連載コラム

遠藤利三郎の「読むワイン」~利三郎文庫便り Vol.13 2018.11.02

「美食家たちが消えていく」を読む。

パリの人気レストランで
グルメ評論家が、オマールのラビオリを食べながら
コメントをしている最中に殺された。
それはグルメ評論家が次々と殺されていく、
連続殺人事件の幕開けに過ぎなかった。。。というお話。
ストーリー展開にスピード感があり、
激流のような展開にいつしか読み手も呑み込まれている。

登場人物がちゃっと作る料理が
簡単なレシピなのに随分と美味しそうに表現されていたり、
レストランの描写がしっかりと書き込まれているので、
なかなか料理好きな推理小説家だなと思っていたら、
筆者はパリで活躍した元レストラン評論家だと。なるほど。

作中で主人公に謎解きの手伝いをする、
ヴァヴァスールという老人も面白いキャラクターだ。
セーヌ川の河原で隠遁していてホームレスのような生活なのに、
美食を楽しみ、セーヌにたらしたロープを手繰ると
高級ワインのボトルが川面に現れる。
(川の中の保存状態は完璧だとか。)
公園の中にテントを張ってワインを土中に埋めていたロベールを彷彿させる。
シリーズ3作目ということなので、早速1作目と2作目を注文。

書名:美食家たちが消えていく
著者:アレクサンダー・キャンピオン
出版社:コージーブックス




「刑事コロンボ 別れのワイン」を観る。

たまにはDVDで懐かしのテレビドラマを。
ワイナリーの経営者が犯人という、シリーズの中でも珠玉の作品だ。

このドラマは、アメリカのワイン法解説でネタとしてよく使っている。
欧州の有名ワイン産地名が
アメリカ産のジェネリックワインの名称として
普通に使われていた時代。
主人公のコロンボ刑事も
アメリカ産ワインを指してクラレット(ボルドーワイン)や
バーガンディー(ブルゴーニュワイン)と呼んでいるのだ。

最近は受講生の反応が鈍いなと思っていたら、
ドラマの制作は1973年。
コロンボを知らない世代が増えてきたということか。(^^;

ドラマの最後にデザートワインが登場するが
フィアスコボトルに詰められたワインの銘柄は、
なんとモンテフィアスコーネ。
これは確かにアマービレ(中甘口)も造られているが、
通常はまず辛口だ。

なんてマニアックなものを、と思ったが、
1970年代といえば、
エスト!エスト!!エスト!!!ディ・モンテフィアスコーネは
観光客相手に大量に安物を造っていた時代なので、
アメリカ人相手には中甘口もポピュラーだったのかもしれない。
(当時アメリカではドイツの中甘口ワインが
爆発的に売れていた時代だ。)

ワインにずぶの素人であるコロンボが
推理を利かせてブラインドでワインを当てたり、
アリバイを崩すカギが、
犯人の卓越したテイスティング能力にあったりと
ワインファンにとってはたまらないドラマ。

題名:DVD 刑事コロンボ傑作選(別れのワイン/野望の果て)
主演:ピーター・フォーク
販売元:ジェネオン・ユニバーサル