bollinger, R.D. 200(18点)の245ユーロが安く思えてしまいます。

まだしも手が出そうな安値を探してみます。すべてブラン・ド・ブランです。
Louis Nicaise, Premier Cru Les Noces Blanche(16点)が28ユーロ。
Lancelot-Pienne, Grand Cru Table Tonde(16点)が27ユーロ。2000年以来ソレラ方式で2012年のシャルドネをベースにしています。

RVF誌ご贔屓のA.R.Lenoble, Grand Cru Chouilly(16点)は、2013年のシャルドネを65%、20%を樽熟で、33.10ユーロ。ミレジメものとしては、1982年のブラン・ド・ブラン、Collection Rareは16.5点で、280ユーロ。古いのでこの価格は致し方ないでしょう。それにしても手に入るのかなあ。
Bonnaire, Ver Sacrum(15.5点)は60ヶ月熟成のシャルドネをブレンド。30ユーロ。
Vauversin, Reserve Orpair(15.5点)は、レモンのコンフィ、アーモンドなどと並んで、醤油の香り!28ユーロ。
Doyard, Cuvee Vendemiaireが26.50ユーロ、Lilbert-Fils Grand Cruは22ユーロ。ともに15点です。Liebart-Regnierは、なんと18.40ユーロ!Mousse Fils, Lieu-dit Les Varosseは26.50ユーロで、ともに14.5点。

ミレジメものには、さすがに50ユーロ以下は少ないですが、Oliviert et Laetitia Marteaux, Terre d’Origine, 2002は35ユーロ。16.5点なのでお買い得なのではないでしょうか。記事で挙げられているなかで一番古いのが、1976年のLanson, Vintage Collection(18点)、750ユーロです。ただマグナムです。52%のシャルドネが支配的で、若さを感じる、という評価。もう一つは、Drappier, Carte d’Orがこちらはピノ・ノワールが特徴。17点で、149ユーロ。戦前のワインといえば、ボルドーは数々飲みましたが、さすがにシャンパーニュは1953年を飲んだだけです。そのシャンパーニュはドン・ペリで、同じ時に同年のロマネ・コンティを開けて堪能しましたが、もう10年ほど前のことです。

メゾンと異なり、レコルタンは資金繰りに苦労しているところも多く、自家のシャンパーニュをある程度の分量、長く保存しておくことがないところもあります。値段を考えなければ、メゾンのシャンパーニュは比較的手に入りやすいので、評価の高いミレジメのレコルタンを(プリムール!?)で買って寝かせておくのがお勧めですね。

さて、読者の中には2018年が年男、年女の方がいらっしゃるでしょうが、フランスには、当然ながらそういう考えはなく、その代わりに末尾が8年の20歳~60歳を迎える方に向けたワインを紹介しています。

まずは、その前に、2008年に生まれる子供の将来のために、というわけで、RVF誌が勧めるのは、ボルドーのPichon-Longueville Baron。2008年のボルドーは、最高評価ではないですが、2007年の高騰の後、少し値段が落ち着き、「買うべし!」とまで言っていますが、果たしてどうでしょう。RVF誌によると、このバロンは子供が成人する20年は確実に熟成する、と。その他、ブルゴーニュではClos de Tart、David DubandのChambolle-Musigny Premier Cru Les Sentiers。シャトーヌフ・デュ・パープのChateau Rayas、アルザスのAlbert Boxler, Pinot Gris Sommerberg SGNを。

今年20歳になる人には1998年のワイン。フランスがはじめてサッカーのワールドカップで優勝した年ということですが、ワインは、Domaine Weinbach, Gewurtztraminner Grand Cru Furstentum Selection de Grains Nobles。他には、Chateau Palmer、Confuron-Coteditot, Vosne-Romnee、シャンパーニュのAnselme Selosse 1998です。

30歳になる人にはルーブル美術館のピラミッドができた1988年のワイン。Clos Rougeard, Saumur-Champigny Le Bouerg。他にはEmmanuel Rougret, Vosne-Romanee、Bollinger R.D.、Guigal La Ladonne。78年のワインで40歳を祝う人には、Domaine Matrot, Meursaul Premier Cru Perrieres。ブルゴーニュでは赤ワインが評価された年ですが、白も熟成を経て、そのポテンシャルが出てきたようです。イベリコ・ハム、小石、蜂蜜と香りが変わっていくそうです。他にはHenri Jayer, Richebourg(もう手に入らないでしょう)、シャトーヌフ・デュ・パープのAndre Brunel Les Cailloux、Leroy, Nuits-Saint-Georges Les Boudots、Jean-Louis Chave, Hermitage rouge。(この原稿を書いている最中に、酒屋からのメールです。Louis Latou, Chambolle-Musigny 1978 が3万円、と。欲しいなあ。)

1968年は、プラハにソビエトが侵攻し、マーチン・ルーサー牧師が暗殺された年です。世相と同様に、葡萄も悲惨でした。苦し紛れ(?)に挙げられているのは、Biondi Santi, Brunello di Moantalcino。それ以外のものも、コニャックのLa Petite Champagne des AmtiquairesとポルトLa Quinta do Noval Colheita(2017年に瓶詰めなので楽しめそうです。)60歳を迎える人には1958年。この年も難しい年です。Domaine Cazes, Rivesaltes。なんとかフランスのワインですが、酒精強化ワインです。他に、Henri Gouges, Nuits-Saint-Georges Les Saint-Geprges。

1948年生まれの70歳を迎える人には、Domaine des Lambrays, Clos des Lambrays。ただし2500ユーロします。1998年のペトリュスが2800ユーロ、どちらか一方を飲ませてあげると言われたら、どうします?他には、ソーテルヌですが、Chateau Gilette sec。辛口ソーテルヌが今でも生き続けている!と評価されています。またCheval Blanc。80歳になっても、まだまだワインを味わう人にはChateau Coutet。先ほどのClos des Lambrays。なんとこの年は、アンドレ・ブルトンが音頭をとってシュール・レアリズムの展覧会が開かれた年です。伝説の時代ですねえ。

年末にポール・デュトゥンヌのキュヴェ全種いっぺんに開けたのが、私の、昨年最後の大宴会でした。(念のため、試飲会ではなく、月一回のシャンパーニュの会です。)今年はどんなワインに巡り会えるでしょうか。