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講座体験コラム
アカデミー・デュ・ヴァンのレッスンの詳細をレポートした講座体験コラムです。
 ワイン総合コース(本科講座) STEP-1
 ワイン総合コース(本科講座) STEP-2
 ワインABCコース1(東京校)
 研究科コース ワインで語るグローバリゼーション(東京校)
 O.N.A.O.O認定 オリーブオイル基礎講座(東京校)
 研究科コース 葉山考太郎の偏愛ワイン道(東京校)
 ビギナーズ向けカジュアルコース「女性のためのワイン講座」
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アカデミー・デュ・ヴァン 講座体験コラム 研究科コースワインで語るグローバリゼーション
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ワイン・ドキュメンタリー映画『モンドヴィーノ』でも取り上げられたワインのグローバリゼーション。ワインの世界でも急速に進むグローバリゼーションは今最も熱心に議論されるべきトピックの一つです。世界システム論/歴史社会学の観点から、アカデミックにワインのグローバリゼーションを紐解く講座の様子を詳細にお伝えしてみましょう。
世界システム論/歴史社会学の観点からワインのグローバリゼーションを洞察する講座
講師の山下範久先生は立命館大学で教鞭をとるグローバリゼーション論の専門家。 毎回テーマを変えて歴史社会学の観点からアカデミックにワインのグローバリゼー ションを紐解いてゆきます。
 1976年のパリ対決以降、ワインの世界でも急速に進むグローバリゼーション。いまや世界中のあらゆる産地で、1万円以上の値段をつけた超高級ワインと、クリーンかつ品質の安定した日常消費ワインの両方が造られるようになりました。しかしその一方で世界中どこにいっても同じような味のワインが生産されるようになったのも事実です。数年前に各国で話題をさらったワイン・ドキュメンタリー『モンドヴィーノ』はこの“ワインのコカコーラ/マクドナル化現象”を厳しく糾弾したものでした。グローバリゼーションによって今ワインの世界に何が起こっているのか。現代ワイン界で最重要といえるグローバリゼーションについて社会学的な観点から洞察を試みてゆくのが本講座です。
 講師を勤めるのは、立命館大学で教鞭をとる山下範久氏。山下先生は、アナール学派の歴史哲学と世界システム論を研究する気鋭の論客であり、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、米国ワインエデュケーター協会認定スペシャリスト・オブ・ワインの両資格を取得するほどのワインフリークです。ワインの専門家がグローバリゼーションを語ることはあっても、グローバリゼーション論の専門家がワインを題材として取り上げることは、洋の東西を問わずとても稀です。その意味で本講座は、世界でも類を見ないユニークなものとなっています。
全5回の講座では毎回、知的好奇心を刺激する興味深いテーマが。今回のテーマは「コーヒーとワインを比べる」
本日のテーマは「コーヒーとワインを比べる」。 講義では、コーヒーの世界と比較 しながら、グローバル化によってワインの世界にいま何が起こってきているかを考察 しました。
  全5回の授業では各回テーマが設けられ、そのテーマについての講義のあと、関連するワインをテイスティングします。これまでは、「ワインにとって近代とは」、「テロワールの構築主義について」、「『趣味の良さ』について」といったテーマが設けられてきました。
 山下先生の講義では、毎回びっくり箱のようにさまざまな切り口の話が飛び出してきます。たとえば第3回目、ワインの「趣味の良さ」を語る際には、フランスの偉大な社会学者であるピエール・ブルデューの研究や、日本の哲学者である九鬼周造の名著『「いき」の構造』から切り口を借り、受講生と議論しながらテーマが深められたそうな。実に知的で刺激的なレクチャーです。
さて、今回私が体験受講する第4回目は「コーヒーとワインを比べる」です。ワインと同様に世界中で輸出され消費されるコーヒーですが、グローバル化によってコーヒーはワインに、またワインはコーヒーの世界に似てきている、という現象が起きているそうです。そのため前半の講義では、双方を社会学的な観点で比べてみることとなりました。またワインのテイスティングコメントの中には「コーヒーの香り」という表現がありますが、コーヒーのテイスティングコメントにも「ワインの香り」という表現があり、他にも両者には共通の言葉で表現される香りがあるそうです。後半のテイスティングの授業では「コーヒーの表現に含まれる表現要素を多く備えているブルゴーニュワインを、コーヒーとともに味わいながら、両者の間に横たわる言語の恣意性を考えてみよう」という興味深い授業となりました。
コーヒーに似てくるワインの世界 いま、ワインになにが起こっているのか。
  まず講義は、グローバル化の影響によってワインはコーヒーの世界に似てきている、というお話から始まりました。たとえば、コーヒーの世界に象徴的だったグローバル格差の問題が、いまワインの世界にも忍び寄ってきているといいます。先生はコーヒーの歴史と現状を説明しながら、ワインの世界との比較を語ってくださいました。その一部を挙げてみますと…
「今世界中でコーヒーが作られるようになったきっかけは、ヨーロッパ人が植民地として獲得した領土にコーヒーの苗を持ち込み、そこにプランテーションを開いたという歴史から始まります。元来、植民地化した土地には多様な植物が栽培されていましたが、入植者はそれらを切り倒し一斉にコーヒーを植えて、単一の作物だけを栽培するモノカルチャーの農業経済を作りました。そのため20世紀後半以降に脱植民地化した後も、他の事業を起こしづらくなり、また、何世代にも渡り長い年月をかけてコーヒーを作り続けてきた“伝統”によって、たとえ利潤率が少なく貧困から抜け出せなくとも、コーヒー生産を継続せざるを得ない状況になりました。さらに1970年代には利潤率の低いコーヒーやバナナ、サトウキビなどの産業が集中する南半球の発展途上国と、鉄鋼業やコンピューターなど利潤率の高い工業製品をつくる北半球の先進国の間に、南北問題といわれる経済格差が生まれてきました。このようにかつてはコーヒーの世界に象徴的だったグローバル格差の問題が、いまワインの世界にも忍び寄ってきています。ワインにおいては先進国の中にも途上国的な観点が生まれてきて、たとえばカルフォルニアのナパやソノマに比べ、フランスのラングドックやプロヴァンス、ロワールに存在するマイナーなアペラシオンは、第3世界的にワインの値段の低下で苦しんでいるという現状が。それらの地域では廃業せざるを得ないワイナリーも増えてきています」。
 さらにワインがコーヒーの世界と似てきていると思われるものの一つには、アジア、中国、ロシアなどの新興国の消費市場の急拡大、もあげられるそうです。「特に中国やロシアではコーヒーの消費量が激増し、それが価格変動を激しくしています。またそのような需給バランスの不安定化を受けて、グローバルな投機マネーの影響が増しています。またワインも同じく、アジアでのシェアが1986年〜90年には1.9%だったものが、2007年には7.2%と増え、ヨーロッパでワインを飲むシェアが減少しているにも関らずアジアのみが急激に消費が増大しています」。
 先生はこのようにワインの世界に今何が起こっているかを、コーヒーと比べながら具体的にグラフや数字を掲げて説明してくださいました。
ワインに似てくるコーヒーの世界 スペシャルティ・コーヒーの出現
テイスティングではワインとコーヒーを表現する言葉をくらべて、両者の間に横たわ る 言語の恣意性の深さや浅さも考えてゆきます。
 またその一方で、グローバル化によってコーヒーもワインの世界に似てきている、といいます。そのひとつがスペシャルティ・コーヒーの出現です。
 コーヒー市場は、90%以上がニューヨーク先物市場の国際価格に連動する、大手資本会社が扱うコマーシャルコーヒーやプレミアムコーヒーが占めています。しかし近年、コーヒー栽培に最も理想的なマイクロクライメットが生み出す顕著な香りを持ち、各豆の産地に固有の特徴を反映した、高価格高品質のコーヒーが現れており、それが「スペシァルティ・コーヒー」といわれるそうです。またスペシャルティ・コーヒーの多くは、テロワールを表現する高品質のコーヒーを造ることで、コーヒー全体の質の向上をはかるとともに、生産者に高い利潤をもたらすことをも目的としているそうです。
 先生は「コーヒーの世界は過去何百年の歴史の中で、圧倒的に価格競争を主体で話が進んできましたが、近年ではグローバル化のさらなる展開によって、アペラシオンワインのように産地をブランド化し高付加価値化されたコーヒーが現れ、それがスペシャルティ・コーヒーともいえます。一方ワインの世界は、アペラシオン制度のように、産地のブランド化が確立しつつありましたが、グローバル化によって、コーヒーの世界のようにブランド価値の弱い低価格帯の大衆商品に関しては、市場から撤退せざるを得ない厳しい状況に置かれてきています。つまりコーヒーとワインの世界が近寄ってきているという現状がみて取れるかと思います」と興味深い考察を語ってくださいました。
テロワールをみごとに表現する スペシャルティ・コーヒーをテイスティング
ブラジルのヴィラボアとエチオピアのイルガチェフェ・ウォルカのスペシャリティ・ コーヒーに含まれる表現要素を多く備える、ブルゴーニュワイン4種を比較試飲。 共通する香りを拾いながら比較することで、より明確に各風味を感じることができま した。
講義のあとはテイスティングの時間です。コーヒーをテーマにしたこの回には、ワインに加えて先生が厳選したスペシャルティー・コーヒーを2種、テイスティングしました。ひとつはブラジルのヴィラボア、もうひとつはエチオピアのイルガチェフェ・ウォルカ(先生が自ら、これらのコーヒーを煎れてくださいました!)。実際にテイスティングしてみるとそれぞれが個性豊かで際立った素晴しい香りを持ち、豆の産地固有の特徴をしっかり備えていることがわかります。コーヒーにもワインと同様、非常に素晴しいテロワールを体感できる世界があることをしみじみと受け止めた貴重な体験となりました。その際、コーヒーのテイスティングに用いられる用語についても学んだのですが、ワインと共通する表現・語彙が多いのが驚きでした。
コーヒーの表現要素を備える ブルゴーニュワインをテイスティング
 後半はブルゴーニュワインのテイスティング。コーヒーのテイスティングコメントにも含まれている表現要素が、多く見つかる銘柄だと試飲前に告げられます。先生からは次のようなアドバイスが伝えられ、試飲を楽しみました。
「コーヒーとワインはもちろん違う味がします。コーヒーはコーヒーの香り、ワインはワインの香りがします。しかし、両者に共通の言葉で表現される香りもあるのです。そのなかのいくつかは、実際に同じ物質に由来するものでもありますが、必ずしもそうでないものもありましょう。さらにいえば、ワインの表現に“コーヒーの香り”という場合もありますし、コーヒーの表現に“ワインの香り”という場合もあるそうです。真面目に考えると二つは入れ子構造、または合わせ鏡のようにも思えます。実際のところテイスティングコメントで用いられる表現は、ワインならワインの世界、コーヒーならコーヒーの世界それぞれで、言葉の上でのお約束として成り立っている側面があります。これはちょっと高級には“言葉の恣意性”と言われていることです。
 今回は、コーヒーの試飲表現に含まれる表現要素を多く備えていそうなアイテムをブルゴーニュから選びました。赤はジュヴレ・シャンベルタンとシャンボル・ミュジニー、白はシャサニュ・モンラッシェとムルソーです。4つのワインを表現する言葉とクイズに出てきたコーヒーを表現する言葉を比べて、両者の間に横たわる言語の恣意性の深さ、浅さを考えてみてください」。
 実際に試飲してみると、ムルソーからはコーヒーそのものの香りのほかに、ナッツやキャラメルの香りが。シャサニュ・モンラッシェからは白い花やハチミツの香りが。まさにコーヒーの香りの表現に使われていた言葉がワインの香りの中にも感じられます。お互いに共通する香りの表現を確認しながら恣意性の深さや浅さを楽しむ、興味深い体験となりました。
 コーヒーの世界を通して、ワインのグローバリゼーションを垣間見ることが出来た今講座。講座の帰り道には、受講生のお一人が「歴史社会学的な観点から、ワインのグローバルゼーションを紐解いていくこと、またワインの持つ特性がグローバル化によりいかなる意味を持ってきたのかを考えることは、より深くワインを知ること、また、より広い視野でワインを見ることに繋がります。毎回魅力的なテーマが設けられているため、今日はどんなお話が先生から飛び出すのだろうと楽しみに通ってきています」とのお話を明るく語ってくださいました。

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