連載コラム

遠藤利三郎の「読むワイン」~利三郎文庫便り Vol.10 2018.06.29

「おいしいワインの選び方」を読む。

ワインと料理のマリアージュは、
自分で意識してチョイスしだすと
パズルを解くようで楽しいものだ。
しかし、慣れないと戸惑うのも事実。
(外したら外したで、それも面白いのだけどね。
私なんぞ、何度凄まじいマリアージュを試してしまったことか。)

この本はマリアージュを考えるのに良き水先案内人だ。
何となくのイメージでマリアージュを提案するのでなく、
杉山明日香らしく理論的に
しかも初心者にも解りやすく書かれている。
何種類かのワインを並べて、
何故この料理と相性がいいのか、悪いのかを
ワインと料理の味わいの構成から論理立てて
解説しているのが非常に理解やすくて好感が持てる。
ワインを人に例えているのも面白い。
(これまた理論的にタイプ分けしているのが杉山さんらしい。)

著者の杉山氏は予備校での数学講師が本業。
解りやすい講義なんだろうな。

題名:おいしいワインの選び方
著者:杉山明日香
出版社:イースト・プレス




「証拠」を読む。

ワインを小道具にしたサスペンスだ。
寝る前にちょっとだけ読むつもりが
止まらなくなり一気に読んでしまった。
眠い。

中身がすり替えられたらしいスコッチウイスキーが
事件の発端だった。
主人公はワインショップのオーナー。
異なる産地のラベルなのに中身はすべて同一のワインに気付く。
架空のシャトーに存在しないネゴシアン。
そして猟奇的な殺人事件に巻き込まれ、
偽造ワインの一味らしき者に襲撃され。。。
文字通りの息詰る展開、ページを捲る手が止まらない。

原題はPROOF。
「証拠」と「アルコール濃度 (alcoholic proof)」を掛けているのが
洒落っ気があって面白い。

そういえば、ネタをひとつ。
作中でボージョレ・ヌーヴォーの解禁日が
11月15日と書かれていた。
おやと思い奥付を見ると、なるほど1984年の作品。
昔は解禁日が11月15日と決められていたが
土日にかかると運送業者が休みで販売に影響がでるために
1984年から現在の第3木曜日に変更になった。

題名:証拠
著者:ディック・フランシス
出版社:早川書房