同じワインの熟成を、10年間にわたって追い続けるという本邦初の企画が、講座『定点観測 Château Lagrange 7ヴィンテージ×10年間』です。その第一回のテイスティングが、2009年9月2日(水)に行われました。以下は担当講師の紫貴あき先生によるテイスティング・コメントです。
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「定点観測」とは、ある一定の場所で、ある一定の期間ごとに、一定の視点を持って継続的にあるものを観察し続けることを言います。 今回、その観測対象になったのは、ワインの最大のミステリー「熟成」のプロセスです。「未来」は誰にも分からないもの。いかに優れたティスターや専門家でも、ワインの経年変化については、はっきりと答えられないのが現状でしょう。 この壮大な問題に取り組もうというのが、「定点観測」のクラスです。方法はいたって簡単、しかしながらかなりの忍耐が必要です。2009年から2019年までの10年間、毎年ひとつの銘柄を垂直試飲していくのですから。しかし、10年が経ったころには、「知識」を凌駕する素晴らしい「経験」が、私たちの中に蓄積されていることに違いありません。
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| 観測対象となるシャトー・ラグランジュの7ヴィンテージ(2000~2006) |
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今回、観測対象銘柄として白羽の矢が立ったのが、「シャトー・ラグランジュ」です。ラグランジュはボルドー地方サン・ジュリアン村の3級格付けでありながら、1983年にサントリーが購入するまで荒廃し評判を落としていました。しかし、同社のたゆまない努力と資金投資のおかげで、現在では、輝かんばかりの名声を取り戻しています。 2009年9月2日時点での、ラグランジュ2006年から2000年の記録を下記に残します。 |
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「05年を凌駕する」と言われるほどの暑い夏が続いた06年。9月中旬の雨により玉割れの被害が一部あったものの、ガッツのあるタンニンは気合十分。香りには、新樽由来の甘やかなヴァニラ風味が遠慮なく立ち上がる。カシスなどの黒い果実の香りと融合するには、あともう少し熟成が必要そうだ。これからの将来が楽しみなワインだ。
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| 2005年のヴィンテージからラベルデザインが若干変更に。 |
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一年を通して乾燥した年。結実期とヴェレゾン直前の水分ストレス、収穫期の好天が最良のブドウを見出した。ブラックベリーなどの黒い果実に、スミレ、ライラックの花が華やぎを添える。稠密でスベスベに磨き抜かれた渋みは、どこまでも上品で心地よい。よく熟した柔らかな果実味にはうっとりせざる得ない。ついつい、もう一口を飲んでしまいたくなるのは2005年の魔力だろうか。 |
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| 年間を通して、雨が多く冷涼だった2004年。それゆえ香りには、かすかに植物の茎のような「青さ」が感じられる。口中に含むと、パンチのある06年、ゆったりとした05年を飲んだ後だといささか拍子抜けしてしまう。「青さは悪者だ」という人もいる。しかしこのワインに関しては、この「青さ」が張り詰めた緊張感とシリアスさを与えているようだ。時を経て、この「青さ」が、「タバコの葉」に変わる日が楽しみだ。 |
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| ヨーロッパ全土を酷暑が襲い死者まで出した異常気象の年。熟したプラムやブラックチェリーに、わずかに熟成のサインが現れている。渋みのヴォリュームは申し分ないが、粒の粗いテクスチャーが若干舌の上でザラつく。タンニンの熟度が不十分な中、暑さのために果汁中の糖度が一気に上がり、酸が下がることを警戒し、早期に収穫せざるえなかったことが原因か。 |
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| 「悪い年こそ造り手の技量が試される」という言葉があるが、それを見事に体言化したのがこの02年だ。一般的にこの年は雨がちで評価が高くない。しかしながら、このワインには堂々とした果実味と、一体感のある渋みが感じられる。さらに信じがたいのは喉元をポッと温かくするアルコール度数の高さ。オフヴィンテージにおける勝因は低収量と、行き届いた夏季管理の賜物だろう。 |
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| 年間を通じて好天と雨天のアップダウンがあった年。しかし6~10月の全体の数値を見ると降水量は平年より100mmも低く、気温は1.5度も高かった。それゆえ晩生のプティ・ヴェルドーが良くできた。ワインは熟成により複雑さが増している。黒い果実はドライチェリーに、植物の茎はタバコの葉に移行しつつある。味わいはじわじわ染み入るように風味豊か。グリップがあり、骨太な渋みはプティヴェルドー由来か。 |
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「ワインが若返った!」と驚嘆させられたヴィンテージ。プラムケーキ、ブルべリーのような柔らかく、濃密な果実味は01年、02年よりも、はるかに若々しく、イキイキしている。この「若返り現象」は、時の魔法使いがいたわけでもなく、紛れも無くヴィンテージの賜物だ。00年は年間を通して乾燥し、そのためブドウの皮が厚く健全に完熟した。このワインを素直に美味しいと感動できるのは、決して信頼と安心感からだけじゃない。むしろスケールの大きさ、傑出した酸と渋みそして果実味のバランスゆえだろう。
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