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アカデミー・デュ・ヴァン大阪校 
10周年記念 ワインセミナー
ネッビオーロの謎を解き明かす
〜イタリア・ピエモンテより生産者来日による特別セミナー〜
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イタリアを代表する葡萄品種ネッビオーロは、バローロやバルバレスコといったイタリア最高のワインを造りだしています。今回は、北イタリア・ピエモンテ州の3つのワイナリーから生産者をお招きして3つの違うゾーンで同じネッビオーロ種から造られたワインをブラインドで試飲し、味わい、香りなどの違いを体感しました。

文:佐川深雪
Miyuki Sagawa
ピエモンテ州を代表するワインの造り手たちに、ネッビオーロの特性やワイン造りにおける最新事情など、興味深いテーマについてお話いただきました。
左から順にマルヴィラ社/ロルベルト・ダモンテ氏。ランガ・イン輸出協会ディレクター、ピエモンテ州農業担当評議員/ディノ・イカルディ氏。アルファネット/佐々木裕人氏。コンテルノ・ファンティーノ社/ファビオ・ファンティーノ氏。モンティ社/パオロ・モンティ氏
マルヴィラ社/ロルベルト・ダモンテ氏
ロエロ・アルネイスをはじめ、伝統的な醸造技術とその地の特徴を生かしたワイン造りに勤しむ。また、ブドウ畑に囲まれた小高い丘の上では、ヴィッラを改装したレストラン・プティホテル「Villa Tiboldi」を営む。

ランガ・イン輸出協会ディレクター、ピエモンテ州農業担当評議員/ディノ・イカルディ氏
幕張メッセで開催された「FOODEX JAPAN 2008」参加に伴い、イタリア・ピエモンテ州を代表するワインの造り手らと共に来日。丹念に造られたピエモンテのワインを広く普及させるために尽力。

アルファネット/佐々木裕人氏
イタリア在住歴11年。イタリア全土のワイナリーを巡って優良ワイナリーを発掘し、日本のインポーターとの架け橋的役割を担う。今回のセミナーでは通訳を兼任。

コンテルノ・ファンティーノ社/ファビオ・ファンティーノ氏
バローロの立役者とも言われるワイナリーの、オーナーのご子息。「バローロを造る基本は畑から」が信条だけに、ここで働く11名はほとんど畑にいるそう。カンティーナでは最新技術も導入。

モンティ社/パオロ・モンティ氏
モンテフォルテ・ダルバ、ランゲ地方を中心にブドウ畑とカンティーナを持つ。
伝統を守りながら最新の醸造法を巧みに取り入れたバローロは、繊細さとエレガントさが身上。

ネッビオーロの歴史、3種類のクローン(Michet,Lampia, Ros?)の違い、醸造方法の昔と現在の違いなどについて
イタリアの中でもワイン生産技術に長けた地域として広く知られる、ピエモンテ州。イタリア北部の、フランスとの国境に位置し、夏は非常に暑く、冬は積雪がある、気象条件の厳しい地域ですが、長い歴史を経て、さまざまな条件が重なり合い、非常に高いポテンシャルを持っています。土着品種のネッビオーロは、バローロ、バルバレスオコ、ロエロなどに用いられています。ネッビオーロは歴史ある品種で、古くは古代ローマ時代に造られていたと言われ、1200年代以降の文献に数々の記述が残っています。その名の由来は諸説ありますが、収穫時期に霧が立ちこめることから「Nebbia(霧)」に由来するとも。ランゲ地方特有の急勾配の土地柄もまた良質のブドウを生み出す条件にもなっています。
ネッビオーロのクローンはいろいろあります。ミケ(Miche)、ランピア(Lampia)、ロゼ(Rose)の中でも一番有名なのがミケ。一部の生産者を除いて、一般には単一ではなく混ぜて使います。近年、ロゼの生産は減少傾向にあり、ミケとランピアが多くなっています。ランピアは縦長で粒が小さくて皮が厚く、3つの中でクオリティが一番良いとされていますが、これを単一で使っても生産者の思い通りのワインができるわけではありません。ランゲ地方にある土地でもその環境や日照条件などさまざまな条件により違いが生じますから、クローンの種類による良し悪しはなく、生産者ごとに見解は異なります。何百年もの歴史の中で積み重ねて来た結果、いいワインが生まれるのです。(お話:ディノ・イカルディ氏)

昔と今の醸造方法の違いについては、近年、科学的な研究の成果により、発酵温度や酵母などに関するデータ化が進み、世界中、醸造レベルが向上しています。科学的データに基づいた製造法に特化する大手ワイナリーもありますが、まずブドウの出来映えを見て醸造期間や方法を調整する伝統的な手法をとるワイナリーもあります。我々は科学的データは参考程度に、今までの経験や伝統に基づいてワインを造っています。我々は、世界マーケットに合わせてワイン造りをしているわけではありませんが、やはり時代の流れというものはあります。例えば、ひと昔前は凝縮味のある濃い香りが流行りましたが、近頃は飲みやすく、飲み疲れしないタイプが見直されています。それは、イタリア・ピエモンテだけでなく、全体的な傾向のようです。醸造法においても良し悪しではなく、各ワイナリーの方針や、飲む人の判断によります。昔はブドウの出来さえ良ければいいワインができるという考えでしたが、現在はブドウの出来映えが完璧でなかったとしても、高度な醸造技術で補えるようになって来ています。(お話:ロルベルト・ダモンテ氏)

大樽とバリックの違いについては、歴史的に長く使われているのは大樽(5000L)で、耐久性やコスト面、扱いやすさなどの利点があります。バリック(225L)が取り入れられるようになったのは、1980年代から。畑ごとや収穫単位ごとなど、小単位で熟成・発酵できるのが利点です。同じ畑の中であっても日照条件が違えば、ブドウの成熟加減も異なります。完熟したブドウだけを収穫して、小単位で熟成させるにはバリックが重宝します。ただ、同じメーカーの同一材質の樽であっても、香りや熟成具合に差異が生じることがあります。大樽であれば樽の中身は同じ出来ですが、バリックだと樽ごとに異なる個性をどうブレンドするかが重要になります。
例えば、バローロとして収穫しても、実際に思った通りの熟成でなければ、それはバローロには使わず、ランゲ・ロッソに用いるということもあり得ます。クオリティの安定化のため、1メーカーの1種類のバリックに限定せず、多種類のバリックを試すワイナリーも多いのです。イタリアでバリックを使い始めた頃に比べ、最近は木の香りが上品なバリックが安定供給されるようになりました。また、生産者も使い方を深く理解するようになり、樽特有の香りに嫌味のない、上品な香りが多くなってきました。大樽とバリックについても良し悪しではなく、生産者の方針によるところが大きいのです。(お話:パオロ・モンティ氏)

いよいよテイスティング。樽、マセラシオン、醸造方法の違いなど、話は尽きませんが、それらを体感するため、7種のワインを試飲しました。

【試飲ワイン(テイスティング順)】
1番目/ネッビオーロ・ダルバ DOC 2005 モンティ
2番目/ロエロ スペリオーレ DOC モンベルトラーモ 2003 マルヴィラ
3番目/ランゲ・ロッソ DOC モンプラ 2005 コンテルノ・ファンティーノ
4番目/バローロ DOCG ヴィーニャ・デル・グリース 2004 コンテルノ・ファンティーノ
5番目/バルバレスコ DOCG ヴァノトゥ 2004 ペリセッロ
6番目/バローロ ブッシア DOCG 2003 モンティ
7番目/ロエロ スペリオーレ DOC トリニタ 2003 マルヴィラ

ブラインド・テイスティングの際、佐々木氏からヒントが出されました。1〜3番目のワインについては、「ランゲ・ロッソだけネッビオーロ単一ではなく、その他はネッビオーロ100%です」。また、4〜7番目のワインに対しては、「一般的な表現で言えば、バローロは男性的、バルバレスコは女性的、ロエロは中性的です」。

●ネッビオーロ・ダルバ DOC 2005 モンティ(お話:パオロ・モンティ氏)
ネッビオーロ・ダルバはネッビオーロ100%。バローロよりもフレッシュさと飲みやすさを追求しました。新樽ではなく、2年目の樽で1年熟成。ネッビオーロはタンニンが強いので、6カ月の瓶内熟成でタンニンをやわらげました。年間生産量は5000本。こういう色合い(美しいガーネット・レッド)が本来のネッビオーロ・ダルバなんです。このマセラシオンは6日間。色の濃さとマセラシオンの期間はあまり関係性がありません。樹齢の若い木は、バローロやバルバレスコではなく、ランゲ・ロッソに使うことが一般的です。

●ロエロ スペリオーレ DOC モンベルトラーモ 2003 マルヴィラ(お話:ロルベルト・ダモンテ氏)
ネッビオーロは繊細なブドウで、暑さに敏感です。このヴィンテージの、2003年は猛暑でした。暑い年は濃いワインができるイメージがあるかもしれませんが、ネッビオーロは猛暑だと色が薄くなります。このワインは、マセラシオンが3週間程、450L樽で2年近く熟成。ネッビオーロはタンニンが強いため、じっくり時間をかけてまろやかさを醸します。ロエロ地方が貝殻や化石などを含んだ砂地で、ミネラルが多いこともあって、酸がキレイで、しっかりした味が出せます。長い熟成を経て、丸みを帯びた感じ。僕達はワインをよく女性に喩えますが、これを女性に喩えるなら26歳くらいですね(笑)。現行は2004年をリリースしていますが、皆さんが試飲されたのは、2年半熟成させたもので、イタリアから直接お持ちしました。保存状態にもよりますが、ネッビオーロは15年、20年と長期保存ができるブドウなのです。

●ランゲ・ロッソ DOC モンプラ 2005 コンテルノ・ファンティーノ(お話:ファビオ・ファンティーノ氏)
ネッビオーロ・ダルバと違って、ランゲ・ロッソはブドウを混ぜることができます。このワインは、ネッビオーロ45%、バルベーラ45%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%。バルベーラがフルーティさを、ネッビオーロが骨格のしっかりとした味を醸し、カベルネ・ソーヴィニヨンでスパイシーな香りを表現しています。バルベーラ、
ネッビオーロ、カベルネ・ソーヴィニヨンの順に別々に醸造。100%新樽で18カ月熟成。ボトル詰めの1カ月前に全部を混ぜました。年間生産量は8800本。ピエモンテにとって2005年は、ブドウの出来がいい年でした。まだ若いのでタンニンがしっかり感じられますが、繊細さよりも力強さが前面に出ています。このワインを造り始めたのは1985年。当初はカベルネ・ソーヴィニヨンを使わず、ネッビオーロ50%、バルベーラ50%。1990年にカベルネ・ソーヴィニヨンを植え始め、1993年から現在の比率に。1985年頃はまだブドウをブレンドすることが一般的ではなかったので、とても話題にもなりました。カベルネ・ソーヴィニヨンについては、ランゲ地方で昔からよく栽培されていましたから、これを取り入れることは、ごく自然なことだったのです。85?91年まではテーブルワインで、92年からDOC ランゲ・ロッソになりました。このバローロのマセラシオンは6日間。同じ畑でもブドウの完熟度合が違うため、別々に醸造しています。バリックは50%新樽、残り50%が2年目の樽です。バリックで14カ月、大樽で14カ月、瓶詰めから1年後に販売。年間生産量は約7000本です。

●バローロ DOCG ヴィーニャ・デル・グリース 2004 コンテルノ・ファンティーノ(お話:ファビオ・ファンティーノ氏)
このワインは名前のとおり単一畑で、年間生産量は約15000本。2004〜2007年はピエモンテのブドウの出来がいい年でした。マセラシオンは1週間程。最低2年間の熟成という決まりに従って、2年のバリック樽熟成を経て、瓶内熟成1年。2004年に関しては、タンニンも、酸もしっかりしています。酸がしっかりしているということは、通常よりも長期熟成に耐えられるということです。

●バルバレスコ DOCG ヴァノトゥ 2004 ペリセッロ(お話:佐々木裕人氏)
今回は造り手が来日しておりませんので、代わりにご説明します。このワインは、樹齢45年の木から造っています。100%新樽を使って、25カ月熟成させました。発酵時は自然酵母のみ。ステンレスタンクだけで発酵し、
発酵が終わった後、バリックに入れます。年間生産量は約15000本。


バローロ、バルバレスコを試飲して頂きましたが、どんな印象でしたでしょうか。ヴィンテージやブドウが同じでも、造り手によって味わいが随分異なります。ですから、それを画一的に言い当てることは、実は非常に難しいことなのです。


●バローロ ブッシア DOCG 2003 モンティ(お話:パオロ・モンティ氏)
樹齢25年と45年の木からできています。このバローロのマセラシオンは6日間。同じ畑でもブドウの完熟度合が違うため、別々に醸造しています。バリックは50%新樽、残り50%が2年目の樽です。バリックで14カ月、大樽で14カ月、瓶詰めから1年後に販売。年間生産量は約7000本です。


●ロエロ スペリオーレ DOC トリニタ 2003 マルヴィラ(お話:ロルベルト・ダモンテ氏)
約8ヘクタールの畑があって、その中でいいブドウだけを採取しています。年間生産量は約18000本。22カ月450Lの樽で熟成。80%は新樽で、残り20%は2年目の樽を使っています。その後、瓶詰めをして1年間熟成しています。ちなみに、2005年のビンテージからDOCGに格上げになり、2009年頃からリリースされます。

ネッビオーロのワインに合う料理は?
骨格のしっかりとした深みのあるバローロや、優しい味わいのバルバレスコ、華があってチャーミングな香りのロエロなど、7種テイスティングを終え、受講者の方から質問がありました。「これら(ネッビオーロ)のワインに合うのはどんな料理?」に対し、「肉料理の中でも特に赤身の肉。例えば、ピエモンテの郷土料理には赤身の肉を生で使う(タルタルに似た)料理があって、それによく合います」と、ロルベルト・ダモンテ氏。また、「日本の食べ物で合いそうなものは?」という質問には、「来阪前に名古屋で食べた、名古屋コーチンのいろいろな刺身にも合うと思った」そうです。さらに「脂の乗った魚なら、バローロよりも若いネッビオーロのワインにも合うでしょう」とのことでした。

セミナー終了後、フリーテイスティングにてセミナー以外のワインをテイスティング
今回はワイナリーの皆様のご好意で、隣の教室に、テイスティング以外のワイン12種類が用意されました。「今日はピエモンテスタイルということで、楽しく全部飲み干して下さい(笑)」と、ロルベルト・ダモンテ氏。セミナー後の束の間のひととき、受講生の皆さんはイタリアの開放的なムードも満喫された様子でした。


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