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| 生産者の生の声を伝える貴重なライブ授業を、今後も行っていきたい」と語る自然派ワイン講座の田中一民先生。講座では先生が厳選した自然派ワインを毎回5~6種類テイスティング。フランス各地方の秀逸な自然派生産者の栽培法、醸造法も学びます。 |
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研究科「自然派ワイン」の講座は、毎回注目の自然派生産者のワインをテイスティングしながら、その最大の醍醐味であるテロワールの風味を、地方ごとに見つめ学んでいく講座です。今回この講座では非常に画期的な授業が行われました。それは、ブルゴーニュの自然派生産者ドメーヌ・A.etP.ド・ヴィレーヌとアカデミー・デュ・ヴァンの教室をネットのテレビ電話で結び、直接現地の醸造家の解説を聞きながら、ワインをテイスティングしてゆくという授業です。醸造所の内部や畑の様子、さらに造り手の声をライブで感じることができた授業の様子をお伝えしてみましょう。
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| ドメーヌの歴史、畑、栽培法について熱心に講義するピエール・ド・ブノワ氏。背後に見える丘の一番上の斜面にアリゴテ・ゾレが栽培されています。通訳はワインコンサルタントの西岡泰樹氏が行い、教室に音声が伝えられました。 |
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自然派ワインVin Natureとは、栽培および醸造のプロセスにおいて化学合成物質の使用や工業的操作を極力廃して造られたワインです。栽培面ではビオロジック(有機栽培)、ビオディナミ、リュット・レゾネ、醸造面でも亜硫酸を使用するかしないかなど、そのアプローチは実に様々です。研究科「自然派ワイン」の講座では田中一民先生の指導のもと、これまで、こうした栽培法や醸造法について、さらにロワール、アルザス、シャンパーニュ、ブルゴーニュの自然派生産者の哲学やワインの味わいについて学んできました。講座第5回目のライブ授業はその総まとめともいえ、テレビ電話の映像と音声を通じて実際に生産者と触れ合う貴重な体験となりました。 ライブで講義を行ってくださったのは、ブルゴーニュ地方ブーズロンのドメーヌ・A.etP.・ド・ヴィレーヌです。経営者のオベール・ド・ヴィレーヌ氏はロマネコンティの共同所有者の一人としても知られていますが、このドメーヌは彼がパメラ夫人と始めた家族経営のドメーヌです。生み出されるワインの評価は世界的にも非常に高く、今最も注目される自然派生産者のひとりです。 当日講師をつとめてくださったのは、ド・ヴィレーヌ氏の甥にあたるピエール・ド・ブノワ氏。ご夫婦を手伝い栽培、醸造を行っています。ブノワ氏は明るく気さくにドメーヌについて説明してくださり、その様子は教室内の大きなスクリーンに映し出されました。 |
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| 「私たちが畑を所有するブルゴーニュ地方のブーズロンは、人口150人の小さな村。コート・シャロネーズの一番北に位置し、秀逸なアリゴテの産地として知られています。アリゴテはピノ・ノワールと、今では使われなくなったグエという葡萄品種を掛け合わせたもの。はるか昔の17世紀からブーズロンの修道院周辺でも栽培されていました。1997年にはブルゴーニュのどこよりも優れたアリゴテを生み出す地区として、AOCブーズロンに認定されています。ヴィレーヌ夫妻がこのブーズロンに住み始めたのは1971年のこと。初めは自分たちが住む新居を探していましたが、『どうせなら葡萄畑もあるといいね』と思い立ち、売りに出されていたこの住居と葡萄畑を下見に来たそうです。すると、ここが素晴らしいアリゴテが育つ土地であることがわかり、一目で気に入り購入を決めたといいます。夫妻は少しずつ畑を増やし、現在20haを所有。そのうち10haがアリゴテ、4haがピノ・ノワール、6haがシャルドネ。またメルキュレとリュリーの2つのアペラシオンにも畑を所有。1980年から1983年にかけてビオロジックに転向し、現在11人で畑の栽培を行っています」 |
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| 教室のスクリーンに生の映像と音声が届けられ、熱心にライブ講義を聞き入る受講生。 |
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ブーズロンのアリゴテに可能性と魅力を感じながらワイン造りを行ってきたヴィレーヌ夫妻。甥のブノワ氏は、彼方に見える葡萄畑を指差しながら、この地に根づくアリゴテの魅力と、ドメーヌが所有する畑の様子を熱心に語ってくださいました。 「世界的に成功しているピノ・ノワールやシャルドネに比べると、アリゴテは野生児のような性格を持つ品種で、仕上がったワインにもそうした特徴が出ます。自然農法で畑を慈しみながら、ちょっとやんちゃな葡萄品種をどうやって美味しく育てあげるか。また酸味や果実味をどのように表現してあげるか。そこにアリゴテでワインを造るおもしろさがあります。私たちが育てるのはアリゴテの中でも『アリゴテ・ドレ』と呼ばれる葡萄で、ブーズロンの丘の斜面に植えられています。通常のアリゴテと比べると、収穫のときに黄色味を帯びた色合いになるためドレと呼ばれ、糖度も高く、香りがより豊か。生まれるワインも果実味と味わいの幅に広がりがあります。ドメーヌが所有する最良のアリゴテ・ドレの畑は、ちょうど私の背後に見える丘の一番上。南から南東向きの斜面の表土が浅い石灰質の土壌に広がっています。そして、あの丘の半分から下にはシャルドネとピノ・ノワールが植えられています。アリゴテ・ドレが植えられている石灰質の土壌は、非常に固い石の地層になっていて、雨が降りすぎると余分な雨水を表面が流してくれます。その一方で保水性が高く、乾燥して日照りが続いたときは、地中に貯えた湿り気を葡萄に与えてあげる利点があります」 |
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| 講義はドメーヌ・A.etP.ド・ヴィレーヌの栽培哲学に進んでゆきます。 「私たちが行うビオロジックとは、化学肥料、除草剤、殺虫剤、防カビ剤を一切使用しない栽培法です。つまり、葡萄を尊重し、畑をじっくり観察し常に手入れを怠らないこと、そして少しでも変化があればすぐに対応し、365日畑に出て畑と共に生きる精神が必要です。今はちょうど剪定の時期。剪定は収穫量を管理する上で大事な作業で、枝を短く切って収穫量を落としてあげる作業の一つです。冬の早い時期から剪定をしてゆけば栽培者もゆっくり休みを取りながら出来るのですが、それでは葡萄の生育に良くない影響を与えます。忙しくなりますが、3月に入って芽吹く直前にやってあげることが良い葡萄の収穫に繋がります。またビオロジック栽培は、畑ごとに行う作業も異なります。同じ季節でも、畑の立地条件、周囲に茂る植物、そこに生息する生物の生態、土壌の具合も異なるため、農作業もそれに合わせて調整しながら行っていかなくてはいけません。各畑の個性を尊重し、常に些細な変化に目を向けながら、上手に葡萄を管理して育てていく。それは、様々な音色に耳を傾けながら楽器をまとめあげる、オーケストラの指揮者にも似ています。ケミカルな要素を用いず自然な形で畑を調整していくことで、テロワールのよさを表現した葡萄が育て上げられる。そこにアリゴテ・ゾレという葡萄品種の個性が加わって、豊かなハーモニーを奏でるワインが造り上げられてゆきます」 |
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さらに授業では、普段はなかなか見ることのできない醸造所の内部にもカメラが向けられ、熟成庫の様子やビオロジックの醸造法についてもリアルに伝えていただくことができました。教室のスクリーンには発酵樽や熟成樽、また発酵樽と温度計をつなげて温度管理を行うために張り巡らされたパイプなどが映し出されます。実際に醸造所を見学しながら説明を受けている気持ちになり、受講生一同目を凝らしながらブノワ氏の講義に耳を傾けます。 「ワインを醸造するときに、私たちがしなくてはいけないことはそれほど多くはありません。つまりワインというのは葡萄畑でほぼ出来上がっています。健全で素晴らしい葡萄が得られれば、私たちがすることは発酵中の温度管理をすることぐらいです。収穫した葡萄は区画ごとすぐに圧搾。搾り出された果汁は一度澱下げをします。そしてアリゴテはこの大樽に、シャルドネはこの小樽に入れて、20度以下に温度管理をしながら天然酵母で発酵します。醸造のとき気をつけることの一つは、圧搾して得られた果汁を極力傷つけないようにすること。そのためは、地上階から自然の重力でポンプをつたって、地下の木樽に果汁が流れていくように設計しています。あの天井に開いている穴がポンプを通すための穴なのです」。 |
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| マイクを通し受講生が質問できる時間も設けられ、生産者と触れ合う機会に。 |
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畑や醸造所の説明が和やかに行なわれ後は、いよいよ2種類のワインをテイスティングしていきます。そして、その後には受講生が直接造り手に教室のマイクを通して質問する時間も設けられました。テイスティングワインは… Bouzeron Aligote 2006 ブーズロン アリゴテ Mercurey les Montot 2006 メルキュレ レ・モント 「2006年は素晴らしい作柄でした。ブーズロン アリゴテ2006は、香りにまずミネラルを感じます。続いて白い花、そしてほんのりライチの香り。香り全体はスッキリしていますが、口に含むとガラリと異なるリッチで幅のある味わいが感じられます。上品で引き締まった酸。この上なくピュアな果実味とミネラル感が広がります。メルキュレ2006は若さの中にもしっかりとした果実味と味の厚みがあり、5年から10年の熟成の後にそのポテンシャルが表れてくるワインです。私たちが目指すクオリティの高いワインとは、若いワインの状態では花や果実の香りしかしなくても、5、6年の熟成を経ると、育てられた土地の香りがぐっと表れてくるワインです。この2つのワインも、今はまだ若々しい状態ですが、熟成を経ることで重合されたうまみや味わいが生まれ、まさにテロワールを表現するワインとなることでしょう」 |
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| 上品で引き締まった酸、ピュアな果実味とミネラル感が広がるブーズロン2006とメルキュレ レ・モント2006。ライブ授業では、生産者から直接テイスティングコメントが伝えられ、渾身のワインを試飲しました。 |
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貴重な講義が伝えられ興味も尽きないなか、最後は受講生から様々な質問が飛び出しました。そのいくつかを紹介してみますと… 質問:1983年にビオロジックに切り替えたことで、味わい的にはどのような変化がありましたか? ビオロジックに切り替えたあとの方が、香りの味わいも繊細で、ミネラルが豊かになっています。ただ、こうした変化はすぐに表れるというものではありません。収量を抑えることのできる葡萄の樹に植え替えたり、有機葡萄を栽培している周囲の自然環境や近隣の森に住みつく野鳥や生物も変化していくことで、良い方向に表れてゆきます。それには10年以上の年月がかかります。
質問:亜硫酸を非常に少量に抑えているとうかがいましたが、量的にはどれぐらいで、入れるタイミングはいつですか? 含有量を数値的にいうのは難しいのですが、やはり健康な葡萄を育て上げることができれば含有量を減らすことができます。発酵熟成中は亜硫酸を入れず、瓶詰め前の残留ガスを見ながらその時点で調整しますが、平均して白ワインで15mg/l、赤で10~15mg/lと非常に少ない量となっています。
質問:仕立てはゴブレ式で行っているとのことですが、なぜゴブレなのでしょうか? 小さな雑菌が入って樹を傷めてしまわないようゴブレに仕立てています。ゴブレは左右の根から水分や栄養分を吸収するので、左右にバランスよく樹液が葡萄の樹を上がってゆく筋ができます。これがグイヨになると、左の枝ですと左の根からしか樹液が上がらなくなり、右側が働かなくなることで、そこから小さな雑菌が入りやすくなります。また、左右に広がって植えられるので通気性があり病気になりにくい利点があります。 |
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