アカデミー・デュ・ヴァン東京校創業以来の名物企画、五大シャトーの新着ヴィンテージを利く特別比較試飲会が、3月16日に開かれました。今年は大きな話題を呼んだ2003年ヴィンテージが対象で、五大シャトー(ラフィット、ラトゥール、マルゴー、ムートン、オー・ブリオン)に、サンテミリオンの巨星シュヴァル・ブランを加えた6アイテム。賛否両論、侃侃諤諤の議論が巻き起こったこの年のワインは、はたしてボルドーらしさ、五大シャトーらしさを備えたものだったのでしょうか?
文:立花 峰夫 Text by Mineo TACHIBANA
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講師の横浜ゴトー酒店店主 後藤和夫先生から、試飲会の冒頭にこの年の天候について説明がありました。 「このヴィンテージはヨーロッパ中が記録的な猛暑と旱魃を経験した年で、ボルドーにおけるブドウの収穫も極端に早かった。たとえばシャトー・オー・ブリオンでは、白ブドウの収穫が8月13日に始まり、黒ブドウの中では最も早熟なメルロの収穫が8月19日に始まっている。8月13日の収穫開始はボルドーの歴史の中で最も早いもので、その次に早いのが1815年に記録された8月15日。メルロの収穫開始は9月中旬ごろが普通で、2002年にオー・ブリオンの畑では9月19日に収穫が始まっているから、ちょうど一ヶ月早いことになる。メルロを主要品種とする右岸地区では、ブドウの成熟が早すぎてレーズン状になってしまった畑もあり、シャトーによって良否が分かれた。たとえばポムロールでは、ペトリュスが素晴らしい評価を受けたワインを造った一方で、ル・パンはこの年ワインを瓶詰めしていない」 ボルドー地方の8月の気温データを見てみると、平均気温が30℃を超えた日が20日あり、これは新記録でした(次は1990年の15日)。一番暑かった日の最高気温41℃、月間平均気温の32℃はともに、近年のヴィンテージでは最も高い数値です。この年は夜間の気温も高かったため、ブドウの糖度が高くなっただけでなく、極端に酸が低くなりました。 ワイン評論家のロバート・パーカーはこのヴィンテージについて、「1982年を20%、1990年を20%、1989年を25%、1991年を15%、1975年を15%、そして私の記憶には適切な比較の対象がないのだが、崇高でうっとりさせられるものを5%混ぜたもの」と、全体としては好意的に評価しています。実際、今回試飲した6本のワインに、パーカーのつけた点数は以下の通り非常に高いものでした(カッコ内は現時点での実勢価格)。
- ラフィット・ロートシルト2003: 100点(4.5万円)
- ラトゥール2003: 100点(5.5万円)
- ムートン・ロートシルト2003: 95点(3.8万円)
- マルゴー2003: 99点(5万円)
- オー・ブリオン2003: 95点(3.8万円)
- シュヴァル・ブラン2003: 89点(4.2万円)
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ブラインド・テイスティングにおいては、①最も好きなワインはどれか? ②パーカー100点ワインはどれか? ③全体にボルドーらしさは感じられるか? などのポイントを念頭に置いて、参加者がワインに向かいました。 最も人気を集めたのは、意外なことに最もパーカーの点数が低いシュヴァル・ブラン(89点)。誰も一番好きなワインとして選ばなかったのは、マルゴー(99点)とオー・ブリオン(95点)の二本でした。パーカー100点ワインの推定については、参加者のあいだで意見が分かれたのですが、100点ワインの一本、ラフィットを誰もあげなかったのはやはり意外な結果でした。 そして「ボルドーらしさ」について。2003年ヴィンテージのボルドーワインについては、「カリフォルニアワインのようなスタイル」と評する向きが多いのですが、この日の参加者が下した結論は異なるものでした。たしかに、どのワインもボリューム感は相当に強く、「一通り飲んだあと、もう一度確認の試飲をする気が起こらないほど濃い」といった感想が参加者からは漏れました。しかし、「大げさに言われるほど、イレギュラーな年ではない」という後藤先生のコメントが、全参加者の総合印象をまとめたものといってよいでしょう。 「大柄で濃いワインばかりではあるが、タンニンと酸の雰囲気はボルドーワイン以外の何者でもない。カリフォルニアワインに見られる熟した果実味や甘ったるいニュアンスはなく、非常に高いレベルで酸とタンニンのバランスがとれている。酸の低い年といわれるが、酸ボケしてはいない。やや異質ではあるかもしれないが、高次元のバランスと凝縮感は、ボルドーの偉大なワインらしいもの」と、後藤先生は結論づけました。 ちなみに、後藤先生が偏愛するムートン・ロートシルトは、この日の参加者の中では二番人気で、「パーカー100点ワインであろう」と推定した人の人数は、6アイテム中最大でした。 |
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