連載コラム

浅妻千映子の最新レストラン事情 Vol.01 2017_05_05

銀座シックスとロシア料理

最近話題のスポットといえば、なんといっても銀座シックスだろう。銀座6丁目、松坂屋の跡地は想像以上に広い。レストランフロアは6階と13階だ。

13階には高級レストランがゆったりと店を構える。
そんな中で、「ザ・グラン銀座」という店には度肝を抜かれた。500坪という空間に、フレンチレストランやバーはもちろんのこと、結婚式ができるチャペル仕様の部屋や、広い宴会場、茶室まであるのだ。個人的には使う用途が見つけにくいのだが、バーなんかをちょっと覗いてみても面白いかもしれない。シェフズテーブルと呼ばれるカウンターに、通常の2~3杯分は入りそうな大きなシャンパーニュグラスが並んでいた。「シャンパンをダブルで」なんてオーダーができるのかもしれない?

13階から1店お勧めするとするなら、広尾の人気フレンチ「ア・ニュ」の姉妹店「ロムデュタン シニエ ア・ニュ」だろうか。カウンターがあって、おひとり様も歓迎とのこと。なんといってもお皿の上の料理が美しく、一皿運ばれるたびにうっとりできる。今どき珍しいワゴンのデザートが出てきて、好きなものをたっぷりチョイス。食後のひと時まで盛り上げてくれるのが嬉しい。

6階に場所を移すと、こちらはカジュアルな店が並ぶ。ワイン好きならオザミグループの「ビストロ オザミ」がやはりイチオシだ。赤いチェックのクロスがしかれたテーブル、オープンテラス風になった空間。なにしろワインへの愛情で成り立っているグループだから、気軽な店でもワインリストはしっかりとしている。飲んで食べてワイワイ楽しむには最高だ。

もうひとつ、「ソルト グリル&タパスバー ルーク・マンガン」というオーストラリア料理店もお勧めしてみたい。実は、ここまで書いているのは、オープン数日前のパーティーで各店を回ったときの様子からなのだけれど、この店で出てきた料理がどれも美味だったのである。オージービーフを使ったミニハンバーガーや、デザートもなかなかの味。ワインのみならず、ビーツを使った美しい色のカクテルも目を引き、アルコール全般が充実しているようだった。タパスは数百円からあるし、使い勝手もよさそうである。

さて、オープニングパーティの3日後、用あって母と銀座を訪れた。用事が終わったのはお昼前。よし、と、六丁目を目指した。この日は、ちょうど銀座シックスのグランドオープンの日にあたり、ならば予習をいかしてランチは6階で、と思ったのだ。

ビルに近寄ると、その考えが甘かったことに気づかされた。レストランはおろか、ビル中に入るのさえ制限がかかるほどの人、人、人……。残念だが最新スポットでのランチは早々に諦め、気持ちを切り替えて、向かいにあるビル、イグジットメルサ(旧ニューメルサ)へ向かった。ここには西原にある「美虎」という女性シェフの中華料理店の姉妹店が、今年2月にオープンしている。

名物のハマグリそばでも食べようかと頭を中華モードに移しながらレストランフロアへ向かったのだが、エレベーターを降りて、美虎より先に目に入ってきたのは、「渋谷ロゴスキー」の看板だった。

「渋谷ロゴスキー」は1951年創業のロシア料理店だ。駅からほど近い桜ヶ丘という場所に長くあり、その後、すぐ近くの東急プラザのレストラン街に移転した。2年ほど前、渋谷駅付近の大規模開発に伴って東急プラザが取り壊されたとき、当然、店も消えたのだが、ここ銀座に場所を移していたとは知らなかったのである。母も私も渋谷育ちで、ロゴスキーには思い入れがある。特に母は、祖父と何度も訪れた思い出の店の一つのようで、是非ここで食べたいと言い出した。

そんなわけで、この日のランチはロシア料理となった。2000円前後のセットがある。ピロシキをどの味にするかなど、ちょっとしたやり取りを店のスタッフ、すなわち金髪のロシア人美女とした後、テーブルの上にあったワインリストを何気なく手に取ってみた。

ロシア料理店だ。当然といえばそうだろう。しかし、あまりに当たり前に、東欧ワインがずらりと並んでいることに驚いた。例えば、今月のグラスワインの産地ラインナップはこんな感じだ。スパークリングはロシアとジョージア(グルジア)。白ワインはジョージアとロシア。赤ワインは、ジョージア、ブルガリア、モルドバ、ルーマニア。ボトルもいろいろ用意があって、ムートンやオーパスワンを手掛けた方のロシアワインなんていうのもあるんですね。いやあ、勉強不足。知らなかった。それにしても、東欧ワインを一度にこれだけ飲める店は、かなり貴重ではないだろうか。

料理のほうはといえば、なんといってもボルシチが最高だ。透明感があって洗練された味わい。とても軽く、野菜たっぷり。味に加えて歴史の後押しもあるのだから、この一皿は、今をときめくどんなレストランにも引けを取らない品格である。食べ終わって店内を見渡すと、満席ではないか。ご年配の一人客もいる。ボルシチ目当てのお客様が多そうだが、仲間と一緒に、ワイン目当てで訪れるのも面白いかもしれない。

最後に、話題を戻してもう一つ。銀座シックスでは、地下2階にあるお酒売り場が楽しい。広い面積の「ワインショップ・エノテカ」はもちろん、「いまでや銀座」もお勧め。入手困難な国産ワインや貴重な日本酒、高級焼酎などがずらっと並んでいます。

■ザ・グラン 銀座
http://www.grandginza.com/
■ロムデュタン シニエ ア・ニュ
https://ginza6.tokyo/shops/1237
■ビストロオザミ
https://auxamis.com/bistro
■ソルト グリル&タパスバー ルーク・マンガン
https://www.lukemangan.com/restaurants/salt-grill-tapas-bar-tokyo/
■チャイニーズダイニング美虎 銀座
http://www.miyuki-igarashi.com/ginza.html
■渋谷ロゴスキー
http://www.rogovski.co.jp/oshokuji3.htm
■ワインショップ・エノテカ
https://ginza6.tokyo/shops/1035
■いまでや銀座
https://ginza6.tokyo/shops/1000