連載コラム

連載コラム:伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』 Vol.51 2015.09.25

2015年フランスでの葡萄の収穫と予測

巷では、そろそろボジョレー・ヌーヴォーの声が聞こえてきています。
ということで、早いところでは8月7日からはじまった(ラングドック=ルーシ
ョン、フィトゥーのRivesalte domaine de Rombeau)収穫の様子もほぼフラン
ス全土の情報が伝わってきています。
 まずボルドーはかなりよいようです。2009年、2010年、2005年のような暑い
気候となり、収穫も早くなりそうで、酸と甘さのバランスがとても良い。
葡萄は病気もなく、過去二年よりも収穫量多い。グラン・ミレジメの予感です。
収穫自体は9月10日から12日にかけて始まりました。
 アルザスは9月2日にクレマン用の葡萄が、そして7日に、通常ワインの葡萄が
収穫を開始。ここも質が良く、腐敗もなく、酸も申し分ない。
しかし、収穫量に関しては減少する-平年比20%-の見込み。
これは7月半ばから8月半ばの乾燥、水不足のため。収穫に関しては、普通6-8週
間かかるが、今年は残留糖分を過度にしないためにはそれを延長すべきではない、
という評価です。
 プロヴァンスの26,000ヘクタールの葡萄畑では暑さとミストラルのおかげで
乾燥し、病気も発生せず、いい状態。
バランスも良く、とくに赤ワインについては興味深いポテンシャルを持ちそう。
気候としては暑くはあったが、土壌の水分のおかげで、水不足によるダメージは
受けなかった。しかし収穫量減。プロヴァンスのお得意、ロゼは1億6000万本の
見込み。
 上にも挙げたように8月7日から収穫を始めたラングドック=ルーションですが、
ミュスカは、8月末から。赤ワインについては収穫量も十分。
コルビエールと昨年AOC格付けになったテラス・デュ・ラルザック-RVF誌先月号
で大きな特集が組まれました-では雹混じりの雷雨があったようですが被害は限
定的なもよう。質も良く、前年比6%増の収穫量。
 ジュラ。ここもカビも発生せずよい状態で、平年並みの収穫量。シャルドネは
暑さに耐えたが、サヴァニャンは苦しんだ、それでも質が落ちることはなかった。
サヴォワでは9月第一週から月一位にかけて収穫。収穫量は平年並み。
 ローヌは8月末から収穫。葡萄の状態はきわめてよく、冬と春と7月の雨が土壌
の水分を保ち、乾燥を防ぐことができた。
 フェノールとアントシアンの含有量が多く、赤やロゼワインの色が良くなるだ
ろう。葡萄の成熟もすすみ、シラーとグルナッシュともども、赤は、きわめて
"exceptionnels"よくなる見込み。
 酷暑のおかげで、コルシカでも収穫が早まった。9月には既に収穫が始まり一月
かた一月半かかる。乾燥で一部苦しんだが、総体的にはよかった。

 Montgueuxで、昨年に比べ十日も早く8月29日にはじまったシャンパーニュでも
葡萄の状態はよくこちらもきわめてよい exceptionnels 、乾燥が葡萄の病気を防
ぎ、酸もあり太陽の恵み一杯を受けた。260万ヘクトリットル2で、2014年を少し
下回る。

 南西地区では、Madiran, Saint-Mont, Pacherenc du Vic Bilh, Monbazillacで
収穫が始まり、9月10日頃まで蕪城熟成が続く可能性がある。9月21日の週から一
週間から十日かけて収穫。
 ロワールの収穫は9月7日の週から。
サンセールはきわめてよい年 millesime exceptionnel で、甘さがより凝縮し、
酸度の少し低いものになるだろうと予測。ソーヴィニオンは9月半ばから、ピノは
14日から収穫。
 ブルゴーニュは、かなり良い出来で、 un tres grand millesimeの評価。
乾燥が収穫に影響し、前年を下回る。Chablisと Irancy、 Saint-Bris8月31日から
9月1日にかけて雹を伴う嵐に見舞われ、被害にあったのは10-15%だが、グラン・
クリュ(Les Clos, Blanchots) やプルミーエル・クリュの一部にも影響。
雷雨の後、烈しい日射しは、葡萄に良くない影響を与え、しかも葡萄は成熟してい
るため、一刻も早い収穫が望まれる。一部では、機械摘みや共同作業も行われる。
 総じて言うと、夏の猛暑による乾燥が葡萄の病気を防いだが、水不足にもなって
いるところもあり、質はよいものの、収穫量は思ったより伸びず、フランス農水省
統計局(8月19日付)の収穫量予測によると、2015年の収穫量は4645万ヘクトリッ
トルと予想され、2014年をわずかに下回る。
なかなか期待できそうな年で、来年のプリムール評価が楽しみです。

 さて、話は変わって、先月号のRVF誌に「ワインに刺激された愉快なビール」な
る記事があり、面白かったので、ほんのさわりを紹介。
 フランスでもベルギー・ビールの成功があって、ビールの評価は高くなっていま
す。
もともとアルザス地方ではよく飲んでいましたし。今年の3月にはパリの Tapis Rouge
で最初のPlanete Biere サロンが開催され、400種ものビールが提供されました。
 さて、記事によると、このビールの世界にもビオが広まっている。またシャンパ
ン方式を取ったり、ワインと混合したりするタイプもでてきています。
高評価だったものを一部紹介します。
ベルギー・ビールと書いていないものはフランス産です。
 20点満点中16点の高評価が、その名もベルギー・ビールの Petrus。
木樽熟成をうたっていますが・・。15.5点が、Brasserie de Vezelay。こちらはモ
ルトがビオだそうです。さらに Volcelest, Biere brune 。15点は、Rouget de Lisle,
Perles NoiresとPerles das les vigne。これには GewurtstraminerとRiesling が
混合されています。14.5点は、L’Audacieuse, Hystest Hysmousse 。
また Dubuisson, Bush de Charmes。ベルギー・ビールですが、名前にあるよう
にムルソー・シャルム混合。もう一つが、 Malheur, Cuvee Royale brut。
これは、ルミュアージュとデゴルジュマンをしているそうです!?
 最後に新しいシャンパーニュが秋にでます。
 新しい高級キュベを追求してきたモエ・シャンドンが、新製品MC III をリリース。
年間25000本で、2003年のステンレス槽発酵のワイン+2002, 2000, 1998年の楢の大
樽貯蔵+1999, 1998, 1993年の瓶ワインを混合した REMISE EN CERCLE 方式を採用。
 もう一本がアンリ・ジロー。ゲランの香水la petite robe noireに合わせた、同
名のシャンパーニュ La Petite Robe Noire Box by Didier Ludot & Champagne Henri
Giraudを発売。
ヴィンテージのオートクチュールのコレクターの第一人者、La Petite Robe Noire
ブランドのオーナーでもあるDidier Ludot氏との出会いから生まれたとのことです。