アカデミー・デュ・ヴァン東京校で毎年の恒例となっている、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社の新着ヴィンテージを飲む特別試飲会が二月末、開催されました。今年は、フランス国内で死者1万人を数える記録的な猛暑となった、2003年産の赤ワイン6銘柄です。その天候が作柄にどのように影響しているのか、参加者の顔には期待と不安が入混じっていました。当日は講師を含め参加者全員がブラインドで臨み、それぞれの印象やご自身の好みに関して楽しそうに語りあいました。
文:斉藤研一 Text by Kenichi Saitou
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| 講座では後藤和夫 先生がド・ヴィレーヌとの交流を通して得られた経験を披露した。「新着DRCを前にするといつも構えてしまう」と謙遜するが、その話の広さや深さに参加者は感服していた。「同じ銘柄を10年後や20年後に同じ参加者で飲んでみたい。ワインに何十万円や百何十万円は高すぎる。それは飲まれたみなさんが過ごした時間に対する金額だと理解すべきだろう」と語る。 |
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今回、試飲したのは同社の旗艦銘柄ロマネ・コンティをはじめとして、ラ・ターシュ、リシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン(以上、ヴォーヌ・ロマネ村)、グラン・ゼシェゾー、エシェゾー(以上、フラジェ・エシェゾー村)の6銘柄。いずれも特級格付けであるばかりでなく、ブルゴーニュでも最高評価を集めるワインたちです。 例年、数十万円という小売価格で驚かされるロマネ・コンティですが、2003年は猛暑により生産量が例年の6割ほどに落ち込んだため、市場価格は現在125万円をつけています。今回の試飲会で揃えられたワインの総額はおよそ216万円になります。受講料も確かに高いけど、この内容では世界で一番安い試飲会ではないかと思います。 当日のディスカッションでは、①どれが一番好きか ②どれがロマネ・コンティだと思うか という2点に関して、参加者全員が意見を述べました。そのなかで最も支持を集めたのが、このなかでは最安値のエシェゾー(市場価格9万円)、逆に支持を集められなかったのがロマネ・コンティでした。 講座終盤に銘柄を公開すると、教室内には大きなざわめきが起きました。この間に「14倍の価値を見出せない」といった意見も出るなか、ロマネ・コンティを言い当てた方からは「年がかわっても、ロマネ・コンティのスタイルは一貫している」との頼もしい返事もありました。 当たる、当たらないはさておき、度々飲めるワインたちではありません。日本への割り当ては数百本程度に限られています。幾ら札束を用意したところで、ないものは飲めないのです。参加者たちも人生の記念碑としてロマネ・コンティとその兄弟たちを楽しんでいるようでした。 |

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| 真剣なテイスティングの後、和気あいあいと意見交換が行われた教室風景。 |
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記録的な猛暑となった2003年は、あらゆることが例年とは違っていました。5月中旬からはとにかく暑く乾いて、成長がいちじるしく進みました。開花から百日目で収穫を迎えるのが常識だったわけですが、この年に限っては80日で切り上げなくてはなりませんでした。あまりの暑さと水不足で、果実が焼けて干からびてしまうものもあったとそうです。 そのため、専門家の間でも美味しいワインが造れるのかどうかと意見が分かれていました。例年よりも酸が弱かったため、健全に発酵が進まないことが懸念されたからです。しかし、「常識が覆された」という醸造家の驚きの言葉にもあるように、酸の弱さを十分なタンニンが支えることで、エキゾチックなスタイルをもつ、魅力的なワインになったようです。 実際、試飲してみると、いずれのワインも例年に比べて深くて濃い色合いをしています。風味もドライ・フルーツやジャムのように甘くまろやかに仕上がっています。ブルゴーニュのもつシリアスさが抑えられ、むしろカリフォルニア・ワインのような開放感を感じます。 ちなみにロマネ・コンティは「猛暑のストレスをテロワールが受けとめた」と醸造家が語るように、このなかでは最も色が淡いのですが、艶と肌理では他を超越していると感じられました。リシュブールやロマネ・サン・ヴィヴァンのような肉付きはありませんが、薔薇様の華やかな風味があって、透明感を感じる仕上がりでした。 |

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| 例年に比べると深い色合いをしている。左手前から時計回りにロマネ・コンティ、リシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン、エシェゾー、グラン・ゼシェゾー、ラ・ターシュ。 |
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| すべてのコルクにはそれぞれの畑の焼印が施されている。上質なコルクは肌理細かく、なめらかな肌触り。 |
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例年、DRCの比較をしていて感じるのは、ロマネ・コンティはどのワインより色が淡いということです。これは経営責任者のオベール・ド・ヴィレーヌに聞いたときも、予想通りの答が返ってきました。旗艦銘柄だけに飲みごたえがあると思われがちですが、ロマネ・コンティは力強さを求めるワインではないということです。 それがブラインドのときの参加者の驚きにつながるのです。栓を開けて間もないときはエシェゾーのような開きの早いタイプが支持を集め、ある程度の時間が経つとリシュブールなどの飲みごたえがあるタイプに支持が移ります。それに対して、ロマネ・コンティやラ・ターシュはまとまりすぎるあまり、却って目立たないようです。 では、ロマネ・コンティは見かけだおれなのかというと、そうではないと筆者は思っています。他にはない薔薇のような華やかさをもち、肌理や密度は別次元に達していると感じます。ただし、分かりにくい特徴であるだけに、評論誌を見てもリシュブールなどに比べると評点が低いことがほとんどです。 最近、感じるのはド・ヴィレーヌの話のなかに、しきりに「透明感(クリアビリティ)」という言葉が使われることです。その話のなかで、品種で最も大切なことは「すべてを覆い隠してしまう果実味ではなく、その土地の微気候や土壌などのテロワールを映しだすこと」と語っています。 もちろん、彼にどれが好きかと尋ねても「いずれもかわいい子供たち」と危なげない答が返ってきます。それでも、あえてロマネ・コンティの特筆すべきところは何かを尋ねると「他よりも透明感がある」と答えてくれました。なるほどブルゴーニュに生きる人間の言葉だなと思います。 |
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